好美のぼる「感情線悪魔の子守唄」(1986年6月15日第1刷発行)

「安達村の片隅にひっそりと暮らす、緑川夕子とその母親。
 どこから来たのか誰も知らず、村人達からは二人をよそ者扱い。
 母子の二人暮らしであったが、二人は非常に仲睦まじく、母親が野菜作りの名人だったお陰で、不自由なく暮らしていた。
 また、夕子は学校では優等生で、学校でいじめにあっても、いじめっ子の方が何故か、ひどい目にあってしまう。
 ある日、村の旧家の安達家で、当主の夫婦が急死する。
 一人息子の明彦は、東京の大学から呼び戻され、急遽、村の15歳の娘達の中から花嫁候補を選ばなければならなくなる。
 安達家では伝統的に「感情線の立派な」娘でなければならず、候補に選ばれたのは三人。
 村長の娘、安藤ゆかり。マーケット経営者の娘、松島君子、そして、緑川夕子であった。
 明彦は、夕子と面識があり、彼女に恋をし始めていたが、身許が身許だけに、他の二人より圧倒的に不利。
 その夜、夕子の母親はその正体を現す。
 彼女は、手形山に棲む魔物であり、15年前、赤ん坊の夕子の可愛さに魅了され、今まで母親として夕子を育ててきたのであった。
 魔物は、夕子の明彦への想いを知り、二人を結ばせようと考えるのだが…」

 「手相恐怖シリーズ」の四作目にて、最終作です。
 魔物に育てられた少女(なかなか可愛い。もじゃもじゃヘアーがトレードマーク)を描いたものですが、魔物の造形があまりに意味不明で、イマイチ感情移入ができません。(でも、農婦姿は凛としていてステキ!)
 また、魔物が、娘の恋のライバルを情け容赦なく半殺しにする描写も、エグ過ぎて、後味が悪いだけです。(楳図かずお先生「神の左手悪魔の右手」を思い出しました。)
 迎えるラストは、母親の正体がヒロインにあっさりばれて、村を立ち去るヒロインの後ろ姿でチョン。
 んで、後書きの「ひとこと」には、「(…)すなおでない愛は悲しい結果になります。愛は、自然に時間をかけてはぐくみたいものです。(…)」と訴えかけております。
 でも、魔物が如何にヒロインに「惜しみなく愛を与」えたとは言え、実の両親からヒロインを奪い取ったという時点で、どうかと思ってしまいますが…。

2018年7月26日 ページ作成・執筆

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