犬木加奈子「八犬伝説 妖怪里見中学」(1999年8月5日1刷発行)

・「ふしぎな玉」(1998年「月刊ホラーウーピー」8月号掲載)
「伏谷由姫は幼い頃、大きな白犬にさらわれる。
 彼女が連れ込まれたのは「八房」(「南総里見八犬伝」に出てくる犬の名前)が埋められた「犬塚」の祠の中であった。
 八房は由姫を「伏姫」と呼ぶが、転生を繰り返すうち、彼女は過去の記憶を失っていた。
 今、宿敵の玉梓が復活しつつあり、再び「八犬士」をつくらねばならない。
 そのために、八房は彼女に口に八つの玉を押し込む。
 十年後、中学生になった由姫は黄泉学園里見中学に通う。
 彼女の幼馴染の犬川正義は最近、彼女のことが気になって仕方がない。
 ある日の下校途中、彼女は車に轢かれそうになったところを、白い犬に助けられる。
 彼女が瀕死の犬を抱きしめると、口から玉が出てきて、犬川正義の掌に入る。
 玉には「義」の文字が記されていた。
 このことをきっかけに、由姫は自分の過去生を思い出し始める。
 だが、玉梓の転生である荒川梓(里見中学の校長)は、伏姫の目覚めを知り、刺客を送る…」

・「犬塚の子」(1998年「月刊ホラーウーピー」9月号掲載)
「犬塚家は、八房を葬った犬塚の祠を守り続けてきた家系。
 犬塚孝は男であったが、女の子として育てられてきた。
 母親は彼が四歳の時に失踪し、その一か月後、父親は子持ちの女と再婚する。
 カメ子とつる子の母子は傍若無人に振る舞い、孝は虐げられるが、父親は一言も口を出さない。
 実はこれにはワケがあった。
 この家の男児は代々、皆、蜘蛛に殺されており、彼を守るためらしい。
 そして、中学生になった孝は里見中学に特待生として入る。
 その彼を、荒川梓とその子分の女王グモが見張っていた…」

・「「義」と「孝」」(1998年「月刊ホラーウーピー」10月号掲載)
「犬塚孝は「孝」の玉を手に入れる。
 彼は母親から聞いた話を裏付けするために、図書館で「南総里見八犬伝」を読んで調べる。
 そこに、犬川正義がやって来くと、二人の玉が反応し合う。
 二人は相手が八犬士であることを知るが、その時、図書室に荒玉梓に操られた生徒達が押し寄せてくる…」

・「魂の記憶」(1999年「月刊ホラーウーピー」春号掲載)
「中学生の天才画家、犬田悌斗(ていと)。
 彼は画家の老人に育てられ、老人の死後は養護施設に入るが、学校にはあまり行かず、アトリエにこもってばかり。
 彼は生まれた時からずっと悪夢に脅かされ、それを絵で表現する。
 彼の唯一の慰めは、夢の中に何度も出てくる美しい少女であった。
 荒川梓は、彼を八犬士の一人と見抜き、泥の化け物を送り込む。
 一方、正義と孝も彼が八犬士だと知り、彼のもとに向かう…」

・「オオクニヌシ」(1999年「月刊ホラーウーピー」夏号掲載)
「古代。
 日本列島ができた頃、地上と共に、地の底には根の国ができ、地上は根住(ねずみ)に支配される。
 アマテラスは、根の国の支配者、スサノオから地上を取り戻すため、天から地上に降りる。
 だが、アマテラスは地上に着いたものの、記憶を失ってしまう。
 彼女は八上村の人々に助けられ、八神姫と呼ばれ、その美貌は日本中に知れ渡る。
 噂を聞き、オオクニヌシが会いに行くと、彼は、彼女の心の清らかさに感銘を受ける。
 しかし、オオクニヌシを、スサノオの娘、スセリビメが一目惚れし、根の国に引きずり込む。
 オオクニヌシはスサノオと面会するのだが…。
 そして、長い長い物語が始まる…」

 犬木加奈子先生による「南総里見八犬伝」をベースにした意欲作ですが、五話で終わってしまった模様です。(理由は不明。)
 八犬士のうち、登場するのは三人だけで、完全な尻切れトンボです。(単行本で出されても困るなあ…。)
 続きはあきらめるしかないのでしょうか?

2022年7月6・7日 ページ作成・執筆

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