稲垣美佐緒「猟奇伝説アルカードC」(1998年2月23日発行)

 「人生相談所」の看板のかかる館。
 そこには、アルカードという謎の男と、召使いのレンフィールドが住んでいた。
 アルカードは、相談者の持つものと引き換えに、どんな願いでも叶えてくれる。
 しかし、その結末とは…?

・「第20話 有能な召使い」
「里美という、若い娘の霊が、アルカードの前に現れる。
 彼女は川沿いの道路で轢き逃げにあい、川岸に転落し、死亡したのであった。
 生き返りたいと願うものの、事故で記憶が混乱し、どこに自分の死体があるのかわからない。
 アルカードに断られ、彼女は途方に暮れるが、ある時、彼女を視ることができる青年と出会う。
 青年は彼女を親身になって心配し、彼女の死体の捜索に全力を傾ける。
 だが、彼は、彼女を轢き逃げした犯人であった。
 里美は彼を憎むが、彼は、彼女を生き返らせるべく、彼女の死体を捜し求める…」

・「第21話 永遠の娘」
「ビルから飛び降り自殺をしようとしている、ホームレスの男。
 彼は心臓に病気があると医者に言われ、将来を悲観していた。
 彼の魂を狙うミーナは、彼と話をする。
 彼は、アルカードのせいで不幸になったと恨んでいた。
 以前、彼は、小腸の一部と引き換えに、妻を手に入れる。
 二人の間には可愛い子供が産まれるが、七歳の頃、子供が交通事故死し、妻も自殺してしまう。
 彼は子供を救うことができたのだが、その瞬間に、小腸を取られたための発作が起こり、事故を防げなかったのであった。
 ミーナは、アルカードの心臓が古くなっていることを知り、男に接近する。
 男は、亡くなった娘の面影を、ミーナに投影し、彼女と楽しい日々を送る。
 ある日、ミーナは、友人のアルカードを助けてほしいと、彼をアルカードの館へと連れて行くのだが…」

・「第22話 二つの美」
「森川恵子と兄は、瓜二つの美顔兄妹。
 彼女の兄は大のナルシストで、女装しては自分の美しさに酔っていた。
 また、彼は、妹の恵子の美しさに嫉妬し、彼女が恋人や友人を作ることを許さない。
 孤独に悩む彼女は、アルカードと出会い、彼に、彼女をずっと愛し、守ってくれる恋人を願う。
 その代償は、彼女の体温であった。
 望み通り、彼女には吉田という恋人ができる。
 しかし、彼女は体温を奪われたため、夏なのに、寒くて外出もできない。
 二人は、兄にばれないよう、密かに会い続けるが、兄はそのことを敏感に察する。
 彼は恵子を監禁すると、恵子に化け、吉田をふり、あちらこちらで恵子の評判を落とす。
 その恵子が偽物であると、恵子に熱を上げるカメラ小僧だけが気付くのだが…」

・「第23話 薬の効果」
「アルカードのもとを訪れた少女、理奈。
 彼女の願いは、姉を殺してほしいというものであった。
 彼女の姉は、特殊な病気らしく、寝たきりで、何もかも独占していると理奈は感じる。
 中でも、ペットの猫、クロが姉に懐いているのが、気に入らない。
 そこで、姉が毎日飲んでいる薬を半分ずつすり替えていたが、なかなか死なないので、アルカードに頼みに来たのであった。
 アルカードは、代償として、彼女の神経を要求する。
 こうして、姉は死に、理奈はクロと共に楽しい日々を過ごす。
 ある日、彼女はクロの様子がおかしいことに気付き、アルカードの館へ向かう。
 姉が飲んでいた薬を、クロに飲ませればいいとアルカードに教えられ、理奈は家に戻るが、そこで意外な事実が明らかとなる…」

・「第24話 残された命」
「自分に存在意義を認められず、誠二はアルカードに自分を殺すよう依頼する。
 アルカードは引き換えに彼の血を要求し、一週間続けて、自分のもとに来るよう言う。
 アルカードの館からの帰り道、彼は、子供と無理心中しようとしている母親を目にする。
 彼女は、五年もない命で、子供のことが心配と訴えるが、誠二は、自分なんかあと少しの命だと言い返す。
 翌日、誠二の前に、昨日の母親が現れ、自分の娘と仲良くしてほしいと頼む。
 一度は断ったものの、後ろ髪をひかれ、次の日、彼は、そ
の娘の遊び相手になる。
 それがきっかけで、彼は、母親と話をすることとなる。  彼女は、夫に逃げられ、娘だけを心の支えにして、働いてきたが、身体はもう限界に達しようとしていた。
 誠二は彼女を気の毒に思い、アルカードのもとを訪れるよう勧めるのだが…」
(「恐怖の館DX」1997年4月号〜8月号に掲載)

・「手紙」(1995年「月刊恐怖の館DX Vol.28」掲載)
「正一の妹、ミナは病弱で、十七歳の夏に、亡くなる。
 彼女の遺品に、ラブレターがあり、正一は、彼女が佐々木和男に恋をしていたことを知る。
 佐々木和男は、昔、近所に住んでいて、三人でよく遊んだものだった。
 正一は、妹の想いを伝えておこうと、彼のアパートを訪ねる。
 すると、和男は受験ノイローゼで首吊り自殺をしようとしていた。
 彼は、ミナのラブレターを見ると、涙を流し、彼もミナのことが好きだったと打ち明ける。
 翌日、和男は正一に、ミナへの手紙を渡し、返事を要求する。
 正一は仕方なく、ミナの字を似せて、手紙を代筆して、彼に渡す。
 文通が続くうちに、和男は立ち直っていくが、正一は手紙を書くことに罪悪感を覚えていく…」

2020年1月2・3日 ページ作成・執筆

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