大石まどか「地獄から来た女」(1974年8月31日発行)

「どろどろに溶けたような、二目と見られぬ恐ろしい容貌をした娘、お華。
 その容貌故、人里離れた山奥で、祖父と二人で暮らしていたが、この容貌を治すべく江戸に出てくる。
 しかし、治療は無惨にも失敗。
 失意のどん底に突き落とされたお華に祖父は、復讐を成就するまでは死ねぬと諭す。
 そして、祖父の娘、すなわち、お華の母親であるお里に関する話をするのであった。
 お里はある城に腰元女中として奉公していた。
 ある時、殿の腕に腫物ができ、如何なる治療をしても、効果がない。
 そこで、御殿医の相良玄安は、南蛮渡来の薬を試すことにするが、殿に用いる前に、同じく腫物で伏せていた、お里を実験台にする。
 薬の量を増やすものの、お里の腫物は改善せず、遂には、激しい苦しみとともに、腫物が顔全体を覆ってしまう。
 お里の悲鳴を聞きつけた、お里の恋人、京之介を玄安は口封じのために斬殺。
 玄安は、助手の五六助と草十の二人に命じて、お里と京之介の死体を箱に詰め、裏山に埋めさせる。
 その現場をたまたま通りかかったのが、お里の父親であった。
 彼は、お里を故郷に連れ帰り、治療に専念するが、お里の身体と心の傷は深く、徐々に悪化。
 また、お里は京之介の子を身籠っており、お華を出産した後、力尽き、この世を去る。
 お華の顔には、母親の怨念がこもっており、この怨念を晴らすまではお里も祖父も死ぬわけにはいかない。
 祖父の話を聞いたお華は、母親の怨念を晴らすため、玄安、五六助、草十への復讐を自らの手で下すことを決意する…」

 以前に読んだはずなのに、ちっとも印象が残っていなかったのですが、改めて読み直すと、なかなか面白かったです。
 非常に陰惨な内容でありまして、当時のマンガとしては、グロ度はかなり高いです。
 ただ、ヒロインが自分の容貌に対する鬱憤のはけ口のために復讐している感がなきにしもあらずなので、ここが評価の分かれ目かもしれません。
 個人的には、ヒロインにイマイチ感情移入ができませんでした。(無関係な人間を一人殺しているのもいただけません。)
 とは言うものの、最後あたり、なりふり構わず襲いかかってくる描写など、鬼気迫るものがあります。
 埋もれてしまった佳作と言ってもいいと思います。
 でも、やっぱり影が薄いマンガのような気がするのは、やはりヒロインの面のせいでありましょうか?
 確かに、不幸な星の下に産まれた、気の毒な女性ではあるのですが、マンガで見る限り、気のふれた顔面溶解女が凶行に及んでいるようにしか見えないのが何とも…。

 ちなみに、確証はありませんが、あつたゆりこ先生の「ひき裂かれた顔」(集英社/週刊マーガレット)に影響を与えたのでは?…と、推測しております。
 まあ、十中八九、私の思い違いだと思いますので、真に受けないでください。

2016年3月31日・4月1日 ページ作成・執筆

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