泉道亜紀「人間回収車E」(2018年1月1日初版第1刷発行)

 黒ずくめの男性が運転する、黒ずくめの軽トラック。
 この車は「不要な人間」を条件さえそろえば、二度と戻ってこれない場所へと回収するという。
 今日、この車に回収されるのは…?

・「回収リスト26 村上絵里」
「村上絵里は引っ込み思案な性格のため、クラスで孤立していた。
 彼女はクラスメートの岡村隆司が好きであったが、当然、言い出せない。
 ある日、隆司の彼女の真咲に嫌味を言われ、絵里は憎しみに燃える。
 どうにかして真咲に一泡吹かせられないかと考えながら帰宅している時、彼女は信じられない光景を目にする。
 真咲が実の父親を人間回収車に回収させていたのだった。
 翌日、絵里はこのことをネタに真咲を脅迫。
 まず、隆司と別れさせ、クラスメートとの誰とも口をきくことを禁じる。
 人気者だった真咲は急速にクラスで孤立する一方、絵里は明るくなり、友達もできるようになるが…」

・「回収リスト27 渡瀬加奈」
「渡瀬加奈は仲間外れが怖くて、一日中、友達の顔色を窺ってばかり。
 ある日、友人たちと歩いていると、人間回収車を目撃する。
 友人たちは誰かを回収させてみようと言い出し、登校拒否中の西野葵を回収させることが決定。
 加奈は戸惑いながらも、友人たちと西野家を訪れ、葵を励ます。
 翌日から一人ずつ西野家に行き、葵を家から連れ出そうとするのだが…」

・「回収リスト28 関口敦美」
「関口敦美は非常に我が強く、クラスで孤立していた。
 ある時、彼女はスマホに「人間回収車」というアプリがあることに気付く。
 やり方は簡単で、回収させたい人間の写真を撮って、「回収する」のボタンを押すだけ。
 彼女はこのアプリを使い、邪魔な人間やバカにする人間を次々と回収させていく。
 大抵は戻ってくるものの、クラスメートたちは敦美を恐れるようになり…」

・「回収リスト29 井上千果」
「井上千果は明るくオシャレな人気者。
 彼女には玲子という幼なじみがいた。
 だが、玲子は陰気な「オカルト女」で、仲間外れが怖い千果は自分のイメージを壊さないため、なるべく関わらないようにしていた。
 ある時、玲子をからかっていた少女たちがケガをする。
 玲子によると、それは「願いが満たされるまで人を呪い続けてくれる」ネックレスのお陰で、「すごく効果のあるおまじないグッズを売ってるお店」で入手したのであった。
 千果は興味を持ち、玲子にその店に連れて行ってもらう。
 その店にはとても美しい女性店員がおり、千果は「一人ぼっちにならないおまじないグッズ」がないか尋ねる。
 すると、店員はブレスレットを勧め、お代は効果があってからでいいと言う。
 実際、このブレスレットを付けてから、人が彼女のもとに寄って来るようにはなったのだが…」

・「回収リスト30 沼田美久」
「中学生の沼田美久は施設育ち。
 同じ施設で育った弥生とは家族のようなものであったが、ある日突然、彼女は自殺する。
 美久が悲嘆に暮れていると、実は自殺の原因が自殺だったと教えられる。
 いじめた奴らは秋本と合田。二人は表向きは優等生であったが、裏の顔は最悪であった。
 美久はいじめに気付かなかった自分を責め、担任に相談したり、秋本たちに直談判したりするも、全く効果がない。
 何かいい方法はないかと考えていると、人間回収車が通りがかる。
 彼女はいじめっ子を回収させようと思うが、そばにいた老人が彼女にやめるよう警告する。
 老人は五十年前、人間回収車に回収されたことがあり…」

・「エピソード0」
「人間嫌いの少女。
 どいつもこいつもクソばかり、そして、自分もその一人。
 彼女はこの世にうんざりしていたが、ある日、人間回収車を見かける。
 不要な人間を回収するという仕事に魅力を感じ、どうしたらこの仕事ができるか運転手に尋ねると…」

・「わたしは、人じゃないですか?」(「ちゃおデラックス」2017年7月号)
「小学五年生の陽菜はさほど裕福でない家の子供。
 クラスではオシャレなリエが幅をきかしていて、彼女はダサダサな陽菜をことあるごとにいじめる。
 女の子たちにとっては地味な陽菜は「同じ人間」ではなかった。
 だが、ブイブイ言わせていたリエは新品のゲーム機を壊したことから友人たちに仲間外れにされるようになる。
 彼女は陽菜にしたことを反省し、二人は友達同士となる。
 それから、このクラスではクラスメートたちのものが次々となくなるようになるのだが…」

 「人間回収車」は毎回、趣向を凝らしておりますが、この単行本ではいじめを扱った「回収リスト30 沼田美久」がベストでしょう。
 また、併録の「わたしは、人じゃないですか?」は「五十嵐かおる先生の『いじめ』のトリビュート漫画」とのことで、この作品もいじめがテーマです。
 どちらも読後感は重く、考えさせられる内容となっております。
 いまだに多くの子供たちの心を蝕み、取り返しのつかない傷を負わし続けている「いじめ」問題…「堪える」のが正しいのか、「目には目を」が正しいのか、「逃げる」のが正しいのか、いい年をこいているにも関わらず、情ないことに私にはわかりません。
 ただ一つ、思うのは、学校以外の選択肢が子供たちにもっとあれば良いと思います。
 子供たち各自が好きなことを好きな時にする…そういう機会や自由、支援を与えてくれるような施設があれば理想的なんでしょうが…。

2024年9月30日 ページ作成・執筆

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