鬼城寺健「私の赤ちゃんを食べないで」(1984年6月15日第1刷発行)
「矢田部マリの母親に赤ちゃんができた。
それを機に、矢田部一家は沼沢市のマンションに引っ越すことになる。
自然の豊かな郊外で、ご近所さん達は皆、親切で、妊娠した母親を気遣ってくれる。
しかし、マリはマンションの住民が同じような顔をしていて、快く思わない。
ある夜、赤ん坊の泣き声で目を覚ましたマリが泣き声をたどると、住民達がマンションの地下室で黒ミサを行っていた。
マンションの住民は皆、魔族であり、月に一度、赤ん坊のシチューを食べることによって、人間の姿を保つことができるのであった。
そして、1986年2月9日、ハレー彗星が地球に最も接近する日に、ハレーの神に赤ん坊を捧げれば、人類に代わって魔族が地球を征服することになると言う。
そのための生贄に選ばれているのが、自分の母親のお腹にいる赤ん坊であることを知ったマリは、赤ん坊を守る決意を固める。
だが、父親は麻薬煙草で洗脳され、母親は全く聞く耳を持たない。
そこで、マリは引っ越す前に親交のあった神父のもとに行き、悪魔を退治する薬と十字架を貰う。
一方、マリが秘密をかぎつけたことを知った魔族達はマリの命を狙う。
そして、1986年2月9日、マリの母親は元気な女児を出産するのだが…」
月宮よしと先生の鬼城寺健名義の作品の中では、最高傑作だと思います。
設定は「ローズマリーの赤ちゃん」(注1)なのですが、マンションの住民は悪魔崇拝者でなく、地球を再び我が手に取り戻そうとする、魚面した「魔族」なのです。
その容貌はまさしく「インスマウス人」…となると、ラヴクラフトですよ!!
しかも、ラストには、魔族の子孫の詰まった、巨大なカエルの卵が町を蹂躙しております。
人類に迫る滅亡の危機…こいつぁ、まさしく「コズミック・ホラー」なのです!!
嗚呼、何て贅沢な作品なんだろう…。(そうか?)
・注1
アイラ・レヴィンの原作(ハヤカワ文庫)は読みましたが、名作の誉れ高き、ロマン・ポランスキーの映画の方は未見なのであります。
家にはDVDがずっと前からあるのに、こういう基本をおろそかにしてはいけないと、反省…。
2016年7月4日 ページ作成・執筆