小林健一「むらさき色の夢」(200円/1963年7月15日完成)

「田舎で里親に厄介者扱いされていた、孤児の岡村晴子。
 夏のある日、車で通りがかった老人により晴子は引き取られる。
 晴子は東京の屋敷に連れて行かれ、吉住百合子という名で、お嬢様の生活を送ることになる。
 この老人は、会社の社長である吉住夫妻に仕えていた爺やであった。
 吉住夫妻が急死した後、一人娘の吉住百合子も交通事故で亡くなってしまい、会社を守るため、晴子を百合子の代わりに仕立てようとしたのである。
 晴子はうまく百合子を演じるが、会社の乗っ取りを企むおじ夫婦は晴子に疑いの目を向ける。
 また、屋敷で、晴子は顔のない少女を目撃し、他にもおかしなことばかり。
 顔のない少女の正体は…?
 そして、おじ夫婦に狙われる晴子の運命や如何に…?」

 半世紀も前の少女向けスリラーですので、まあ、ちっとも怖くはありません。
 でも、その当時の少女達はドキドキしながら読んだのだと思うと、感慨深くあります。
 ちなみに、本作で最も面白かったのは、以下のページ。

 ストーリー中盤、顔のない少女の正体が(一応は)明かされるのですが、その正体は何と「爺や」!!
 あのでっぷりした身体をどうやってネグリジェの中に収納していたのか、それが本作品最大のミステリーであります。(注1)

・注1
 森由岐子先生の代表作の一つ「人形館の花嫁」にも似たようなシーンがありました。

・備考
 ビニールカバー貼りつき、また、ビニールカバーに紙か何かがひっついている。糸綴じあり。カバーの裏に鉛筆での書き込みあり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。本文、目立つシミや汚れ、かなり多し。

2016年12月23日 ページ作成・執筆

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