いばら美喜「死顔に呪われた姉妹」(1984年7月15日第1刷発行)
「ある冬の日。
海を臨む崖近くで、お遣いから戻る途中の姉妹、明菜と伊代(注1)は、左目の下に黒子のある女性に呼び止められる。
女性は、この町にいる母親を探していると話し、母親の写真を見せる。
しかし、その写真は三十五年前のものであり、明菜は市役所で調べるよう勧める。
女性は明菜に同意して、お礼に彼女の故郷の町で作られた人形をあげる。
二人が話している時、女性の娘は落ちかけたカバンを取ろうと、崖っぷちに身を乗り出していた。
女性は娘に駆け寄るものの、手すりが壊れ、二人とも、転落寸前。
明菜と伊代も二人を引き上げようとするが、力及ばず、親子は冬の海に落ちてしまう。
結局、親子の死体は見つからず、姉妹があの親子は助かったのだと思い始めた頃、明菜の右肩下の肩甲骨のあたりにアザができる。
病院の薬も効かず、アザはどんどん大きくなり、遂には、崖から転落した女性の顔の形となる。
手術しようにも、検査の結果、そのアザを除去すれば、明菜の命に関わるため、治療は不可能。
悲嘆に暮れる、明菜の母親に医者は、心霊学を研究している中沢という人物を紹介する。
明菜のアザを見た中沢はそれを人面疽と断言し、人面疽を取り除くには、明菜に憑りついている女性の願いを叶えることと話す。
つまりは、女性を生き別れた母親と再会させることであった。
明菜のもらった人形から亡くなった親子の故郷が判明し、中沢は親子について知るため、そこに向かう。
また、明菜の家族は、この町にいるらしい女性の母親を探す。
その最中、妹の伊代の後頭部に、亡くなった娘の顔があることが判明する。
姉妹は亡くなった親子の霊から解放されるのであろうか…?」
「人面疽」を扱った怪奇マンガの中では、かなりの出来ではないでしょうか。面白いです。
派手な描写でガンガン読ませる、いばら美喜先生にしてはかなりの異色作で、基本は「家族ドラマ」です。
人面疽に憑りつかれて、苦悶する姉妹と、娘達を救おうと奮闘する両親の描写が丁寧になされており、ずっしりと重い作風です。
と、やけにシリアスなのですが、ただ、ただね…人面疽の描写が不気味過ぎるのです…。
ネタばれですが、ラストは「年老いた母親をようやく見つけ、その老女の背中に娘と孫娘の人面疽が貼り付いている」というもので、字面だけ見たら感動的なのかもしれませんが、画像で見たら、いや、これはマジで怖いです!!(あまりに気色悪い笑顔に裸足で逃げ出してしまいます。)
「おぞましさ」「トラウマ度」の点から言えば、立風書房のレモンコミックスの中でも、頂点に位置すると個人的には思います。
・注1
もしかして、当時のアイドル歌手から名前を拝借したとか…?
2017年5月15日 ページ作成・執筆