鳥海やすと「白蛇の寺」(190円)



「ある夜、『つゆじ』は、およしの案内で、奉公先である侍の屋敷に向かう。
 途中の山道で、二人は美しい女性から赤ん坊を預かるが、いつまで経っても、女性は戻ってこない。
 奉公先に赤ん坊を連れて行くわけにはいかず、仕方なく、赤ん坊を、近くの寺の鐘つき堂に置いて行く。
 つゆじが奉公する屋敷には、侍と妻の「おしま」、使用人の老人の加門次の三人が住んでいた。
 夜更け、つゆじは赤ん坊のことがどうにも気になり、こっそり屋敷を脱け出す。
 しかし、寺は先程とは打って変わって荒れ果て、鐘つき堂には赤ん坊の姿はなく、壷をぐるりと巻いた白蛇がいた。
 つゆじは足を滑らせ、転落、駆け付けた加門次達に介抱される。
 翌日から、つゆじは女中として働くこととなるが、長い間、病に伏せる、おしまにはある秘密があった。
 それは、蛇の生き血を好んで飲むことで、蛇の生き血は加門次が廃寺で採っていたのである。
 その事実を知った、つゆじは女中奉公をやめる決心をするが、屋敷の秘密を守るため、加門次に殺されそうになり、崖から転落。
 つゆじの生死を確かめる前に、おしまのために蛇を捕まえる必要に駆られ、加門次は廃寺に向かう。
 そこで、噂に聞く蛇女が彼の前に現れるのだが、蛇女の正体とは…?」

 鳥海やすと先生の怪奇マンガとしては初期の作品なのでしょうか?
 後記のスタイリッシュな絵柄とは違い、楳図かずお先生の影響(特に、人物描写)をダイレクトに受けているように思います。
 ただし、単なる猿まねではなく、風景や構図等、非常に上手く、実力の程が窺えます。


 ちなみに、ストーリーは、若干、わかりにくいのに加え、悲惨の一言です。
 隠隠滅滅とした、救いのないストーリーの果てに、予想外のダイナミックなラストが待ち受けており、目が点になること必至です。

・備考
 ビニールカバー貼りつき。糸綴じあり。前の遊び紙の裏表に落書きあり。前後の見返しの底、紙テープで補強。pp42・43、コマ内で、何かが挟まって、剥がれた痕あり(ヒロインの顔が剥がれてて、残念…)。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕とマジックでの書き込み。

2019年7月25日 ページ作成・執筆

貸本・若木書房・リストに戻る

貸本ページに戻る

メインページに戻る