水島順・中西智美男・松本あきら「かなえちゃん」(1957年「少女」11月号付録)
収録作品
・水島順「かなえちゃん」(谷本次郎・作)
「夏休み、岡かなえは、姉やと共に、箱根に旅行する。
かなえは天文学者の父とイギリス人女性との間に産まれたハーフであったが、戦争により母親とは生き別れになっていた。
旅館に泊まった夜、かねえに父親から電話がかかってくる。
父親は素晴らしいニュースがあると話すが、その話の途中、父親に異変が起こり、一発の銃声の後、電話からは何も聞こえなくなる。
翌朝、かなえは電車で家に向かうが、駅には、父親に逆恨みをする矢島という男が待ち構えていた。
かなえは矢島に連れ去られ、廃ビルの一室に監禁されてしまう。
彼女が悲嘆に暮れていると、電車で出会った外国人が彼女のもとに来る。
外国人の目的は、かなえの父親の岡博士と友人の高島博士のつくった電波望遠鏡の図面であった。
かなえは東京ホテルに滞在する、高島博士をおびき出すよう強いられるのだが…。
かなえの運命は…?
そして、かなえの父親の行方は…?」
・中西智美男「ユウ子ちゃん」(颯手達治・作)
「身体の弱い森谷ミヤ子は、昼休みも教室で一人、運動場で遊ぶ子供達を眺めるだけ。
ある日、彼女は皆と離れて、独り淋しく佇んでいる少女を目にする。
彼女の名は原田ユウ子で、転校してきたばかりであった。
ミヤ子は彼女に声をかけ、二人は友達となる。
ちょうど学校にバレエの得意な女教師が転任したのを機に、二人はそろってバレエを習い始める。
仲睦まじく稽古に励む二人であったが、ミヤ子の両親の耳に、ユウ子の家庭事情の噂が入る。
ユウ子の母親は水商売をしており、近所の評判は非常に悪かった。
また、ユウ子も実際はバレエをしている余裕はなく、おもちゃ工場に働かねばならぬ身であった。
そんな時、ユウ子は、母親に捨てられて、孤児院にやられることになる…」
・松本あきら「ものいう小鳩」
「高山朝子は戦争孤児。
戦後、彼女は、アメリカで財産を築きながらも、当地で亡くなった父親の遺産を得るために、アメリカに渡ることになる。
朝子は、アメリカに発つ前に、同じ孤児院の友人達と、山梨県の三つ峠にハイキングに出かける。
そこの谷底で、彼女は、冬でもないのにオーバーコートに身を包み、顔を包帯でぐるぐる巻きにした男に出会う。
男は朝子に鳩の入った鳥籠を渡して、立ち去るが、その直後、朝子の近くに大岩が落下、朝子は入院する。
病院には、アメリカから来たと言う弁護士がおり、彼女の容体を案じていた。
その夜、病院の朝子の前に再び包帯男が現れる。
だが、弁護士は朝子の話を信じず、朝子に水を飲むよう勧める。
水を飲んだ朝子は奇怪な幻覚に襲われ、「きちがい病院」に強制的に入れられてしまう。
きちがいでないと訴えても、医者は朝子の言葉を鼻で笑い、このままでは一生きちがい病院に監禁される身。
そこで、彼女は、包帯男にもらった小鳩に手紙をゆわえ、友人に小鳩を逃がしてもらうのだが…。
朝子の運命は…?
そして、謎の包帯男の正体とは…?」
雑誌付録ですので、当時の実力者が執筆している模様で、作品としては良質だと思います。
この中で、目玉は、松本あきら(松本零士)先生の「ものいう小鳩」でありましょう。(注1)
後のSF作品とは全く違う絵柄ですが、自然描写や幻覚描写等の繊細さは唸らされます。
でも、やっぱり、一番印象に残るのは「きちがい病院」の描写だったりしますが…。
・注1
以前、ちょっと無理して、福岡の小倉で開催された、萩尾望都先生と松本零士先生のトーク・イベントに行きました。
非常に有意義で楽しかったのですが、最も印象に残ったのは、萩尾先生そっちのけで、過去の思い出を熱く!!熱く!!熱く!!語りまくる松本零士先生の雄姿でありました。(新世代の少女漫画家の台頭により、少女漫画雑誌から追い出されたことを何度も愚痴ってました。)
ちばてつや先生の時も感じましたが、戦中戦後を体験している爺様達はメチャクチャ元気です。我々とはタフさが違います!!(個人の感想です)
機会がもしもあるならば、じっくりお話を伺いたいなあ〜。
・備考
読むぶんには問題ないが、ボロい。表紙、p4、p9、p25、黒マジックで落書きあり。pp41・42、裂けあり。
2018年12月6・7日 ページ作成・執筆