いばら美喜「悪魔の招待状@」(1981年9月15日第1刷・84年7月10日第5刷発行)
     「悪魔の招待状A」(1981年8月15日第1刷・83年7月15日第3刷発行)
     「悪魔の招待状B」(1983年6月15日第1刷発行)
     「悪魔の招待状@(新装版)」(1986年9月15日第一刷発行)
     「悪魔の招待状A(新装版)」(1986年9月15日第一刷発行)



・「1 狙われた少女の巻」
「父親の会社が倒産し、どこにも行く当てがない由美の家族。
 そこへ古田という男が現れ、丘の上の洋館を無料で貸し出すと言う。
 二つ返事で、洋館に移る由実の一家であったが、そこにはポルトガルの悪魔が召使達と隠れ住んでいた。
 悪魔を退治しようとした由実の家族はことごとく返り討ちにあい、惨死。
 更に、悪魔は由美を召使にすべく、虎視眈々と彼女を狙っていた…」

・「2 選ばれた級友の巻」
「悪魔の血に入れ替えられ、悪魔の召使となった由美。
 行方不明となった由美の家族の後釜として、洋館に移って来たのは、由実の親友、亜紀の家族であった。
 悪魔は召使を増やすために、亜紀の誕生会を利用して、級友を誘拐する。
 そして、次に狙われたのは、亜紀であった。
 ある夜、覗き穴から亜紀の様子を窺っていた由実を、亜紀の姉はフェンシングの剣で傷つける。
 由実は亜紀の姉を襲うが、逆に大怪我を負わされ、病院に搬送。
 由実は病院で、人間の血を輸血され、人間としての心を取り戻す。
 だが、病院まで由美を追った悪魔により、強制的に連れ戻されてしまう。
 どうにか人間に戻ろうとする由美は、亜紀の協力を得て、悪魔の手から逃れようとするが…」

・「3 謎の少女理絵の巻」
「悪魔の手から由美達を救ったのは、超能力少女理絵であった。
 理絵は「邪眼」の持ち主で、憎しみの心を持つと、見たものを粉砕するという能力があった。
 理絵とその母親は、丘の上の洋館で、ポルトガルのオカルト研究家、コルベールと会う。
 彼は、悪魔をスーツケースに閉じ込め、日本に運び込んだ張本人であった。
 彼は研究を重ね、十年間、悪魔をスーツケースに封印する方法の開発に成功し、日本を訪れたのである。
 しかし、正体を見破られ、丘の上の洋館から悪魔は姿を消す。
 コルベールは悪魔の新しい居場所を探し出そうと奔走する。
 その間、いまだ悪魔に狙われている由美と亜紀を、理絵が護衛することとなる。
 悪魔と超能力少女の対決や如何に…?」

 いばら美喜先生の後期作品の中で頂点に位置する傑作です。
 また、立風書房のレモンコミックスにおいても、面白さはトップ・クラスです。
 個人的には、いばら美喜先生の作品の魅力は短編にあると思うのですが、執筆のために読み返したら、思いの外、面白く、長編も悪くないと考えを改めました。
 一般的には、悪魔による奇想天外な人の殺され方がよく挙げられますが、貸本の「怪談」等の短編をある程度、読んだ者からすれば、そこまで奇抜なものではないと思います。(これは私の感覚に問題があるのかもしれません。自分だけを「基準」に物事を判断したら、ダメですよね…。)
 それよりも、三巻目からの「悪魔 vs 超能力少女」の方が、80年代ホラー映画に思い入れのあるオヤジとしては、血沸き肉躍りました。(注1)
 いや〜、情け容赦のない「超能力少女」って、やっぱ、いいですよね!!(個人の感想です。)
 また、いばら美喜先生による後書きも、非常に味わい深いです。
 一巻では「小学校五年生の時に、16歳の肺結核の少女の部屋に雑誌を見に行き、幽霊の絵でこわいものに興味を持った話(自画像あり)」、二巻は「貧乏神について」、三巻は「子供の頃に村にいた口寄せの「ワカサマ」の話」と、いばら美喜先生のナイーブかつシニカルな面を窺い見ることができます。
 ちなみに、この作品はかなり人気があったらしく、後年、新装版として二巻にまとめられて出版されております。
 この際、表紙と後書きが新たに書き直されており、それはそれで興味深いものがあります。(私見では、後書きは、最初の版の方が面白いと思います。)
 人気作品として、プレミア価格がついてしまった作品ですが、他の作品共々、復刻されて、より多くの人の目に触れることを祈っております。

・注1
 「13日の金曜日」のジェイソンも超能力少女と対決している作品があります。
 私は「完結編」以降は興味がなく、その回は未見でありますが…。

2017年5月23・24日 ページ作成・執筆

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