ささやななえ「たたらの辻に…」(1988年1月20日初版第1刷発行)

 収録作品

・「たたらの辻に…」(1987年「プチフラワー」6月号〜8月号掲載)
「近藤道子の一家は、高齢の祖母の遺した家に越してくる。
 近藤家は両親と、10か月離れているだけの姉弟、道子と清美(高校三年生と二年生)の四人家族。
 だが、祖母の葬式の際、道子は、弟の清美とは血がつながってなく、彼がよそからもらわれてきたことを知ってしまう。
 道子は今まで一度もこの家に入ることを禁じられており、一方の清美は幼い頃から祖母にかまわれていた。
 そのため、二人が血のつながらない姉弟であること以外にも、道子の知らないことをいろいろと知っている様子であった。
 清美との関係がギクシャクして、落ち着かない道子であったが、この家に移って以来、次々と怪奇現象に襲われる。
 清美によると、この地には「たたらの神」が封印されており、彼女を「たたらの神さまが欲しがっている」らしい。
 二人は家から逃げようとするも、たたらの神の結界に捕らえられてしまう。
 清美は、代々伝わる、「ふつのみまた」の剣を手に、彼女の危機を救おうとするのだが…。
 昔、たたら場だったという、この地に潜むものとは…?
 そして、清美とは何者なのだろうか…?」

・「空(うつ)ほ石の…」(1986年「プチフラワー」9月号〜10月号掲載)
「マンモス団地に越してきた仲田一家。
 彼らの部屋は「505号室」であったが、別の階の5号室では災難が立て続けに起こっていた。
 仲田家でも、母親の様子がおかしくなり、意識不明となって病院に運ばれてしまう。
 父親は出張で、娘の菜穂子は一人で過ごさねばならなくなるが、どうも押し入れが気になって仕方がない。
 そんな彼女を、クラス委員で、神社と寺の家系を持つ森尾一彦は気にかけるのだが…。
 押し入れに潜む少女の正体は…?」

 「たたらの辻に…」は諸星大二郎先生の「妖怪ハンター」の流れを引く作品ではないでしょうか?
 ただ、主人公を、稗田礼二郎のようなおっさん(いいのか、そんなこと言って?!)でなく、「互いに想いを寄せる、血のつながっていない姉弟」にしたところが、少女漫画家らしいところ。
 相手への気持に戸惑いながらも、想いを深めていく描写の繊細さも見所ですが、怪奇マンガとしても一級品で、民俗学的知識をしっかり駆使しており、ラストは巨大妖怪との対決もあります。
 「空ほ石の…」は、アンソロジーにも採り上げられたことのある、心霊漫画の逸品です。
 光原伸先生が「心霊漫画は女性漫画家にはかなわない」といった旨を「アウターゾーン」の解説で書いておられましたが、それも納得!
 最近の漫画と較べたら、そこまで派手でないのに、肌に直接、チリチリときます。

 両方、傑作だと思いますので、怪奇マンガの好きな方は読まれて損はないでしょう。
 特に、「たたらの辻に…」は大好きな作品ですので、魅力を存分に伝えたいのですが、それに見合う文章力も思考力もないのが悲しい…。

2019年6月2・3日 ページ作成・執筆

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