三原一晃「恐怖バラ屋敷」(1981年2月15日第1刷発行)
「R市のはずれに建つ、赤バラの咲き乱れるバラ屋敷。
長い間住む人とてなかったが、そこに野原由紀(12歳)が越してくる。
彼女は父を亡くし、母親は失踪、今は、車椅子の婆やと二人暮らしであった。
由紀には不思議な能力が一つあった。
その能力とは、白バラの根に自身の血を注ぐと、バラが活性化されるというもの。
実は、由紀の祖先は、イギリスの貧乏貴族のタスラ―家であった。
五百年前、ハンス・タスラ―はバラつくりによって出世をもくろみ、国王お抱えのクレオ家とバラつくりを競う。
卑劣なハンス・タスラ―はクレオ家の赤バラ作りを妨害し、また讒言により、クレオ家を追放させる。
クレオ家はタスラ―家に復讐しようとするものの、逆に捕らえられ、拷問の末、惨殺。
白バラつくりによって栄光を掴んだタスラ―家であったが、まもなく、その白バラは何故か赤色に染まるようになり、没落の一途をたどる。
更に、タスラ―家の一族は何代にもわたって変死・狂死が相次ぐこととなる。
そして、そのタスラ―家の血を引く者は、由紀とその母親だけになったのであった。
母親の失踪は由紀の心に暗い影を落とすが、近所に住む満は彼女にとって大きな慰めとなる。
ある日、由紀は満にスキーに誘われ、満の弟、豊を加えた三人で、雪山に出かける。
しかし、頂上に向かうロープウェイが途中で停電を起こし、三人は脱出を図るものの、豊が転落。
病院に運ばれ、由紀の血を輸血することで、命が助かる。
ところが、容態が急変、豊の体中からバラのようなトゲが突き出すのであった。
病院から姿を消した豊を追って、由紀と満はバラ屋敷に向かう。
そこで由紀はクレオ家の呪いと対峙することとなる…」
三原一晃先生(aka 広永マキ先生)の最初の描き下ろし単行本です。
この頃の作風は、つのだじろう先生の影響が濃いような印象を受けます。(私の勘違いかもしれませんが。)
基本的に薄味で、そのスジでの評価はあまり高くない広永マキ先生でありますが、この作品は頑張っております。
両目をえぐられ、両腕を切り落とされた、首吊り死体の描写、バラの蔓に巻き付いた少年の死体の描写、そして、ラストの吸血バラの襲撃はなかなかスペクタクル。
作品が地味とか印象に残らないとか散々言われてますが、なんだ、やりゃできるじゃん…。
トータルで判断しますと、「面白い」作品の部類に入ると思います。
ただし、気になるのが、この作品に出てくる「ばあや」であります。
ジャケットでも禍々しい笑顔を浮かべておりますので、こいつが黒幕であることはバレバレなのでありますが、あからさまにに挙動不審なのであります。
ドアにわざわざ変な顔をつけていたり(左下の画像を参照/ファミコンのアクション・ゲームにでもありそうです。)、「バラの神さま」という得体の知れない仏像を拝んでいたり(右下の画像を参照/仏像前の壷は「ゴボゴボ」泡だってます。)、こういうヘンな描写が、作品の緊張感をばっさばっさと削いでいきます。
もっとタイトに仕上げることができたら、それなりの良作になったのでないかと惜しまれます。
2016年11月3日 ページ作成・執筆