御茶漬海苔「TVO@ 砂嵐から」(1989年3月5日初版第1刷発行)

・「CHANNEL-1 砂嵐から」
「どのテレビ局も放送を終了している深夜、ただ一つだけ放送している番組があった。
 その番組は、流血死郎がアナウンサーのパネルゲームショーで、挑戦者はレオタード姿の高校一年生の少女。
 彼女の一家はサラ金の借金のため、このままでは一家心中するしかなく、賞金の一億円を賭けて、ゲームに挑戦する。
 ルールは簡単、@からHの数字が書かれた、九枚のパネルを選ぶだけ。
 その中の一枚に当たりがあるが、もしも、外れたら、パネルに書かれた身体の個所を、アシスタントの電ノコシスターズによって切り取られてしまう。
 少女の運命は…?」

・「CHANNEL-2 スクール【前編】」
「野口勇一の娘、優子が中学校に入学する。
 学校は小山田大付属女子中学校で、両親は小山田大の出身であった。
 のんびり屋の優子は登校初日から遅刻してしまうが、学校はやけに静かで、廊下には女生徒が何人か暗い顔で立たされていた。
 教室に入ると、担任の男教師は彼女の遅刻を責め、顔面を拳でぐりぐりした後、校則違反だと髪をざんぎりに切ってしまう。
 帰宅後、優子は両親と顔も合わさずに部屋に閉じこもる。
 様子がおかしいので、父親が担任に電話しようとした時、恐ろしい事実に気づく。
 担任は大学時代の彼に暴力をふるっていた、先輩の大野竜蔵であった…」

・「CHANNEL-3 スクール【後編】」
「優子はひどい目にあいながらも、学校に行く。
 大野に殴られそうになった時、彼女はハサミを彼の右手首に突き刺す。
 その夜、優子の父親のもとに大野から電話がかかってくる。
 学校に行くと、生徒指導室で、大野が優子を踏みつけにしたまま、椅子にふんぞり返って座っていた。
 優子の父親は大野に命じられ、土下座させられる。
 父親は帰ってもいいと言うが、優子は二度とこんなことがないよう教育すると返してもらえない。
 父親は大野と戦う決心をするも、優子は大野のマンションの部屋に連れ込まれていた…」

・「CHANNEL-4 呪文」
「夏休み。
 少年は「ウォーターマン」のゲームに熱中していた。
 だが、どうしても「水槽の罠」がクリアできず、ゲームオーバーを繰り返す。
 母親の留守の間、彼は部屋にゲームの水槽と同じものを作る。
 彼は妹の博美に、夏休みの宿題を全部やることと引き換えに、実験台になってもらう。
 妹の手足をテープで縛り、身体を鎖で水槽の底に固定した後、水槽に水を入れるのだが…」

・「CHANNEL-5 サバイバル・ゲーム」
「昼間の公園。
 二人の少年がエアガンでサバイバル・ゲームをする。
 流れ弾が、警邏中の警官に当たり、警官は二人を交番にしょっぴく。
 取調室で、彼は二人を取り調べるが、片方の少年が生意気なことに腹を立てる。
 彼はその少年に本物の拳銃を見せ、弾を一発だけ込め、ロシアン・ルーレットの要領で少年に向ける。
 しかし、少年は死ぬのなんか怖くないと涼しい顔。
 警官は少年にどうにかして泣き面をかかせようとやけになり…」

・「CHANNEL-6 電話」
「東の町小学校6年のある少年はゼルダ教に入っていた。
 教祖のゼルダ様は電話でどんな悩みでも聞いて、解決してくれる。
 ゼルダ様のお陰で、親友と仲直りもでき、彼の心はゼルダ様への感謝でいっぱいであった。
 だが、その親友が、ゼルダ教を密告したとして死刑されることになる。
 彼は親友に逃げるよう電話するのだが…」

・「CHANNEL-7 清潔」
「久美子は度を越したきれい好き。
 目じりのあたりに小さなニキビが一つできただけで学校を休もうとするも、当然、母親に叱られる。
 更に、朝の満員電車で汚い中年男を目にして、気分は最低。
 そこで、彼女は男に痴漢されたと嘘をつく。
 男は「なんで嘘をつくんだ」と呟き、彼女の右手を握る。
 男は駅員に取り押さえられ、久美子はいい気味とほくそ笑む。
 結局、学校を休み、彼女は帰宅するが、何か臭う。
 その臭いは彼女の部屋から漂ってくるのだが…」

・「CHANNEL-8 臓器」
「佐藤という青年が総合病院を訪れる。
 単なる風邪のつもりだったが、血液や尿を採取され、入院することになる。
 思いもよらず、重い病気かと彼は戸惑うが、医者は、手術をすれば、すぐに良くなると言う。
 その夜の八時から手術が始まるが、その目的とは…?」

・「CHANNEL-9 コンビニエンス・チルドレン」
「夜のコンビニで、高文という少年がゲーム雑誌を立ち読みしていると、見知らぬ少年が話しかけてくる。
 少年の名は高崎杉夫で、家で話題のゲームをさせる代わりに「友達」になろうと言う。
 杉夫のマンションに行くと、両親は出張でいないという話で、妹のすみれだけがいた。
 高文は杉夫とゲームをして楽しむ。
 また、杉夫はすみれを女中のように使い、高文は性欲の処理までさせてもらう。
 しかし、家に帰ると、塾をさぼったことを妹にチクられ、父親から体罰を受ける。
 翌日の夜、彼はまた杉夫のマンションを訪ねる。
 そこで、彼は自由になる方法を知る…」

・「CHANNEL-10 ジジイじゃない」(1988年「ヤングサンデー」No.23)
「ある家族(両親と一人娘)に押し付けられたボケ老人。
 何度も食事を催促するだけでなく、あちこち徘徊し、母親は完全にヒステリー。
 しかも、娘の部屋に排泄したことから、娘も完全に敵に回る。
 ある休日、娘がデートに出かけようとすると、祖父が一緒に散歩しようと言う。
 老人はしつこくついてきて、娘はまこうと、廃墟の工場に入るのだが…」

・「CHANNEL-11 毎日が毎日」(1988年「ヤングサンデー」No.24)
「私立光ヶ丘小学校六年生、山本優一は完璧な優等生。
 スケジュール帳通りに行動し、他人を見下しながらも、決して顔には出さない。
 ただ、彼はたまに「息抜き」をせずにはいられなかった。
 彼の世界は完璧であったが、彼が演出する学芸会の劇の練習が思い通りに行かず、彼のストレスは雪だるま式に大きくなる。
 彼が限界を迎える時…」

 御茶漬海苔先生と言えば、「惨劇館」が代表作ですが、裏の代表作と言うべきものが「TVO」です。
 「TVO」の最大の魅力は「殺伐さ」。
 「惨劇館」のようにド派手な残酷描写は陰を潜め、サディスティックかつヒステリック、そして、陰鬱極まりないストーリーを、乾ききった絵柄で淡々と描写しております。
 ここには、物質的繁栄を極めた日本の闇の部分が剥き出しのまま、蠢いております。
 「宮崎勤事件」が起きる前頃に描かれた作品で、もしかしたら、御茶漬海苔先生は時代の空気を敏感に感じ取っていたのかもしれません。
 作品を覆う「虚無感」、そして、「救いのなさ」は30年経った現在でも「リアル」です。

 「恐怖テレビ(TVO)@A」(ぶんか社)にて再録されております。

2022年8月6日 ページ作成・執筆
2023年10月7・9日 加筆訂正

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