好美のぼる「呪いのワンピース」(1984年2月15日第1刷発行)

「森三重子の父親の再婚相手は、同年代のたま子という少女を連れていた。
 三重子が姉、たま子が妹となり、二人は同じクラスになる。
 だが、たま子と継母は、三重子を家庭から排除する腹積もりであった。
 悪辣な二人は策を弄し、三重子を神経衰弱に追い込む。
 度重なる精神的ショックのため、息も絶え絶えの三重子は、亡き母の思い出の宿る服地を抱く。
 三重子の母親は、三重子と「ペア―ルック」の服を作るために、その服地を買いに行った際に、事故で亡くなったのであった。
 たま子と継母は三重子からその服地を取り上げ、精神病院へ入院させる。
 その服地を使い、二人は「ペア―ルック」のドレスを作ろうとするのだが…」

 好美のぼる先生の典型的な作品と言えると思います。
 「意地の悪い継母とその娘」がヒロインをあの手この手でいびりまくった挙句、「亡き母の呪い」が降りかかり、悪者は破滅して、ハッピー・エンドという、非常に直球な内容です。
 ですが、この作品を印象深くしてしているのは「呪われた服地との攻防」(注1)!!
 継母とその娘は、前妻の霊が服地に憑りついているのを知りつつ、ちっともあきらめようとしません。
 服地が「縫わないで〜」と嘆願しているにも関わらず、継母が髪を振り乱して、ドレスに仕立て上げるシーンは、ガッツに満ち溢れており、必見です。
 んで、そんなドレスを着て、やっぱり呪われてしまい、できもので全身を覆われたモンスターになるのですが、どうしてそんな面妖なモンスターになったのか、当然ながら、説明は全くありません。
 まあ、悪は滅びたので、それでオーライということなのでしょう。

 あと、この作品、ジャケットが丁寧に描かれており、はっと心を打たれました。
 袖(右側の画像)にも同様に丁寧なイラストが載っており、好美のぼる先生も端正に描こうと思えば描けたことが窺えます。(非常に失礼な言い方…。)
 でも、緑のイボイボだらけのモンスターはもう少し、何とかならなかったのか…。

・注1
 風呂敷包みの服地が、継母とその娘の後を追うという、キュートなコマもあります。(pp122・123

2018年7月21日 ページ作成・執筆

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