もりちかこ「禁歌」(2014年6月4日初版第1刷発行)

 収録作品

・「禁歌」(「ちゃおデラックスホラー」2013年3月号増刊掲載)
「七緒の父親は彼女が幼い頃に亡くなり、母親は彼女をとても大事に育てる。
 しかし、年頃になると、母親の束縛に耐えられなくなり、彼女は家を飛び出す。
 友人の日菜の家に厄介になることとなり、時間を潰すため、古本屋に立ち寄る。
 偶然に「古今子守唄集」という本を手に取り、開くと「禁歌」という歌が載っていた。
 とても古い歌のはずなのに、彼女はこの歌に覚えがある。
 記憶のままに歌ってみるが、本のページに虫食いがあり、続きの歌詞がわからない。
 古本屋を出て、禁歌を歌いながら町を歩いていると、歌詞と同じことが起こる。
 更に、禁歌を歌いながら、彼女の母親が現れる。
 七緒は母親から逃げるのだが、禁歌と共に彼女の母親はどこまでも追ってきて…。
 禁歌の秘密とは…?」

・もりちかこ「オペラ」(「ちゃおデラックスホラー」2013年9月20日号増刊掲載)
「聖羅は、母親と共に観たオペラのプリマドンナに感銘を受け、歌を習い始める。
 そして、その時の劇団のオーディションを受け、合格。
 劇団の団長の妻、マダム・マリアは聖羅の憧れの人であった。
 研修生達は劇団の寮に住み込み、午前中は家事の手伝い、午後はレッスンをして過ごす。
 生活は充実していたが、この屋敷は妙に鳥が多く、薄暗い。
 また、団長とマダム・マリアは片時もマスクを外すことがなかった。
 そのうち、レッスン生が一人、また一人といつの間にか辞めていき、レッスン生は聖羅とリリーの二人となる。
 ある日、彼女が屋上で洗濯物を干していると、団長にここを辞めてはどうかと勧められる。
 しかし、彼女はマダム・マリアと一緒の舞台に立つことが目標で、断固拒否。
 その夜、彼女は自主練習しようと劇場の方に行こうとして、この劇団の秘密を知ることなる…」

・「祝歌」(「ちゃおデラックスホラー」2014年3月20日号増刊掲載)
「美術部の小夜子は古城公園に絵を描きに行く。
 彼女は梅の花を絵の題材にするが、この梅は何故か一年中咲いていた。
 絵を描き始めると、どこからか古風な着物姿の少女が現れる。
 少女の名は静音といい、可愛いだけでなく、とても趣があり、小夜子は絵のテーマを彼女に変更。
 静音は毎日、絵のモデルになってくれて、描き終える頃には二人とも、お互い姉妹のように感じる程、仲良くなっていた。
 そんなある日、静音は小夜子を誕生会に招待する。
 当日、待ち合わせの場所で静音に言われるがまま、小夜子が目を閉じると、次の瞬間には日本風のお邸の前に立っていた。
 誕生会は「宴の間」で行われ、静音は見事な歌と舞を見せる。
 小夜子は感心するが、その時、その場にいた招待客たちに異変が…。
 静音の目的とは…?」

・「祝歌 〜華は千年〜」(描き下ろし)
「静音の邸に映画の撮影隊がやって来る。
 静音はヒロイン役の清水咲美に姉の面影を見出し、彼女に接近。
 咲美は静音をエキストラの女優と勘違いするも、二人はとても仲良くなる。
 ある日、静音は咲美を誕生会に招待するのだが…」

・「しもべ探しの神無」(「ちゃおデラックスホラー」2012年11月号増刊掲載)
「神無(かんな)は霊能力を持つ少女。
 彼女は学校で愛斗という同じ学校の男子生徒の霊から頼みごとをされる。
 それは彼を殺した由奈という女子生徒への復讐であった。
 愛斗と由奈は普通のカップルであったが、ある日、彼女の外泊を断ったことから、彼女は彼を避けるようになる。
 それから数日後、町で見知らぬ男と由奈がいるのを見て、愛斗は彼女を連れ戻そうとするが、断られた挙句、男たちにボコボコにされ、それが原因で亡くなったのであった。
 神無には霊能力だけでなく、霊と同じ姿になる能力があり、それを使って、由奈に復讐すると愛斗に約束する。
 その代わりに、彼はずっと彼女のしもべにならなければならないのだが…」

・「妖精マルティノのエッセンス」(「ちゃおデラックスホラー」2011年7月号増刊掲載)
「妖精マルティノの仕事は人間の調査。
 良い人間か悪い人間かを観察した後、本音でしか生きられなくなる薬を与え、その人間の本性を主に報告するのが目的であった。
 ある時、彼が選んだのは恵麻という少女。
 彼女には誰にも優しく、親切で、まさしく善意の塊であった。
 善意というものはいつも報われるものでなく、裏切られたり利用されたりすることもしばしばであったが、彼女には教師になるという目標があり、前向きに受け止める。
 マルティノは恵麻の純粋さに心を打たれ、彼女に薬を投与する。
 彼女に妖精の加護はあるのであろうか…?」

 個人的には、ダークな「しもべ探しの神無」の出来が優れているように思います。
 シリーズ化したら、喜ぶ人がいるのではないでしょうか?
 ただ、ちゃおホラーの読者にはちょっと早かったかも。

2025年5月12日 ページ作成・執筆

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