まいた菜穂・他「絶対恐怖」(2018年2月5日初版第1刷発行)
収録作品
・まいた菜穂「最後の晩餐」(「ちゃおデラックス」2017年9月号ホラー増刊)
「その日は満島千花にとって厄日であった。
先輩に振られ、帰宅をしたら、飼い犬のチャーリーが死んでいた。
死体を埋めるところがなく、ようやく見つけたと思ったら、そこは会員制のレストランの敷地であった。
羊の頭をしたウェイターは彼女から事情を聞くと、死体を引き取り、彼女をレストランで休ませる。
ウェイターはサービスとして彼女にスープを持ってきて、彼女が一口スープを口に運ぶと、ビックリするぐらい美味しい。
だが、それは「チャーリーのコンソメスープ」であった。
ショックを受ける彼女にウェイターは「食べることは究極の愛」で、食べて元気になることこそが供養になると説く。
そして、実際、スープは非常に美味しく、彼女はスープを平らげてしまう。
レストランを出る時、ウェイターは良い食材を提供してくれたことを感謝し、もしも、彼女が食材を提供してくれたら、またごちそうすると話す。
彼女は料理の味が忘れられず、レストランに「食材」と次々と提供。
また、これがきっかけで同じクラスの滝沢と親しくなり…」
・今井康江「異世界学校」(「ちゃおデラックス」2017年9月号ホラー増刊)
「まゆみには居場所がなかった。
無関心な親、バカで意地の悪いクラスメート、いじめを見て見ぬふりをする教師…こういったものにうんざりし、夏休みの前の夜、彼女は校舎の屋上から飛び降り自殺をしようとする。
すると、足元から奇怪なオバケが這い上がってきて、彼女の目の前に立ちはだかる。
背後から声を出さないよう彼女に警告する女性の声がして、自殺をしてもあんなふうにさまようだけと告げられる。
まゆみが振り向くと、そこには担任の神田先生がいた。
神田は彼女から話を聞き、いじめに気付かなかったことを謝罪する。
彼は彼女を家まで送ろうと言うが、彼の背中には女子生徒の霊が憑いていた。
女子生徒の霊はまゆみに身体を貸すよう頼むのだが、その目的とは…?」
・辻永ひつじ「闇デレラ」(「ちゃおデラックス」2017年9月号ホラー増刊)
「昔々、あるところにヤンデレラという少女がいた。
ヤンデレラは病気で両親を亡くし、いじわるな義理の母と姉のゾフィと同居する。
彼女は毎日、薪割りをして、それによって収入を得て暮らしていた。
ある日、王宮で王子の婚約者を決める舞踏会が行われるとの通知が届く。
ヤンデレラも行きたかったが、義理の母は許さない。
だが、舞踏会の夜、王子の心を掴んだのはゾフィではなく、見知らぬ美しい娘であった。
娘はすぐに王宮を去り、後にはガラスの靴だけが残される。
一週間後、ヤンデレラが慌てて家に戻ってくる。
彼女が薪を割ろうと小屋に行くと、小屋のそばでフードの女が若い娘を殺していたのであった。
母とゾフィが様子を見に行くと、フードの女はガラスの靴の女で、ライバルになる娘を次々と殺しているらしい。
母とゾフィはこれを利用するのだが…」
・福永まこ「欲望しりとり」(「ちゃおデラックス」2017年9月号ホラー増刊)
「小葉は根暗な小学生女子。
彼女は人気者のミツハルに想いを寄せていたが、お金がないため、彼の取り巻きに入れてもらえない。
ある日、彼女は少年がしりとりゲームをしているのを目にする。
単なるしりとりなのかと思いきや、彼はそれで高価なゲーム機をゲットしていた。
話を聞くと、これは「しりとりゲーム機」というもので、最後に言った言葉は何でも手に入ると言う。
彼女は早速、ゲーム機を入手し、しりとりでいろいろなものを手に入れる。
これが功を奏して、彼女はミツハルの誕生会に読んでもらえることとなる。
彼のハートをゲットするため、彼女は彼の欲しがっていたPSPグレートを贈るのだが…」
・小室栄子「おしおき先生」(「ちゃおデラックス」2017年9月号ホラー増刊)
「逢瀬しのぶは黄昏小学校の五年生。
彼女のクラスには葛原理花という問題児がおり、いつも授業の妨害をしていた。
ある晩、しのぶが文房具屋にノートを買いに行ったついでに学校の前を通りかかると、学校の中から女子の声が聞こえる。
見に行くと、理花がクラスメートのあやをトイレの個室に閉じ込めようとしていた。
しのぶが理花を止めると、理花はターゲットをしのぶに変更する。
その時、学校のチャイムが鳴り、「授業の時間です。席につきなさい」と声が聞こえる。
声の方に顔を向けると、目の前に「おしおき先生」が立っていた。
おしおき先生は昔、この学校で自殺した先生の幽霊で、「授業の時間です。席につきなさい」と言って、「はい」と答えるとどこかに連れ去られ、「いや」と断ると殺されてしまうと言う。
しのぶと理花は学校から出ようとするのだが…」
・坂元勲「私は笑ちゃん」(「ちゃおデラックス」2017年9月号ホラー増刊)
「高倉笑(たかくら・えみ)は秀才の少女。
だが、彼女は字をよく間違い、それがもとで中学受験を失敗。
母親はそれを根に持ち、笑に漢字の特訓を課す。
それは間違えた漢字をノート一冊分書かすというスパルタなものであった。
だが、同じ漢字を繰り返し書いていると、ゲシュタルト崩壊を起こし、意味のない記号となって笑はしばしば頭が混乱する。
ある時、「笑」という漢字を練習していて、自分の名前が何だったのかわからなくなる。
そこで、友人から聞いた噂話を実行する。
それは毎日鏡に向かって「お前は誰だ?」と問いかけると、自分が誰だかわからなくなるという噂であった。
しかし、こうすることによって笑は鏡の中の自分が高倉笑だと教えてくれるように感じ、心が落ち着く。
彼女はが「笑」を取り戻す時…」
個人的には、福永まこ「欲望しりとり」と坂元勲「私は笑ちゃん」が良い出来だと思います。
福永まこ先生には「殺人遊戯」(「奇妙でこわい話」収録)という傑作がありますが、「欲望しりとり」も玩具をテーマにした佳作です。
坂元勲先生の「私は笑ちゃん」は教育ママによって精神が崩壊する少女を描いた、強烈な「発狂もの」です。
静かに淡々と狂っていく様子がかなり神経にきます。
2025年2月9日 ページ作成・執筆