伊藤潤二
「ギョ@」(2002年4月1日初版第1刷発行)
「ギョA」(2002年7月1日初版第1刷発行)

「ギョ」(「週刊ビッグスピリッツ」2001年第50号〜2002年第7号、第9号、第10号、第12〜14号、第16号〜20号)
・「第1話 南海の死臭」(単行本@)
「(名字不明)忠と爽原華織は沖縄に旅行に来る。
 忠はスキューバダイビングをして楽しむが、神経質な華織は潮の香りにウンザリ。
 おじの別荘に戻った後、二人は喧嘩になり、華織は外へ出ていく。
 とは言え、放っておくわけにもいかず、捜していると、彼女の悲鳴が聞こえる。
 駆けつけると、華織は腰を抜かしており、草むらに何かの生き物がいる様子であった。
 あたりには生ごみが腐ったような臭いが漂い、別荘に戻るも、臭いは強くなるばかり。
 忠が消臭スプレーを買いに行っている間、華織はシャワーを浴びなおすが、浴室に何かの気配が…」
・「第2話 浮遊する死臭」(単行本@)
「忠が退治したのは、足のはえた魚であった。
 彼は庭でまだ生きている魚をゴミ袋に入れ、石を叩きつける。
 一方の華織は、あまりの悪臭に熱を出して、寝込んでいた。
 彼女はまだ臭いがすると訴え、魚をもっと遠くに捨てるよう頼む。
 忠が庭に出ると、先程のゴミ袋がない。
 華織の悲鳴が聞こえ、家に入ると、寝室の天井にあのゴミ袋が浮いていた…」
・「第3話 恐ろしい上陸」(単行本@)
「翌日、忠は警察官に昨夜、目撃したことを伝える。
 しかし、足のはえた魚なんて荒唐無稽な話はちっとも信じてくれない。
 その頃、漁船や浜辺では大騒動が起きていた…」
・「第4話 ホオジロザメ侵入」(単行本@)
「別荘のそばに、足のあるホオジロザメが出現。
 ホオジロザメは玄関を突き破り、家の中に侵入する。  外に逃げようにも、道には足のある魚の群れで溢れていた。
 二人は二階に逃げるのだが…」
・「第5話 飛来」(単行本@)
「忠と華織は大パニックの沖縄から東京へと戻る。
 華織は沖縄での体験がよほど、ショックだったらしく、いまだに怯えていた。
 忠は、別荘が壊れたことを謝るため、小柳研究所を訪れる。
 おじは元・天才発明家であったが、年のせいもあってか、最近はスランプ気味であった。
 彼は忠から足のある魚のことを聞き、興味を示す。
 一方、華織はまたあの臭いがするとパニックを起こす。
 外に走り出た彼女を忠は取り押さえるが、その時、空の彼方から…」
・「第6話 しのびよる死臭」(単行本@)
「忠は沖縄から飛来してきた、歩行魚の死骸をおじのもとに持って行く。
 魚は完全に腐っており、その臭いは凄まじい。
 おじはこの臭いは人の死臭と同じだと話す。
 彼は魚の解剖に取りかかるが…。
 忠がマンションに戻ると、華織はすっかり臭いに対してノイローゼになっていた。
 彼女は化け物の臭いがするとしきりに訴えるが、その夜…」
・「第7話 遺言」(単行本@)
「沖縄で大混乱を引き起こしている歩行魚が本土にも上陸し始める。
 そのニュースを忠と華織が見ていた時、おじから電話があり、「面白いもの」を見せると呼び出される。
 二人が研究所を訪ねると、おじは彼の父親について話し出す。
 彼の父親は旧日本陸軍の技術者で、沖縄にある無人島である兵器の開発に参加していた。
 その兵器とは、近海の魚から取れた未知の細菌を利用したものなのだが…」
・「第8話 感染」(単行本@)
「おじは歩行魚に取りついている機械について忠に解説をする。
 これは細菌が動物の体内で発生させるガスを動力としていた。
 その頃、華織の身体に異変が起こり始めていた…」
・「第9話 死臭来襲T」(単行本@)
「歩行魚は関東一帯にも上陸を開始する。
 華織は細菌の影響で、身体が膨れ上がり、遂には首吊り自殺を図る。
 大混乱の中、救急車を呼べず、彼は華織を背負って、病院へと向かうのだが…」
・「第10話 死臭来襲U」(単行本@)
「病院に向かう途中、忠はまたしてもホオジロザメに襲われる。
 どうにかその襲撃から逃げ切り、彼は華織をおじに託す。
 その後、彼は神奈川県の実家に行こうとするのだが…」
・「第11話 青白い華織」(単行本A)
「忠は歩行魚に襲われ、工場の排水溝に落ちる。
 彼は奇跡的に助かるも、一か月もの間、昏睡状態にあった。
 その間に、歩行魚パニックは全世界に広がり、日本でもいまだ収束していなかった。
 彼は、華織の消息を知るために、小林研究所を訪れる。
 そこでおじから華織の死を知らされるのだが…」
・「第12話 死臭の発明」(単行本A)
「忠は華織と再会する。
 ただし、華織の姿は変わり果て、その身体は歩行機械の上に据え付けられていた。
 彼はおじが華織を実験台にしたことを知る。
 華織は研究所から走り出て、忠はその後を追うのだが…」
・「第13話 後継者たち」(単行本A)
「ガスが怪しく発光する夜空の下で、街路では人々を乗せた歩行機械が大量に蠢いていた。
 魚が腐敗し、主を失った飛行機械は細菌に侵された人々を次々と捕えていく…」
・「第14話 まとわりつく死臭」(単行本A)
「忠の目の前に、巨大な歩行機械が出現。
 それは元は鮫の歩行機械だったらしく、幾人もの感染者が台に据えられていた。
 しかも、機械から噴出されるガスが新たな犠牲者を引き寄せていく。
 忠はガスから逃れ、一息ついていると、どこからか奇妙な音楽が聞こえてくる…」
・「第15話 死臭サーカス団@」(単行本A)
「忠が音楽が聞こえる方に向かうと、そこにはサーカスのテントがあった。
 中では、ピエロ達が音楽を奏で、動物や人間を乗せた歩行機械が様々な曲芸を披露している。
 これらの音楽や曲芸は全てガスによって作り出されたものであった…」
・「第16話 死臭サーカス団A」(単行本A)
「謎の細菌が生み出すガスの恐るべき姿。
 忠はそれを目の当たりにして、衝撃を受ける。
 次に、団長が「本日の目玉」として紹介したのは、華織であった…」
・「第17話 第二研究室の死臭」(単行本A)
「華織を連れて、忠はどうにか小林研究所にたどり着く。
 研究所には、おじの助手の芳山が暗い顔をして彼を出迎える。
 おじは華織の機械により瀕死の重傷を負い、第二研究室に閉じこもったきり、生死不明であった。
 芳山は忠に頼まれ、華織から歩行機械を外そうとする。
 その時、第二研究所から物音が…」
・「第18話 死臭空襲」(単行本A)
「第二研究室に隠されていたもの。
 それは飛行タイプ型の機械で、おじの身体が据えられていた。
 機械は忠と芳山を襲う。
 二人は第一研究室に逃げ込むが、停止していた華織の機械が急に動き出し…」
・「最終話 死臭の時代」(単行本A)
「忠は華織を追う。
 だが、華織は他の歩行機械達に取り囲まれ、襲われる。
 忠は彼女を救おうとするのだが…。
 死臭に覆われた日本の未来は…?」

・「大黒柱悲話」(単行本A/「週刊ビッグコミックスピリッツ」1997年6月2日増刊号)
「ある家の新築パーティ。
 盛り上がっている最中、その家の主人が助けを求める声が聞こえる。
 声は床下からで、家族や友人達は床下を這いずって、助けに向かう。
 すると、主人は大黒柱の下敷きになっていた…」

・「阿彌殻(あみがら)断層の怪」(単行本A/「スピリッツ増刊IKKI2000年第1号」)
「ある地方の山岳地帯を震源とした巨大地震によって、震源地北方の山の斜面に数キロメートルにも及ぶ巨大な断層が出現する。
 不思議なことに、この断層の表面には人型の穴が無数も開いていた。
 大学の先生などが調べたところ、穴は緩くカーブしながら奥に向かっており、大昔にどうやら人工的に彫られたものが土砂に埋もれてしまったらしい。
 テレビなどでこの穴を見た人々が引き寄せられるように、この断層のもとに集まってくる。
 彼らは、自分の体型にそっくりな「自分の穴」を見つけたと主張し、一人また一人と穴の中に入って行く。
 大脇という青年は断層に向かう途中に知り合った吉田という娘を押しとどめようとするのだが…」

 「ギョ」は伊藤潤二先生の長編の中では「死人の恋わずらい」と並ぶ個人的ベストです。
 「生物と機械の融合」を扱ったSFホラーと言えば、諸星大二郎先生の大傑作「生物都市」がすぐ頭に思い浮かびますが、「ギョ」はせせこましいジャンルなど軽々ととび越えて、「空想科学」の持つ荒唐無稽なノリが充溢しております。
 最初は動物パニックものかと思いきや、ストーリーは加速度的に予想外の展開をしていき、終いには東京が奇怪極まりない地獄絵図と化す…その想像力!!
 そして、こんな空前絶後かつ超絶怒涛なストーリーを奇想を奇想で終わらせない圧倒的な筆力で描写しきったことに心底おったまげです。
 腐臭漂う歩行機械の描写も凄いのですが、ガスの禍々しくも繊細な描写は特筆に値し、本当に目に沁みそうです。
 それを癒してくれるのが、隠れたヒロイン、芳山さんなのですが、あの最後はさすがに可哀そうだな…。
 ちなみに、単行本A収録の「阿彌殻断層の怪」は伊藤潤二先生の短編ベスト・テン…いや、ベスト・ファイブに楽勝で入る出来です。
 脳細胞のどこをどう使ったら、こんな作品が生み出されるのか…いろいろと伊藤潤二本が出て解説されてはおりますが、私にとっては、永遠に蠱惑的な謎であり続けるでしょう。

2023年2月19〜21日/2024年8月13・19・28日 ページ作成・執筆

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