「S・F&怪談」(発行年月日不明)

・浜慎二「見ひらかれた目」
「事故死したダンプの運転手。
 その死体は極秘にある研究所に運ばれる。
 そこでは、科学者達が「YS1000」という人工頭脳の研究をしていた。
 人工頭脳を頭に移植され、運転手は蘇生する。
 運転手の身体が健康を取り戻してから、様々な国籍の外国人が見守る中、「YS1000」に備わる超感覚が披露される…」
 「次はお前の番」(「怪談・66」(貸本/つばめ出版)収録)を、SF仕立てにして、結末を捻った佳作です。
 非常に「巧み」な作品ですが、ちと盛り込み過ぎで消化不良な部分があります。
 中編にしたら良かったような気がしますが、日中戦争時代の631部隊のことが暗に取り上げられていますので、やはりこのぐらいが適当だったかも…。

・いばら美喜「みな殺し」
「休暇を取って、帰省中の刑事。
 彼の父親が首を切断された死体となって発見される。
 死体の横には、明晩八時に刑事の家族をみな殺しにするとの書置きがあった。
 そして、翌日の午後八時過ぎ、家の前で刑事と警官達が待ち受ける中、犯人が現れる。
 犯人は、強盗殺人で服役中の脱獄囚であった。
 彼には、逃亡中、刑事に追跡され、事故に遭い、家族を亡くした過去があった。
 元「皿廻しの芸人」だった腕を活かし、脱獄囚は復讐を果たそうとする…」
 「オール怪談・45」(貸本/ひばり書房)からの再録。扉絵はそちらのページでご覧になれます。
 唐澤俊一氏・編「カルトホラー漫画秘宝館 かえるの巻」にも復刻されており、いばら美喜先生の数ある短編の中でも傑作中の傑作です。
 いばら美喜先生の作品を読んだことがないけど興味がある、という人がいたら、何はともあれ、まず一番に読んでください!!(復刻版は容易に読めます。)
 これを読んで、腰が抜けちゃった人は、次は「カルトホラー漫画秘宝館 みみずの巻」の「港町」。
 その次は、菊地秀行氏・編「貸本怪談まんが傑作選 妖の巻」収録の「焦熱地獄」と、同じく「貸本怪談まんが傑作選 怪の巻」収録の「印画紙」。(このあたりはちょっと入手が難しいかも…。)
 ここまで来ると、中毒症状を起こして、もっともっと読みたくなるかもしれませんが、辛抱強く復刻をお待ちください。
 いばら美喜先生は、今、真に評価・復刻されるべき漫画家であります。(と言うか、評価が遅すぎます。)
 今後、作品集等、どんどん出るように祈ってます。

・小島剛夕「猫目石」
「一年の内、ある時期が来たり、興奮したりすると、猫の眼の如く、闇で光る眼を持つ十内。
 これは彼の祖父が猫目石という宝石を唐人を殺して奪ったことによる祟りであった。
 呪われた境遇に加え、下役に過ぎない十内を、組頭の娘、小枝(さえ)は心から慕う。
 しかし、小枝に横恋慕す権堂の陰謀により、十内は隠密(スパイ)の疑いをかけられる。
 あらぬ疑惑に逃亡を図るものの、権堂達に襲われ、十内は全身に傷を受けて、牢に入れられる。
 その夜、権堂とその仲間達の前に、猫のように眼を光らせた影が現れ、一人また一人、斬殺していく…」
 「オール怪談・43」(貸本/ひばり書房)からの再録。扉絵と巻頭の紹介ページをご覧になりたい方はそちらのページにどうぞ。

・楳図かずお「ばけもの」
「ある医大の研究所で、犬を実験台にした、残酷な実験が日々行われていた。
 一人の青年が、実験に使う犬を飼育小屋に取りに行った時、奇妙なモンスターに襲われる。
 かろうじて実験室に逃げ込むが、モンスターの姿は煙のように消えていた。
 モンスターの正体は…?」
 菊地秀行氏・編「貸本怪談まんが傑作選 怪の巻」にて復刻。

・古賀新一「人形の声」
「次の仕事を探していた詐欺師の男が、昔の友人と巡りあう。
 この男は一人で葬儀屋をしているのだが、人手不足で大変だという。
 詐欺師はこの男の力になり、葬儀屋の経営を一手に担うが、もちろん目的は男の財産だった。
 葬儀屋の男は一人暮らしで、頭が弱く、貯金もかなりあるという、絶好のカモ。
 が、男は一人暮らしのはずなのに、どこからともなく声がする。
 しかも、その声は詐欺師の男を悪い奴呼ばわりし、警戒するよう呼びかけるのだった。
 詐欺師は遂に声の主を突き止めるが、それは葬儀屋の男が操る、腹話術の人形。
 葬儀屋の男は、一人の寂しさから腹話術の人形と会話するようになったと言うが、さて、声の正体は…?」
 「オール怪談・46」(貸本/ひばり書房)からの再録。

・古谷あきら「奇声」
「深夜帰宅が続く青年警察官。
 彼はある夜、猛スピードの車が事故を起こす場面を目撃する。
 が、そこには事故の形跡はなく、何も起こった様子はなかった。
 疲れのせいにする青年だったが、翌日、帰宅すると部屋が荒らされている。
 盗られたものは何もなかったが、テーブルの下に血のついた新聞があった。
 その新聞は一年前のもので、ある行方不明事件の記事が載っていた。
 そして、その記事の写真の男性は青年が毎夜通りすがりに出会う人物だった…」

2015年8月27〜29日 ページ作成・執筆
2018年10月6日 加筆訂正

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