島根けんじ「墓石の下」(東かずら・作/220円)
「妙子は心臓病で、長い間、田舎の病院で闘病生活を送っていた。
彼女の唯一の慰めは地元の友達の正夫で、彼は折りを見ては彼女を見舞ってくれる。
彼女は春には退院できる予定であったが、両親と弟が交通事故死したというニュースを知り、ショックで心臓の発作を起こすようになる。
そして、ある明方、急に容態が悪化し、死亡。
彼女は正夫に何かを伝えたがっていたが、結局、彼は彼女の死に目には間に合わなかった。
春、彼は彼女のために墓を作り、線香を供える。
すると、死んだはずの妙子が彼の前に現れるようになる。
ある日、彼は彼女と一緒に釣りを楽しむ。
別れた後、彼女をつけると、彼女は墓の前で姿を消し、彼は彼女が幽霊だと気づく。
その夜、妙子が正夫の枕元に現れ、彼の霊魂を墓の下へと連れて行く。
そこは「死んだ人たちが住んでいる世界」で、二人は三途の川を渡る。
そこには死の国の王が死者たちを裁く場所があり、罪に応じて、天界星、人間星、修羅星、畜生星、地獄星に送られる。
正夫は妙子の案内で天界星と修羅星を訪れるが、その最中、鬼の獄卒に地獄星から逃げたとの疑いをかけられる。
地獄星に連れて行かれた二人の運命は…?」
「地獄めぐり」を描いた数少ない作品のように思います。(注1)
地獄星にて獄卒から逃げ惑う描写は凄まじく陰惨かつスリリングですが、ページの都合のためか、途中で唐突に終わって現実世界に戻るのがとにもかくにも残念…。
これを徹底して描いてくれていたら、大傑作になったはずですが…。
でも、島根けんじ先生の描く水木しげる風少女、妙子が可愛いから、まあ、いいや。
ともあれ、「死後の世界」を題材にしたオカルト漫画の元祖の一つと評価でき、独特な死後の世界観は今読んでも新鮮です。
「怪奇貸本奇談シリーズ・21」(まんだらけ)にて「夢遊少女」とカップリングで復刻されております。
・注1
「地獄めぐり」を聞いて、個人的に思い浮かぶのは、福田年兼の大怪作「地獄秘図」とこれまた奇作の北杜太郎「入魂譚」。
こうして見ると、ヘンなマンガが多い気がする…。
・備考
ビニールカバーの剥がし痕あり。カバーに若干痛みあり。小口に貸本店のスタンプ。後ろの見返しに貸本店のスタンプと貸出票の剥がし痕あり。