犬木加奈子「裸の女王様」(1998年8月24日1刷発行)

 収録作品

・「アンディヌ」(「恐怖の館DX1997年8月号」初出)
「平凡は女子学生、蛭間スギ子。
 彼女のクラスに、夜野トバリという少女が転入してくる。
 不気味なほどに美しく、帰国子女かつ豪邸住まいのお嬢様。
 あまりに住む世界が違い過ぎて、クラスメートは及び腰の中、隣席になったスギ子は彼女とお近づきの機会を得る。
 しかし、トバリは身体からお香の香りを発散させ、言動がどこかおかしい。
 スギ子は苦手意識を持ちながらも、以来、トバリはスギ子に付きまとうようになる。
 いろいろとプレゼントをしてくれるのはありがたいが、他のクラスメートからはどんどん孤立。
 更に、頻繁に事故やトラブルに見舞われるようになる。
 その度に、トバリは死にそうな顔をして、スギ子を助けてくれるのであった。
 スギ子はトバリを無視することができず、遂には、一人暮らしの彼女と共に豪邸に住み込むこととなる。
 トバリに憧れていたスギ子にトバリは自分の持ち物を惜しげもなく与える。
 スギ子はトバリのように着飾り、振る舞うようになるのだが…」

・「裸の女王様」(「恐怖の館DX1995年Vol.35」初出)
「小学生のサマ子のお父さんは一流会社の社員。
 そして、お母さんは美人で、PTAの役員。
 皆がサマ子の両親を褒める。
 だから、サマ子は特別で、凄い。
 人に命令するのも当たり前、学級委員になるのも当たり前。
 でも、中学生になると、いろんなことがわかってきて…」

・「怪子ちゃんシリーズ@ 古い記憶のホラーストーリー」(「恐怖の館DX1997年10月号」初出)
「奇木怪子(幼少時の犬木加奈子先生がモデル)に父親がしてくれた怖いお話。
 山越えをしようとする二人の兵隊。
 夜の山は冷えるため、途中で布団を買い、二人で布団を担いで、山道を登っていくが…」

・「怪子ちゃんシリーズA 5円玉をにぎって」(「恐怖の館DX1997年11月号」初出)
「東京都中央区湊町にあった父親の実家。
 そこで、怪子は楳図かずお先生のマンガを知る。
 めちゃくちゃ怖くてたまらないのに、怪子は夢中になる。
 また、貸本屋の存在も知り…」

・「怪子ちゃんシリーズB こわい夢」(「恐怖の館DX1997年12月号」初出)
「怪子が小さな頃に見た、こわい夢の話」

・「怪子ちゃんシリーズC おばあちゃんのこわい話」(「恐怖の館DX1998年1月号」初出)
「怪子は寝る前に、祖母が話した「トイレの神様」の話。
 ちっとも怖くなかったにも関わらず、夜中にトイレに起きると、ぽっとん便所が不気味で不気味で仕方なく…」

・「昼間のルヴナン」(「恐怖の館DX1997年9月号」初出)
「仲良し四人組の一人、市根無子が、突然、遺書も残さず、自殺した。
 それからしばらくして、火葬されたはずの無子が教室に帰ってくる。
 無子は、四人組の一人の給食を食い荒らし、その娘の首にアザをつけて、立ち去る。
 皆は幻覚だと思いこもうとするが、アザを付けられた娘は精神錯乱に陥り、十日後に謎の脱水症状で怪死。
 数日後、その娘も教室を訪れ、四人組の別の娘に同じようにして、その娘も同じ末路を辿る。
 転校生の夜野トバリが言うには、彼女達は「ルヴナン」とのこと。
 「ルヴナン」は生前の人間関係のもつれに引き寄せられ、相手を襲うのだと言う。
 学校では、次々と「ルヴナン」による犠牲者が出て、学校中に溢れるようになる。
 無子が「ルヴナン」になった理由とは…?
 そして、「ルヴナン」の退治方法は…?」

・「輪廻」(「恐怖の館DX1995年11月号」初出)
「あまりに多忙な毎日に嫌気が刺した、ホラー漫画家。
 意識を失い、気が付くと、女子高生となっていた。
 初対面の家族や友人に囲まれながらも、反射的に身体だけ動いていく。
 奇妙に思いながらも、全てが新鮮で、楽しくて仕方がない。
 ただ、たまに喉に何かが詰まるような感じがするのだが、その理由とは…?」

・「怪子ちゃんシリーズD 迷い道」(「恐怖の館DX1998年2月号」初出)
「妹ができた怪子はS県に引っ越しするが、何にもないところ。
 だが、怪子は漫画雑誌で楳図かずお先生の漫画と再会。
 漫画雑誌を通して、漫画にのめり込むようになる…」

・「怪子ちゃんシリーズE 登校拒否への道」(「恐怖の館DX1998年3月号」初出)
「怪子が二年の間受けた、先生ぐるみのいじめの話」

・「怪子ちゃんシリーズF ふすま」(「恐怖の館DX1998年4月号」初出)
「いじめを受けながらも、母には言わず、漫画に慰めを見出す怪子の話」

・「怪子ちゃんシリーズG 怪子未来を夢見る」(「恐怖の館DX1998年5月号」初出)
「小学生五年生に進んだ怪子は、意地悪な担任とも別れるが、すっかり内に引きこもるようになっていた。
 一人で漫画を描いて、空想を膨らませることが最大の楽しみ。
 そして、それが怪子に新しい世界を開かせることとなる…」

 「アンディヌ」と「昼間のルヴナン」の出来が傑出しているように思います。
 また、犬木加奈子先生の幼少期の出来事を綴った「怪子ちゃんシリーズ」も犬木加奈子先生のバックボーンを窺い知ることができ、興味深いです。

2017年7月7日 ページ作成・執筆

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