平岡妙子「雨と炎」(220円/1966年夏頃)



 収録作品

・「雨と炎」(1966年7月13日完成) 「古賀新子は新しい母親に決してなつこうとしない。
 新子にとって母親は死んだ母親ただ一人だけだし、近所の人達には、継母は財産目当てで、両足の不自由な父親と結婚したと噂されている。
 ある日、継母の妹の久美という女性が女中として雇われる。
 そして、迎えた夏休み。
 久美の提案で、家族は姉妹の実家に滞在することになる。
 実家のある村は避暑にはもってこいで、目の前には海、背後には山があり、新子は夢中になって遊ぶ。
 だが、ある日、新子が海で泳いでいると、何者かに足を引っ張られ、溺れかける。
 また、傘を差し、頭から血を流している老婆の姿を幾度か新子は目にする。
 新子が老婆のことを父親に話すと、どこか態度がおかしい。
 老婆の正体は…?
 そして、父親の秘密とは…?」

・「悲恋狐」(1966年8月5日完成)
「明治時代の中頃。
 ある秋の夜、一人暮らしの安吉の家に、吟と名乗る娘が訪れる。
 彼女は流れ弾で足を怪我しており、安吉から手当てを受ける。
 療養するうちに、吟は安吉の家で暮らすようになる。
 だが、安吉はお雪という女友達と親しくしており、吟は彼女に複雑な感情を抱く。
 そのお雪が軽い風邪から重い病気になってしまう。
 お雪を病院に入れるために、安吉は懸賞金のかかっている白狐を射止めようとする。
 吟は安吉を必死になって止めるのだが…」

 サスペンス・スリラーと民話調の話が収録されております。
 「雨と炎」は、スリラーにあまり関心のなかったであろう作者の苦労がうかがえ、それはそれで興味深いです。
 怖くしようと無理したためか、後半、ところどころ、絵が荒れております。
 んにしても、人が二人も死んでいるのに、ハッピーエンド的なオチは凄いなあ…。
 「悲恋狐」は、ありきたりなストーリーではありますが、丁寧に描かれており、個人的に好感を抱きました。
 こういう内容の方が、作者の肌に合ったんでしょうね。

・備考
 ビニールカバー貼り付け。後ろの遊び紙に貸本店の値段票貼り付け。

2017年9月23日 ページ作成・執筆

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