夏木哲也「ふくしゅう」(1975年9月10日発行)

「出版社に勤める中西明子は、母親が殺されたという知らせを聞いて、実家に戻る。
 母親は何者かに殺された後、海に遺棄されていたのだった。
 犯人は皆目わからず、家族は悲しみに暮れる。
 悲劇はこれだけにとどまらず、その翌日には、兄が首吊り死体で発見される。
 実業家として名をなす父親、中西清二郎に恨みを持つ者の犯行ではないか、と疑った明子は、父親に届いた、差出人不明の手紙をこっそりと読む。
 その手紙は、山内清玄という男からで、十二年前の大地震の日の復讐のために、明子の母と兄を殺した、と書かれてあった。
 しかも、次の予定は、明子であった!!
 このことを知った明子は、友人で怪奇漫画家の田丸を家に呼ぶ。
 まず、田丸は十二年前の大地震について調べるため、地震が起こったN市へ向かう。
 そこの図書館で、田丸は、地震に乗じて、一家六人が殺害された事件のことを知る。
 この一家のうち、行方不明になっているのが、山内清玄なのであった。
 田丸は急いで中西家に戻るが、明子は既に清玄の毒牙にかかっていた。
 魔の手は13歳の次女、幸子にも伸びる…」

 夏木哲也先生の(恐らく)唯一の単行本です。
 ひばり書房黒枠のマイナー作家に共通して、発行数が少なかったらしく、現在、入手困難となっております。(なかなか大変…。)
 内容は「まあまあ」なのですが、この「黒枠」を通すと、ジャケットもストーリーもどこか怪しいオーラをムンムン放ち出すところが「ひばりマジック」!!
(「緑枠」だと更にマジカルになります。同時に、価格も割増しに…。)
 新人作家の作品とは言え、下手という程でなく、丁寧に描かれていて、味わい深い絵です。
 残酷描写は、同時期の作品に較べると、そこまでキツくはないものの、「一家虐殺」シーンと、明子のサディスティックな処刑シーンはかなり見応えあります。
 もうちょっとパンチがあれば、全体に漂う「地味さ」を払拭できたかもしれません。(「そこがいい!!」という意見もありそうですが。)
 個人的には「良作」と思います。この一作で終わってしまったことが残念です。

・備考
 デッド・ストックの模様。スリップ付。

2016年4月9日 ページ作成・執筆

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