広江唯「白い影の恐怖」(1987年1月15日第1刷発行)

「孤児院にいたところを、母の姉に引き取られたアネット。
 彼女が向かったのは、鬱蒼とした森に囲まれた、陰気な屋敷であった。
 クレイン家の屋敷の住人は、メリージェーン伯母、アネットの祖母、教育係として雇われたミス・テシー、使用人のホーソンとグウィンの五人のみ。
 だが、アネットは屋敷を訪れた時からずっともう一人誰かの視線を感じ続ける。
 翌日、アネットは伯母から豪勢な白バラ園に案内される。
 彼女はそこで白バラの中に白い猫を見つけるが、その猫は彼女に跳びかかると、そのまま消えてしまった。
 結局、アネットの言うことは誰にも信じてもらえず、白バラを白猫と勘違いしたのだろうと伯母に諭される。
 それから、アネットは、分裂気質な伯母、陰気な祖母、厳格なミス・テシー、無口な使用人達に囲まれ、欝々とした日を送る。
 ある夜、アネットは寝室で白いピエロの服を着た人物の幻を見る。
 勉強中にもその白い影を目にして、アネットがその向かった方向に行くと、そこは昔に使われていた子供部屋であった。
 子供部屋の隅には、アネットが幻で見た、ピエロの人形があり、アネットはピエロの人形に友達になろうと話しかける。
 人形でも友達ができ、浮かれる彼女を、ミス・テシーは訝しむ。
 彼女は、アネットの様子を窺い、子供部屋の存在を知る。
 だが、子供部屋に入ったミス・テシーは、後に、庭で刺殺体で発見される。
 結局、殺人事件は迷宮入りして、幾日か経った頃、アネットは夢を見る。
 夢の中で、ブライアンと名乗るピエロの人形がアネットに白い猫を探してくれるよう訴える。
 アネットはバラ園で猫を探し出し、子供部屋に連れて行くのだが…。
 ブライアンの正体とは…?
 そして、屋敷に秘められた、恐ろしい過去とは…?」

 1980年代に描かれたとは思えない、素朴なタッチの怪奇少女マンガです。
 立風書房のレモンコミックスは、新人作家の作品はイマイチなものばかりですが、私、この作品がかなり好きです。(広江唯先生に関しては、詳細は不明です。)
 理由は、あまりに「サイコ」なメリージェーン伯母さまの存在、この一点にあります。
 このメリージェーン伯母さまは、「キチガイ」を描かせたら右に出る者はいない山岸涼子先生のキャラと同質のオーラをまとっているように、私個人は感じております。
 笑っていようと、怒っていようと、澄ましていようと、どこか表情が「虚ろ」で、凄まじく「イヤなリアリティー」を発散しているように思います。
 単に絵心の問題で偶然なのかもしれませんが、これは狙っては出せないのではないでしょうか?

2017年5月19日 ページ作成・執筆

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