矢乃藤かちすけ「恐怖のまだら少女」(1975年7月15日発行)



「山川家で生活することになったユリ子。山川家は両親と長男の順、長女のルミの四人家族。
 ユリ子の父は借金を返すための金策に出たまま行方不明になり、母親は心労が重なった結果の不注意で交通事故死したという気の毒な身の上。
 一人ぼっちになったユリ子を、ユリ子の母親と山川ルミの母親がクラスメートだった縁で、施設から引き取ることとなったのであった。
 ユリ子はルミと相部屋になるが、夜、彼女達の部屋を訪れるものがある。
 それは一メートル以上ある(絵より推定)蛇で、雨樋を伝い、ルミとユリ子の部屋の窓に向かって屋根を這う。
 蛇がガラス窓の中を覗くと、ユリ子の顔はウロコに覆われ、「まだら少女」に変身、窓から外へ脱け出し、蛇と共にどこかへ出かける。
 ルミが目覚める前に、ユリ子は部屋には戻るのだが、夜の外出のためか、ユリ子は疲労で寝付くようになる。
 ルミの兄、順はこのことに最初に気付き、何が起きているのか原因を突き止めようとする。
 どうやらユリ子は動物霊に憑依されているようなのだが…」

 楳図かずお先生の「まだらの少女」(aka 「ママがこわい」「まだらの恐怖」)からタイトルを拝借していることからして、矢乃藤かちすけ先生が楳図かずお先生へオマージュを捧げた作品と私は解釈しております。
 1970年代らしく、「ヘビもの」にオカルト風味を持ち込み、うさん臭さに拍車がかかってますが、「これぞ、ひばり書房黒枠単行本!!」といった感じの仕上がりになっております。
 また、ヘビ少女の描写も他の漫画や映画の影響をあまり感じさせず、私には新鮮に感じられました。

 矢乃藤かつすけ先生は、1970年代から1990年代末までマンガを描かれていた(らしい)、個性派の漫画家さんです。
 魅力は一言、「味」です。
 思考力、表現力、語彙力と三拍子そろってないない尽くしの私の頭では、そうとしか言いようがないのです。
 とにかく、いいんです。感極まります。
 地獄の底まで「B級」なのですが、こういうマンガ以外を決して描かなかった(もしくは、描けなかった)という点で「ホンモノ」だと思います。
(「A級」の中にも、マガイモノはいっぱいあります。)
 下手ではないが、非常に特徴的な絵(後年も全く変化せず!!)、やけに生活感のある市街風景の描写、面妖としか表現しようのない怪奇描写、ストーリーをぶった切って挿入される生物学やオカルトの知識、そして、ラストに自作のフォーク・ソング…そういうものが混然一体となって、形容しがたい異空間をつくり上げております。
 と、盛大にヨイショしましたが、あくまでも個人の感想ですので、決して鵜呑みにしないよう、踊らされることのないよう、一応、言い添えておきます。

 ちなみに、本当は、千に一つの傑作「悪魔の血が踊る」について紹介したいのですが、単行本が行方不明になりました。
 考えるだけで、心が萎えます。

・備考
 貸本らしいが、使用感なし。ホッチキスのようなもので綴じ。裏表紙にぶつけたような凹み傷が四か所。

2016年1月14日 ページ作成・執筆
2018年3月4日 加筆訂正

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