古賀新一「吸血くも男」(1972年9月30日発行)
収録作品
・「蜘蛛男」
「黒山源造は、田舎の小さな火葬場で働く、男やもめ。
彼は、小さな男の子と一緒に、おじ夫婦のもとに身を寄せ、まじめに働いていた。
山奥で暮らしているため、寂しい身の上の彼に友人ができる。
それは、寸詰まりの背丈に、醜い容貌のくも男で、いつも夜中の二時頃に彼を訪ねてくるのであった。
ある夜、おじ夫婦が大金を持っていることを源造が知ると、くも男がおじ夫婦を殺すように唆す。
源造は躊躇するものの、くも男には逆らえず、結局、おじは発狂し、毒を飲まされたおばは生きながら火葬されてしまう。
大金を手に入れ、源造は一軒家を手に入れるが、おばの怨霊につきまとわれ、不審火で家は全焼。
呪いにおびえる源造にくも男は、呪いを他の者に向けるように提案する。
しかし、くも男が身代わりに選んだのが、彼の息子であった…」
古賀しんさく名義での貸本「蜘蛛の巣」(ひばり書房)の再録です。(貸本との差異は、注1を参考にしてください。)
古賀新一版「ルーシーがいるから」(ロバート・ブロック)なのでありましょうか?
味わい深いマンガであります。
ラストのコマの余韻も心に染み入ります。
・「吸血鬼」
「ある農家の一家心中を目撃してから、いささか精神が不安定な男性。
彼が気分転換に散歩していると、野原で穴に落ちてしまう。
穴の底には、首吊りをしていた農家の娘がいた。
娘に案内され、トンネルを抜けると、そこに扉があり、中には部屋がある。
男性は部屋で待たされるが、気が付くと、農家の娘によって部屋に監禁されていた。
翌日、部屋にひげを生やした男が放り込まれる。
ひげの男は男性を非常に恐れ、農家の娘はひげの男は男性のエサだと言う。
そして、農家の娘は理由を説明するのだが…」
分裂的な内容です。
「怪談」「オール怪談」で描かれていたマンガのテイストですが、絵が若干描き込まれている様子です。
貸本や雑誌に発表されたものなのか、描き下ろしなのか、わかりません。
単行本のタイトルは「吸血くも男」となっておりますが、そういうタイトルのマンガはありません。
「蜘蛛男」+「吸血鬼」=「吸血くも男」なのです。
古賀新一先生には「吸血蜘蛛」というタイトルの作品もあるので、何かややこしいですね。
・注1
貸本との差異は以下の通り。
p6、目次を削除。p8、「完全犯罪」の文字を写植に変更。
p7、「仲々」→「なかなか」。p8、「俺一人でたくさんだ」→「俺一人で十分だ」。
貸本のp20、削除。貸本のpp38・39を「蜘蛛男」p41にまとめる。
貸本のp42を削除して、そこのセリフを「蜘蛛男」p43最下段のセリフに付け加える。
貸本のpp43・44を「蜘蛛男」p44にまとめる。
「蜘蛛男」p51、ランプシェード等描き込み。
貸本のp55、削除。
貸本のp70、削除。
貸本のp99、削除。
貸本のp118(「蜘蛛男」p115)、右のコマに描き込み。
貸本のp143(「蜘蛛男」p140)、ラストのコマが若干の変更あり。
・備考
カバー痛み、前後の袖の折れ部分に裂けあり。小口に名前が書いてあったらしく、研磨して消してある模様。
2016年4月26日 ページ作成・執筆
2020年10月19日 加筆訂正