藤子・F・不二雄「藤子不二雄少年SF短編集B 宇宙船製造法」
(1985年7月25日初版第1刷・1991年1月30日第11刷発行)

 収録作品

・「宇宙からのおとし玉」(1983年「別冊コロコロコミック」第11号掲載)
「男子中学生の平川は、周囲の変化や、先行き不透明なことから正月早々、漠然とした不安にとらわれる。
 ガールフレンドの家を訪ねるも、相手にされず、しょんぼり帰宅途中、公園に光る球が落下するのを目にする。
 平川はその「おとし玉」を家に持ち帰り、タマゴンと名付ける。
 以来、彼の望みが叶ったり、同じラジコンの趣味を持つ老人と知り合ったりと、不思議なことが起きる。
 実は、このタマゴンの正体は、宇宙遊泳中に地球の重力圏に引き寄せられた宇宙人であった…」

・「アン子 大いに怒る」(「赤毛のアン子」改題/1974年「週刊少女コミック」50号掲載)
「中学生のアン子は、童画描きの父親と二人暮らし。
 頼りにならない父親に代わって、万事取り仕切ってはいるが、どこかぬけてる所もあり。
 ある日、父親は、友人の宇祖田が持ってきた、紅茶への投資話に心動かされる。
 しかし、詐欺であったことがわかった時、アン子の隠れた能力が発揮される…」

・「絶滅の島」(1980年「スターログ」8月号掲載)
「南の島で暮らす27人の人々。
 彼らは、地球で生き残った、最後の人類であった。
 一昨年、突如、現れたUFOの大群は人類を一方的に殺戮し、「離島ツアー」に来ていた人々のみが助かったのである。
 だが、今、この離島にも宇宙人の脅威が迫る。
 シンイチ少年は、生き残った中年男性と共に、とらわれたカオリを救出しようとするのだが…」

・「山寺グラフィティ」(1979年「週刊少年サンデー3月25日増刊号」掲載)
「駆け出しのイラストレーター、加藤広康。
 彼の前に、幼馴染の木地かおるの面影を持つ女性が現れるようになる。
 木地かおると彼は恋仲であったが、彼女は高校卒業の春、亡くなっていた。
 いつしか、その女性は彼のアパートを毎日訪れるようになり、夕方になると、何処と知れず、帰っていく。
 また、彼女は彼が問いかけても、何も言わず、ただ彼のことを見つめて、微笑んでいるばかり。
 それでも、彼女と共にいると心地よく、広康は、木地かおりが生きていて、そのまま成長したように錯覚するようになる。
 だが、彼女が他人には見えていないことがわかり、彼は故郷の山形市に急いで帰る。
 かおるとの思い出のある山寺で、彼が目にしたものとは…?」

・「宇宙船製造法」(1979年「週刊少年サンデー8号」掲載)
「ワープ中の事故で遭難した宇宙船。
 幸い、地球型の星に着陸したものの、宇宙船を直す方法がなく、また、かなり辺境の星ということもあり、帰還は絶望的。
 乗員の一人、志貴杜(しきもり)は、自らリーダー格となり、この星で生き延びるために、徹底的な統制を行う。
 一方、小山という青年は、宇宙船を修理する方法をずっと考え続ける。
 エンジンは動くので、あとは宇宙船の裂け目をどうにか塞げばいいのだが…」

 目玉は、藤子・F・不二雄版「人類皆殺し」な「絶滅の島」でしょう。
 F先生から想像もつかないような残酷描写の嵐で、目が点になります。
 また、人類が絶滅に追いやられた理由も皮肉で、とても少年向きの作品ではないなあ…。
 あと、「アン子 大いに怒る」は「エスパー魔美」の原型でありましょうか?
 「赤毛のアン子」が改題になったのは、「赤毛のアン」ファンから抗議でも受けたんですかね?
 ちなみに、個人的なベストは「山寺グラフィティ」。
 静謐感溢れる、幻想的な作品で、淡いハッピー・エンドが、心にじんわりとしみいります。(でも、読者の少年達には地味だったかも…。)

2019年9月6日 ページ作成・執筆

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