七月鏡一・原作/朝日曼耀・作画
「ギジン ―擬人―@」(2020年6月17日初版第1刷発行)
「ギジン ―擬人―A」(2020年8月17日初版第1刷発行)
「ギジン ―擬人―B」(2020年12月16日初版第1刷発行)
「ギジン ―擬人―C」(2021年8月17日初版第1刷発行)



単行本@(「サンデーうぇぶり」2019年10月18日配信分〜2020年1月17日配信分)
・「におい1 ―侵入―」
 相羽霧子は平凡な高校二年生。
 八年前、彼女は父親の従兄弟に引き取られ、優しい養父母と弟の比呂と楽しく暮らす。
 また、彼女には同じクラスで生物部員の結城草太というボーイフレンドもいた。
 ある日、彼女は地下鉄のホームで奇妙な男に襲われる。
 男は彼女の匂いを嗅いでおり、逃げようとすると、男は彼女に掴みかかってくる。
 草太が男を殴りつけると、男は次第に変身し…。
・「におい2 ―侵食―」
 霧子が家に帰ると、怪物が養母を殺していた。
 怪物は次々と触手を伸ばし、霧子に迫る。
 彼女が追い詰められたその時、隻眼の男が現れる…。
・「におい3 ―侵害―」
 怪物は銃弾を撃ち込まれたにもかかわらず、まだ生きていて、男に襲いかかる。
 男は反撃し、怪物を火炎缶(?)で焼き尽くす。
 彼は霧子に一緒に来るよう言うが、彼女はそれを拒否。
 玄関でチャイムが鳴り、彼女は助けを求めに行くが…。
・「におい4 ―侵奪―」
 隻眼の男は倉鬼敬介と名乗る。
 そして、あの怪物は『擬人』で、菌類が人に寄生し、擬態したものであった。
 擬人の目的は相羽霧子の体というのだが…。
 その頃、藍空大学の生命科学科では、菌類学者の尼崎が一人の女子中学生を応対していた。
 彼は菌類について語るが、徐々に違和感を抱くようになる。
 女子中学生の目的は…?
・「におい5 ―侵略―」
 霧子は倉鬼と行動を共にすることとなる。
 倉鬼が言うには、彼女は擬人への抗体を持っており、擬人はその抗体への耐性を得るため、彼女の生殖細胞を狙っていると言う。
 そして、擬人たちの追撃は激しさを増していき…。

単行本A(「サンデーうぇぶり」2020年1月31日配信分〜7月3日配信分)
・「よどみ1 ―混入―」
 霧子と倉鬼は等々力警察署に運ばれ、津島春樹という男から質問を受ける。
 津島は警察官のようだが、どこか態度が不審であった。
 そこに霧子の養父、相羽文武が駆けつけてくる。
 彼は警察署前にいた草太に今夜零時までに家族と共にここから逃げるよう警告する。
 彼は都庁の「特区」関係者であったが、何を知っているのであろうか…?
・「よどみ2 ―混迷―」
 等々力警察署に一台のトラックが突っ込み、中から怪物が現れる。
 怪物は射殺されたものの、一階では大パニック。
 しかし、霧子の養父はそれには見向きもせず、刑事課の瀬野と会い、霧子を一刻も早くここから連れ出そうとするのだが…。
・「よどみ3 ―混濁―」
 草太は警察署の中に入ろうとするが、「その建物はもうあいつの体の中だから」と見知らぬ女子中学生に止められる。
 彼女はビルの壁を駆け上がり、警察署に侵入。
 彼女は何かを捜しているようなのだが…。
 そして、彼女の持つバッグの中身は…?
 一方、瀬野は警察署を出ようとする相羽文武を止める。
 犯人は倉鬼にされていたが、文武は犯人は「菌類」だと言い、更に、恐ろしいことを告げる…。
・「よどみ4 ―混乱―」
 女子中学生は警察署六階にある証拠保管室にいた。
 彼女が胸に抱く書類は「知的菌類」に関するものであった。
 その頃、二階では擬人化した女性警察官が暴れていた。
 擬人の狙いはやはり、霧子。
 養父が傷つくのを目にした時、霧子は別の女性へと変身し…。
・「よどみ5 ―混沌―」
 倉鬼は取調室を脱出して、銃を手に入れる。
 彼は二階の人々と合流するが、その頃、一階の人々は皆、擬人へと変化していた。
 霧子は自分の中のもう一人の「キリコ」と会い、彼女から数分後に皆、殺されると予言を受ける。
 生き延びるため、彼らは脱出経路を探すのだが…。

単行本B(「サンデーうぇぶり」2020年7月17日配信分〜12月11日配信分)
・「うねり1 ―乱入―」
 警察署の七階の通路で霧子は女子中学生と出会う。
 彼女の名は真船かつら、彼女もまた擬人であった。
 バッグの中の声に促され、かつらは変身し霧子に襲いかかってくる。
 だが、彼女は何故かためらい、霧子を殺すことができない。
 そこに倉鬼が駆けつけ…。
・「うねり2 ―乱離―」
 菌類との交渉は決裂。
 一階の人々を吸収して巨大化した菌類のモンスターは霧子たちに容赦なく襲いかかる。
 倉鬼が時間稼ぎをしている間に、霧子たちは階段を降りて、逃げようとするが、モンスターに行く手を阻まれる。
 仕方なく、相羽父娘、倉鬼、瀬野・かつらは倉庫の一室に避難するが、そこで彼女は養父から「特区計画」、そして、彼女の本当の母、宗像令子について聞かされる…。
・「うねり3 ―乱魁―」
 霧子たちが廊下を進むと、その前に菌に寄生された津島が現れる。
 彼は霧子たちに取引を持ち掛けるが、それは罠であった。
 そのやり方を相羽文武が非難すると…。
・「うねり4 ―乱壊―」
 霧子が変身して現れる、真っ白な女性。
 それは『女王株』というものなのだが、そのパワーとは…?
 そして、菌類が女王株を怖れる理由とは…?
・「うねり5 ―乱逆―」
 霧子たちは菌類の企みを知り、それを阻止する方法に出る。
 それは防災行政無線で町中の人々に避難を呼びかけること。
 霧子の訴えは人々に届くのであろうか…?

単行本C(「サンデーうぇぶり」2020年12月25日配信分〜2021年5月28日配信分)
・「ゆがみ1 ―壊乱―」
 結城草太は学園が一年上の中条結菜と知り合い、行動を共にしていた。
 結菜は草太が別人のように感じ、問い質すと…。
 草太の身に一体何が起こっているのであろうか…?
 一方、警察署では菌類のモンスターが徐々に縮みつつあった。
 倉鬼は菌類が粘菌へと形を変えていることに気付き、ここからの脱出を急ぐ…。
・「ゆがみ2 ―壊乱―」
 粘菌に襲われ、霧子の仲間は一人また一人と捕らわれていく。
 倉鬼は霧子だけは何としてもここから逃がそうとする。
 その頃、草太は霧子の弟の比呂とその友達を連れて、ゲートの外に連れて行く。
 結菜は彼に説明を求めるが…。
・「ゆがみ3 ―壊滅―」
 霧子だけが警察署から生きて脱出する。
 だが、午前零時を境に町は「菌類世界」へと変貌していた。
 彼女の味方は菌類学者の柳沢のみ。
 人を探して、町を彷徨っていると、彼女の前に警察署を襲った菌類のモンスターが立ちはだかる。
 霧子がモンスターと戦うと、モンスターの中から取り込まれたはずの真船かつらが現れる。
 霧子とかつらの関係とは…?
 そして、二人は相羽文武から教わった住所へと向かう。
 そこは森の中の屋敷で、菱部廉太郎という車椅子の青年がいた。
 彼は「特区」の立案者で、霧子の曾々祖父に当たるというのだが…。
・「ゆがみ4 ―壊変―」
 菱部廉太郎は自分が菌類に侵され、そして、女王株を発見した経緯について語る。
 彼は人類と菌類の共存について霧子と語り合おうと言うのだが…。
 菱部廉太郎の企みとは…?
 そして、その本当の姿とは…?
・「ゆがみ5 ―壊劫―」
 その場に瀕死の倉鬼が現れる。
 彼は妻の仇を取るために、菱部に銃弾を撃ち込む。
 しかし、菱部は時空を超えた存在となっており、倉鬼の攻撃は通じず、彼は無惨に殺される。
 だが、それは結城草太が菱部を倒すための計画の一つであった。
 草太は霧子を守ることができるのであろうか…?

 菌類(注1)をテーマにした「パニックアクションホラー」(帯より引用)です。
 それなりに面白いのですが、B巻の途中から話が理解しづらくなり、C巻はわかるようなわからないようなビミョ〜な感じです。(私の頭ではストーリーについて行くことができず、作品をちゃんと紹介できているのかどうか心もとないです。)
 また、急ぎ足でストーリーが展開するため、説明不足な点も多く、読後、かなりモヤモヤが残ります。
 ともあれ、SFや生物学に造詣の深い方なら、まあまあ楽しめるのではないでしょうか?
 特に、「菌類」マニアには(多分)お勧めです。

・注1
 同じ「菌類」でも「キノコ」を扱った作品は多いのに、「カビ」を扱った作品はさほどない気がする。(伊藤潤二先生に「黴」という凄まじい傑作があるけども…)
 まあ、所詮はカビだしね…。
 でも、世界で一番怖い菌類は「水虫菌」だと思う。
 水虫も大概だが、おまわりさんより恐ろしい「しむたんきんい」は本当につらい!!(経験者は語る。)

2025年5月22・23・25〜27・30日 ページ作成・執筆

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