小畑しゅんじ「アリ人間」/佐川節子「ふたりのバレリーナ」(小学四年生6月号/1968年6月1日発行)
収録作品
・小畑しゅんじ「アリ人間」
「俊明は学校に向かう途中、町の空き地にすり鉢状の穴を見つけ、面白半分に蟻を放り込む。
小学校で先生は、それは蟻地獄で、底に住むウスバカゲロウの幼虫が蟻等を捕食していると俊明に教える。
放課後、俊明は蟻がまだ頑張っているかもしれないと考え、蟻地獄の巣のあった空き地に向かう。
しかし、そこには何故か広大な砂漠が広がっており、俊明が住んでいる団地も広場も影も形もない。
俊明が訝っていると、誰かの泣き声が聞こえる。
巨大な穴の前で、色黒の少女が泣いており、父親が穴に落ちたと俊明に話す。
俊明が穴を覗き込むと、突風にあおられ、穴に転落してしまう。
気が付くと、すでに夜、俊明は灯りのある方角に向かう。
そこにはあばら家同然の家があり、気味の悪い老夫婦が住んでいた。
俊明はそこで一泊することとなるが、この老夫婦が吸血鬼であることに気付く。
俊明は、老夫婦に捕らえられていた男性と共に、この砂穴から脱出を図るのだが…」
・佐川節子「ふたりのバレリーナ」
「青木道代はバレエ団のホープ。
一方、道代の妹の敬子は、勉強でもバレエでも姉には及ばず、いじけ虫。
でも、いとこの志郎に励まされ、自分なりに頑張ろうと決意する。
次の発表会の題材は「赤い靴」。
主役を巡り、道代は、ライバルの清水洋子としのぎを削る。
勝気な道代はすでに主役の座を射止めたつもりでいたが、ある日、階段から転落し、一か月の休養を余儀なくされる。
どうしても主役を洋子に渡したくない道代は、敬子に猛特訓を施す。
また、敬子も姉の想いに応えるべく、必死の努力をするのであった…」
一冊の冊子の裏表が両方、表紙になっていて、どちら側からでも読めるようになってます。
男の子には「(SF)スリラーまんが」、女の子には「バレエまんが」と、「保護者の目を重要視する」学年誌(注1)に掲載するにはいろいろと問題あるけど、外すわけにはいけないジャンルだったということなのでしょうか?
「アリ人間」は非常にトラウマ度の高い、昆虫版「砂の女」(テキト〜言ってます)で、当時のチビっ子達にはかなりのインパクトだったように思います。
子供向けのマンガでありますが、安易さはなく、丁寧な仕事をしており、そこも好感が持てます。(それ故に、ヘビ〜な描写がてんこ盛りになっちゃいましたが…。)
「ふたりのバレリーナ」に関しては、私、「バレエ・マンガ」は完全に門外漢ですので、さっぱり判断できません。
読んだ印象では、当時の典型的なバレエ・マンガという感じでしょうか。
「ライバル」「根性」「和解」といった要素がきっちり盛り込まれ、それなりに読ませるように思います。
・注1
図書の家・編「超展開バレエマンガ 谷ゆき子の世界」(立東社/2016年10月25日発行)(p97)より引用いたしました。
大珍作「バレエ星」を紹介しておりますが、復刻本と言うよりは、漫画の研究本です。
谷ゆき子先生の作品が断片的にしか読めないのは残念ではあるものの、資料性の高さはそれを補って余りあります。
当時の読者だった方から、ちょっと変わった本を読んでみたい方まで幅広くお勧めできるように思います。
2017年8月24日 ページ作成・執筆