稲垣美佐緒「猟奇伝説アルカード@」(1996年8月18日発行)

 「人生相談所」の看板のかかる館。
 そこには、アルカードという謎の男と、召使いのレンフィールドが住んでいた。
 アルカードは、相談者の持つものと引き換えに、どんな願いでも叶えてくれる。
 しかし、その結末とは…?

・「第1話 一握の肉片」
「美季は、三年の交際の末、和人と婚約する。
 だが、和人は突如、不治の病に倒れ、医者からも見放される。
 悲嘆に暮れる彼女は「人生相談所」の看板を見かけ、アルカードの館を訪れる。
 アルカードは、彼の病気を治すことと引き換えに、彼女の顔の皮を要求する。
 顔の皮を剥がされ、彼女は美しさを失うが、和人は奇跡的な回復を遂げる。
 美季はこれで幸せになれると思うものの、彼の心は美季から離れていき…」

・「第2話 鏡の中」
「山口京子(17歳)は、太った体型にコンプレックスを持っていた。
 そのせいで、内気になり、友達も少ない。
 特に、つらかったのは、妹の愛子は、すっきりと細い美人であること。
 愛子はモデルであり、男達にはモテモテで、京子を小馬鹿にする。
 アルカードは、彼女の肉を要求し、レンフィールドは彼女の身体から贅肉をちぎり取る。
 そのお陰で、京子は、スレンダーな美人へと変身。
 自分に自信を持った彼女は明るくなり、男友達もできる。
 そして、今まで自分を蔑んできた愛子を徹底的にいじめ始める。
 愛子はどんどん内気になっていくが、京子が、愛子の恋人を奪った時、悲劇が起こる…」

・「第3話 ゆがんだ才能」
「鈴木順一は、画家を目指すも、入賞できずにいた。
 そんな彼を、恋人の由美は健気に支え続ける。
 由美を喜ばせるために、順一は、アルカードのもとを訪れ、絵を描く才能を与えてくれる頼む。
 アルカードが引き換えに要求したのは、彼の両足であった。
 順一は、絵の才能を得るものの、由美を描いた絵に心を奪われてしまう。
 由美は、順一に、他の女ができたと勘違いしてしまい…」

・「第4話 追われる女」
「洋子の願いは、彼女の身の周りに出現する、奇怪な化け物を殺して欲しいというものであった。
 アルカードは、その化け物が「人を食べて生きている…下等な生物」であると見抜き、無償で彼女の願いに応える。
 しかし、実は、洋子自身がその化け物であった。
 彼女は人間の男性に恋をして、付き合っていたが、仲間達は彼女を自分達のもとに連れ戻そうとしていたのである。
 安心した彼女は彼と結婚し、幸せな日々を送る。
 だが、結婚をしているため、人間を襲う機会が限られてしまい、飢餓が彼女を苦しめるようになる。
 夫の社内旅行の日、彼女は人間を襲おうとするのだが…」

・「第5話 勇気が欲しい?」
「マサキは中学校に入った頃から、いじめを受けるようになる。
 特に、いじめグループの中村がひどかったが、マサキは気が弱いせいで、反抗できない。
 そこで、彼は、反抗する勇気をアルカードに求める。
 アルカードはひとまず、彼に勇気を与え、後で、彼の喉を渡すよう約束させる。
 勇気を得たマサキは、いじめっ子達に逆襲し、今度は自分がいじめグループのリーダーとなる。
 そして、今までの仕返しとして、中村をいじめるようになる。
 だが、彼はアルカードとの約束を反故にしてしまい…」

・「第6話 3人の客」
「アルカードの館を訪れた直美。
 彼女の願いは、夫の正明を殺して欲しいというものであった。
 正明は異常に嫉妬深く、彼女を徹底的に束縛する。
 たまりかねて、正明の弟の守に相談し、心の平安を得るが、正明は守との仲を疑い、彼女に暴力を振るう。
 夫の異常な言動に身の危険を感じ、隙を見て、夫のもとから逃げてきたのであった。
 しかし、次なる相談者は、彼女の夫の正明で、彼は、彼女とは正反対のことを話す。
 嫉妬深いのは彼女の方で、しかも、彼女は守と浮気をしているという。
 相反する、二人の主張の、どちらが正しいのか、アルカードが下した判断とは…?」

・「第7話 占いの真実」
「病弱な広美は、陰気な、占い大好き少女。
 彼女は公園で見かける青年に恋をしていた。
 占いによると、お互いの相性はいいみたいだが、彼に告白する勇気がない。
 ある時、彼女はアルカードのことを知り、彼の館を訪れる。
 彼女は病気で数か月の命で、死ぬ前にどうしても、いい思い出を作りたかった。
 アルカードは、彼女の両目と引き換えに、彼との仲を占う。
 しかし、占いの結果が書かれた紙には、その青年は危険と記されていた。
 広美の幼馴染の京介は、彼女のことを考え、正反対の結果を告げるのだが…」
(「月刊恐怖の館DX」VOL.35〜VOL.41(1995年10月号〜1996年4月号)に掲載)

 今もなお、精力的に活動中の個性派漫画家、稲垣みさお(美佐緒)先生。  その代表作の一つが「猟奇伝説アルカード」です。
 一般的な知名度はありませんが、怪奇マンガ・ファンの間では非常に高名な作品で、奇想と、一捻りしたストーリーで読ませます。
 これ程、面白い作品が見過ごされたままなのは、本当に惜しいことだと思います。
 ただし、表紙のイラストを見てもわかる通り、こんな顔色をした相手に望み事をして、ただで済むわけがありません。
 バッド・エンドの嵐です。(一通り、目を通したところ、ハッピー・エンドと断言できるのは、三、四作だけでした…。)
 でも、ラストにアルカード様が呟く、ニヒルな一言で全て、許せてしまうかも…(嘘)。

 「猟奇伝説アルカード」に関しましては、gogo様の名ブログ「夜更けの百物語」内の「絶望は死に至る病-稲垣みさお『猟奇伝説アルカード』」にて詳しく解説されております。
 愛と博学に溢れた文章で、稲垣みさお先生に興味を持たれた方には御一読をお勧めします。
 そして、ユニークで、豊潤なイメージに満ち溢れた「稲垣みさお・ワールド」に是非とも触れてみてください!

2020年1月1・8日 ページ作成・執筆

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