大石まどか「白狐の子守唄」(1973年8月31日発行)



「樽見惣右衛門は、風間藩領内の全ての村の名主の総元締めであり、その権勢を思うままに振るっていた。
 惣右衛門の忠誠心に応えるべく、藩主は家臣松野義貞の娘、お蘭を、惣右衛門の息子、卯之助の嫁にするという命令を下す。
 この卯之助という男が、お気楽な道楽息子。
 一方、お蘭は、武家出身のためか、男勝りの武芸を身につけた、勝気なお転婆娘。
 双方の両親は心配するものの、嫁に来たお蘭は、口数の少ない、気の弱い女性であった。
 しかし、お蘭が樽見家に嫁に来てから、おかしなことが起こり始める。
 実は、お蘭は白狐の化身であった。
 村人達の立ち入らぬ、神聖な山で、樽見卯之助は子供の白狐を猟銃で射殺して、その皮を飾り物にしていた。
 その母狐が子狐の仇を討つため、樽見家に入り込んだのであった。
 母狐の復讐の炎は、樽見家を崩壊に追い込む…」

 絵柄は素晴らしいのですが、難を言うと、ストーリーが若干弱いかも…。
 でも、この華麗な描線を見ていたら、細かいことはどうでもよくなります。
 あと、子狐の描写も可愛くていいです。(冒頭で射殺されて、痙攣してますが…。)
 全体的に見たら、良作だと思うのですが、どこか地味な印象を払拭できないのは、何故なんだろう…?
 考えてみて気付いた事なんですが、このマンガ、ペラペラとページをめくってみたらわかる通り、全体的に白っぽいです。
 全部手書きで、背景にスクリーントーンなど(多分、全く)使っておりません。
 また、大抵の怪奇マンガのように「黒く塗る」わけでなく、余白の白を巧みに使って、切り絵のような効果を出してます。
 その点が、怪奇マンガとしては物足りないように思わせるのではないかと愚行する次第であります。

・備考
 貸本。ビニールカバー貼り付け。カバーに折れ痕あり。綴じ穴あり。上小口に「107」のスタンプ押印。

2016年4月11日 ページ作成・執筆

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