古賀新一「ふるえて眠れ@A」(1974年5月15日発行)
・「第一話 白い眼の人形」
「小学五年生の少女、美代子。
彼女は小さい頃からチコという人形を友達のように大事にしていたが、弟の正(ただし)が産まれたとたん、愛情が弟に移ってしまう。
美代子は人形を粗末に扱っているうちに壊れ、白目を剥いたままになる。
ある日、美代子が弟を乳母車に載せて、散歩に出ていると、ふと目を外したはずみに、乳母車が坂道を疾走。
乳母車は崖っぷちに引っかかっていたものの、弟は海に投げ出されたのか、影も形もなかった。
途方に暮れる美代子は、公園で、弟によく似た捨子を発見して、その子を弟の代わりにする。
両親にはばれなかったが、美代子はこの赤ん坊がどこかおかしいことに気付く。
そして、この赤ん坊の目が白目に剥かれる時、奇怪なことが起こるのだった…」
・「第二話」
「盲腸の手術で入院することになった美代子。
彼女の病室から見える屋敷には、母娘が住んでいたが、一週間前から、娘の姿が消えたことに美代子は気付く。
少女の行方が消えた後、屋敷の煙突からは煙が絶えたことがない。
退院後も美代子は少女の行方が気にかかっていたが、ある日の下校途中、弟の正とともに、その屋敷を訪れる機会を得る。
美也子は少女の行方をひそかに探ると、タンスの中に人骨があるのを目にして、気絶。
屋敷に住む女性は、美代子が自分の秘密に勘付いたことを知り、彼女を亡き者にしようとする。
しかし、邪魔が入り、その間、遊びのつもりで、冷蔵庫に入り込んだ正が窒息死してしまう。
翌日、正の葬式が営まれるが、正の死体がいつの間にか消えていた。
それから、五日後の夜、正が家に帰ってくる。
しかし、身体は氷のように冷たく、美代子の前では、顔が醜くひび割れて、醜いものに異様に興味を示す。
一方で、屋敷の女性は美代子の命を執拗につけ狙うのだが…」
貸本の「死人は夜歩く」(未入手)を再録したものですが、細かい差異はチェックできておりません。
ちなみに、貸本版の方は、青林堂B.O.D.シリーズにて復刻されております。
このエピソードは「いもむし」の後半で使われたギミック満載です。読み比べてみると、面白いかも。
・「第三話」
「数年後、美代子は、父親の仕事の都合で、山奥にある高田村に引っ越すことになる。
東京から来た彼女に、寺の娘、黒沼英子という女生徒が接近する。
英子は美代子に友達である契約書をサインさせ、他の生徒が美代子に近づくのをよしとしない。
父母が留守の夜、美代子の家に英子が泊まりに来る。
英子は美代子に戸締りをしっかりするよう命じるが、英子に不信感を持った美代子はその言いつけに従わなかった。
その夜、クラスの女子生徒達が美代子の家を訪れる。
止めに入った英子は傷ついて倒れ、就寝中の美代子を前にクラスメート達は怪しく笑う。
翌朝、英子の制止を振り切って登校した美代子は、発作的に手がしびれ、力が入らないようになる。
そのせいで、翌朝まで廊下に立たされる破目になるが、よくよく見ると、両手が白骨化していた…」
個人的に、大好きな作品です。
異様な空気を全体に漂い、非常に幻想的(分裂的?)で、悪夢を思わせる作品になっております。
また、クールな黒沼英子のキャラがものすごくいいです。(昔から「目力」のある女性を描くのが得意だったんですね。)
そして、意外なラスト…そんなん、ありかよ!!(似たような作品に「奇妙な男」があります。)
絵柄から推測すると、1960年代前半頃に貸本で発表された作品でしょうか。
後の「白ヘビ」もので確立される、ショック描写を目まぐるしく畳みかける作風より、全体的な空気はかなりゆったりしており、それが図らずも奇妙な雰囲気とユーモアを醸し出しているように思います。
あと、ジャケット・イラスト、最高です!!
古賀新一先生のひばり書房黒枠の単行本のジャケット・イラストはどれも水準が高いですが、「ふるえて眠れA」のジャケットは個人的ベストです。
いくら見ても、飽きません。
・備考
喫茶店で使われたもの。小口やページの上部に、喫茶店のスタンプが幾つかあり。補強のためか、袖や背表紙にセロハンテープの貼り付け。テープが古びて色褪せて、遊び紙等に着色。
2016年5月6日 ページ作成・執筆
2020年2月9日 加筆訂正
2020年6月13日 加筆訂正