鬼城寺健「人魂がさまよう海」(1983年6月15日第1刷発行)

「有明海に面する町、山川町。
 そこでは町長の強力な指導により、レジャーランドの開発が進められていた。
 町民が諸手を上げて賛同する中、隠れキリシタンの末裔、千々岩平蔵は一人反対する。
 平蔵は町から見える不知火の様子から、不吉の前兆を見出していたのであった。
 不知火は、島原の乱にて虐殺された、天草四郎を頭領としたキリシタン達の怨霊と言われ、過去、陸地に上がり、人々を襲った。
 そこで、怨霊を静めるべく、隠れキリシタン達は地下に祭壇をつくり、長年に渡り、祈りを捧げてきたのであった。
 しかし、今やそういうことを続けているのは、平蔵一人であり、町では変わり者とみなされていた。
 更に、平蔵の娘、トミは母親の死にショックを受けてから失語症であった。
 友達のいないトミに、ラグビー部のナイスガイ、一郎は優しく接する。
 だが、一郎に想いを寄せる、町長の娘、高子とその一味は、トミに対する嫌がらせを激しくする。
 一方、レジャー開発ではおかしな事故が多発するようになるが、町長は開発を強行、遂に開園にまでこぎつけるが…」

 スペクタクルなマンガです。
 見どころは、天草四郎率いる怨霊の一大集団が、町を炎で壊滅させるところであります。(注1)
 この怨霊集団、容赦というものが一切なく、主人公の親子と一郎を除いて、老若男女の区別なく、町民を皆殺しにしております。(片端から炭へとなっていく人々…。)
 そこまでする力があるのなら、はなっからレジャー開発なんて阻止できそうですが、それを言ったら、話が前に進みませんよね。

 後書きにて、作者が子供の頃、有明海の不知火に不可思議な思いを抱き、それが幻想的な想像に発展して、漫画を描くようになったと述べられてます。(注2)
 このマンガには、「長い間胸にあった考え」を「自分なりに創作したもの」とのことで、他の作品のようにホラー映画のいいとこどりみたいなところはなく、まとまりはいいです。
 とは言うものの、「いじめられっ子の逆襲」というテーマもありますので、やはり、当時のホラー映画の影響は大きかったようで…。

・注1
 個人的な感想ですが、スティーブン・キングの原作の方の「キャリー」を彷彿させます。
 ブライアン・デ・パルマが監督した映画とは違い、原作の方はもっと大暴れして、町を壊滅させていたように記憶しております。
 ただ、これも原作を読んだのが、20年以上も前でありまして、はっきりとしたことは覚えておりません。
 読み返してみるのもいいのでしょうが、読み返すには、ちと長過ぎる…。

・注2
 鬼城寺健(月宮よしと)先生は、長崎県か熊本県の出身だったようです。
 マンガの中では、台詞にその地域の言葉訛りが使われていて、新鮮でした。

2016年7月3日 ページ作成・執筆

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