松尾啓子「怪談雪おんな」(白枠・1971年8月31日発行/黒枠・発行年月日不明)

「応仁の乱後の下剋上の時代。
 ある山里で、二人の侍が、山奥のきこり小屋にこっそり住みつくようになる。
 二人の武士は、越前の国で領地を治めていた桐生忠房と、その小姓、疾風丸であった。
 一年前、桐生忠房の城は、日陰者の身分であった弟、高房の謀反により、落城。
 処刑されるところを、忠房の許嫁である綾姫が高房に嫁ぐことにより、命を助けられ、この地に落ち延びてきたのであった。
 健康を損なった忠房に疾風丸は甲斐甲斐しく仕え、そんな彼に村の庄屋の娘、おふうは恋心を抱く。
 ある吹雪の夜、疾風丸は行き倒れになった女性を発見する。
 おふうに雪女だと止められるが、疾風丸は小屋に連れて帰り、介抱する。
 息を吹き返した女性は、旅の一座の者で、助けてもらった礼に舞を舞う。
 しかし、舞の最中、突如、旅の女は忠房に刃を向ける。
 間一髪のところで、疾風丸は暗殺を阻止、旅の女は吹雪の中へ逃げ出す。
 この時、おふうは疾風丸の主人が桐生忠房であることを知るが、彼女の祖母は綾姫に仕えた乳母であった。
 雪山でまたもや行き倒れた女を、おふうの祖母に見せると、彼女は綾姫の侍女、珠名というもの。
 珠名に事情を聞くと、忠房の命を狙ったのは、彼女の一存であると話す。
 綾姫は高房のもとに嫁いだものの、二人の仲は敵同士のように悪い。
 高房に想いを寄せる珠名は、忠房さえ死ねば、綾姫が高房になびくようになるのではと考えたためであった。
 この話を聞き、おふうの祖母は、綾姫を城から脱出させる手引きをするため、越前の地に旅立つ。
 やがて、雪女の住む峰を血に染め、愛憎渦巻く悲劇が吹き荒れることとなる…」

 少女マンガ風の絵柄のためか、怪奇マンガ・ファンからは興味の範囲外とされている感のある、松尾啓子先生。
 横山プロに在籍しただけあって、ストーリーの完成度は高いものの、それに反比例して、怪奇度はかなり低く、ゲテモノを愛する諸氏の支持を得るには厳しいかもしれません。
 でも、個人的には、ひばり書房黒枠の中で好きな作品として、五本の指に入ります。(まだ黒枠のマンガを全部読んでませんが、それでも十指に確実に入ります。)
 理由は…泣けます。何度読んでも、泣けます。私のツボに入りまくりなのです。(注1)
 まあ、結局は、感情移入の程度によるんでしょうが、それを割引いても、「佳作」と言っていいと思います。
 読んだら、喜ぶ人が意外と多いのでは?(多いと、いいなあ…。)

・注1
 このマンガと、「エスパー魔美」の「魔美がわざと誘拐されるエピソード」の二つは、読むたびに涙がちょちょ切れてしまいます。
 単に、この手の話に弱いってことなんでしょうね。大切な作品です。

2016年4月10日 ページ作成・執筆
2018年6月5日 画像追加・加筆訂正

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