牧原若菜「誰かに話したくなる怖い話」(2015年12月30日初版第1刷発行)

 収録作品

・「まるまるがえし」(「ちゃおデラックスホラー2015年7月号増刊」掲載)
「リサはわがままな女の子。
 両親に癇癪を起して、家をとび出たところ、身なりのよい青年が彼女の前に現れる。
 リサは昨日、蛇に襲われていた小鳥を助けており、その恩返しに来たらしい。
 青年について、リサが井戸にとび込むと、中は豪華な部屋で、彼女はお姫さま扱い。
 そこで、リサは食っちゃ寝を繰り返し、気が付くと、まるまると太ってしまう。
 両親のことが心配になった彼女は家に帰りたいと青年に頼むのだが…」

・「皿屋敷」(「ちゃおデラックスホラー2013年3月号増刊」掲載)
 「番町皿屋敷」のコミカライズ。後半の復讐よりも、前半、ヒロインが受ける仕打ちの描写の方が遥かに陰惨…。
 本妻の嫉妬&主人のフラれた恨みのダブルで虐待されており、救いようのない話となっております。

・「せみの鳴き声」(「ちゃおデラックス2007年夏の超大増刊号」掲載)
「暑さに加え、セミの鳴き声に苛立つ結香。
 腹いせに、彼女はセミを飼い猫に襲わせる。
 その夜、風呂場で漫画を読んでいた彼女は、浴槽にセミがぎっしり詰まっているという幻覚を見る。
 彼女が意識を取り戻した時、腹部にセミの脚のようなものが…」

・「ざしきわらしのすむおうち」(「ちゃおデラックスホラー2014年10月号増刊」掲載)
「夏休み、なつみは、田舎の祖母の家に一週間滞在することとなる。
 その家には、祖母の他に、うめという奇妙な少女がいた。
 最初は退屈とはぶてていたが、うめと一緒に遊ぶうちに、田舎の素晴らしさに目覚める。
 だが、足を挫いて、山で遭難した時、うめの正体が明らかとなる…」

・「四谷怪談」(「ちゃおデラックスホラー2012年7月号増刊」掲載)
 ストーリーはほぼそのまんまですが、親の仇云々の因縁には触れず、タカビー女の略奪愛を原因にしているのが、牧原先生流のアレンジなのでしょうか?

・「宿借りの女」(ちゃおホラーコミックス「悪夢の館へようこそ」掲載)
「市井あゆみ(16歳)はボーイフレンドの健介と共に離れ小島に日帰りで訪れる。
 だが、遊びほうけているうちに船の最終便が出てしまい、更に、宿はどこも満室。
 ようやく一軒だけ見つけた旅館は、不気味な外観とは裏腹に、宿の支配人夫婦は礼儀正しく、全く普通。
 しかし、あゆみは気味悪さをどうしても拭えず、胸騒ぎを抑えることができない。
 そんな時、あゆみは女将が口からヤドカリを出して、食べ物を貪っているところを目撃する…」

・「うるしぬりの女」(「ちゃおデラックスホラー2012年11月号増刊」掲載)
 若干、アレンジされてますが、小泉八雲「破約」のコミカライズです。ラストはよりバッド・エンドに変更されております。

 ちゃおホラーの異才、牧原若菜先生の単行本(アンソロジーは除く)未収録の作品をまとめたものです。
 怪奇マンガのデビュー作から2015年の作品まで収録されており、定番の怪談からゲテモノ・ホラーまで内容は多彩です。
 個人的には、怪奇マンガのデビュー作「宿借りの女」が印象的でした。
 デビュー作からして「ヤドカリ人間」だなんてタダ者ではありませんよ!!
 と、そういう点ばかり目が向いてしまいますが、ここで重要なのは、よく引き合いにだされる(のか?)かがり淳子先生がギャグも意識しているとは対照に、牧原若菜先生はあくまで怪奇マンガに軸足を置いている点でありましょう。
 この怪奇マンガに対するブレない態度が、いまだ牧原先生が現役の怪奇漫画家として活躍している要因だと私は考えております。

2018年7月28日・8月4・5日 ページ作成・執筆
2020年10月25日 加筆訂正

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