伊藤潤二
「うずまき@」(1998年10月1日初版第一刷・1999年8月5日第三刷発行/第1話〜第6話)
「うずまきA」(1999年4月1日初版第一刷発行/第7話〜第12話)
「うずまきB」(1999年11月1日初版第一刷発行/第13話〜最終話)


・「第1話 うずまきマニア:その一」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第7号)
「海に面し、背後に山を抱く小さな町、黒渦町。
 五島桐絵とその家族(陶芸家の父、母、弟の満男)は町の中心部に住み、彼女は黒渦高校に通う。
 彼女には斎藤秀一というボーイフレンドがおり、彼は隣町の高校へと通っていたが、最近、元気がなかった。
 彼はこの町を嫌悪し、「うずまき」に汚染されていると考えていた。
 また、彼の父親もおかしくなっていた。
 彼の父親は「うずまき」に凝り、書斎の中はうずまき紋様のものに溢れ、会社にも行かず、一日中、うずまきを眺めているらしい。
 ある日、妻は彼のうずまきコレクションを無断で処分してしまうのだが…」

・「第2話 うずまきマニア:その二」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第8号)
「秀一の父親の死。
 その葬儀の際の出来事で、彼の母親はノイローゼになる。
 彼女は「うずまき」恐怖症になり、巻髪やつむじ、指紋までも恐れ、自傷行為に及ぶ。
 どうやら、うずまき状のものが、夫がうずまきになるよう誘っているふうに見えるという。
 だが、秀一は人体の中にうずまき状のものがあることに気付き、それを母親に隠そうとするのだが…」

・「第3話 傷痕」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第12号)
「黒渦高校で桐絵が最初に親しくなったのは黒谷あざみという美しい少女であった。
 彼女は異常なほど、もてたが、それは額の小さな三日月状の傷痕によるものらしい。
 その傷は、彼女が小さい頃、好きな男の子の気を惹くために、綱渡りの真似をして落ちた時にできたものであった。
 このケガをきっかけに彼女は好きな男児と仲良くなり、彼女はこの傷痕に「好きな男の子を引きつけるパワー」があると考える。
 ある日、桐絵が秀一の家を訪ねようとすると、興味を持ったあざみも一緒についてくる。
 秀一は精神的につらいことが立て続けに起こり、高校を長い間、休み、家に閉じこもっていた。
 桐絵はあざみを彼に紹介するが、彼は顔色を変え、あざみに出ていくよう怒鳴りつける。
 その夜、桐絵が秀一に電話で理由を聞くと、彼はあざみに「禍々しいもの」を感じると説明する。
 以来、あざみは秀一に夢中になり、ストーカーのようになる。
 同時に、彼女の傷痕にも変化が生じていた…」

・「第4話 窯変」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第17号)
「桐絵の父親は陶芸家であったが、今年の展示即売会に出品されたものは全て、異様な形をしていた。
 焼く前は普通の皿や壺だったのに、「新しい土」が窯の温度に合わなかったらしく、窯から出した時はこのようにグニャグニャになっていたと言う。
 また、珍しいことに、その壺や皿は至るところに細かいうずまきが浮かび上がっていた。
 実用品としては失敗であったが、父親は芸術としては優れていると満足する。
 その晩、家族でその壺や皿を見ていると、桐絵や満男は表面に人の顔が浮かんでいることに気付く。
 その顔は最近、この町で亡くなり、火葬された人の顔であった。
 「新しい土」の秘密とは…?
 父親は「窯焚き」の間は絶対人を近づけないが、その理由とは…?」

・「第5話 ねじれた人々」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第21・22合併号)
「貧乏人が住むとされる長屋。
 その両端に住む西木一家と遠藤一家は犬猿の仲。
 しかし、その子供である西木和典と遠藤依子は愛し合っていた。
 お互いに家族を説得しようとするも、聞き耳を持たず、二人は駆け落ちを考える。
 桐絵と秀一は二人の駆け落ちに協力するが、万策尽きた時、和典と依子は…」

・「第6話 巻髪」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第26号)
「ある日、桐絵の髪が何故か巻き髪になる。
 三つ編みにしてもほどけてしまい、美容院で切ろうとしたところ、髪が美容師を襲う。
 以来、彼女が髪の毛を切ろうとすると、髪は彼女の首を絞めあげる。
 彼女が抵抗をやめると、髪の毛は誇らしげに渦を巻き、周囲の人にその姿を誇示し、幻惑する。
 桐絵は髪の毛に従わざるを得ず、徐々に気力を奪われていく。
 そんな時、友人の関野が桐絵の前に現れるが…」

・「第7話 びっくり箱」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第30号)
「黒渦高校1年B組の山口満は人を驚かすことが趣味で、「びっくり箱」と綽名されていた。
 そんな彼が桐絵に惚れて、彼女に猛烈にアタックする。
 と言っても、驚かすことで彼女に振り向いてもらおうという方法が最初から間違っていて、彼の想いは伝わらないばかりか、全くの逆効果。
 ある日、桐絵は彼からの小包を受け取る。
 彼女は小包を開けないまま、山口満に返すと、彼は自分の気持ちをわかってもらおうと車の前に立ちはだかり、前輪に巻き込まれて死んでしまう。
 葬式の夜、桐絵が彼からの小包を開けると、中身はピエロのびっくり箱であった。
 彼女が秀一と電話で話している時、そのピエロが墓場から山口満が蘇ってくると告げる。
 その夜、桐絵と秀一は山口満が埋葬されている墓場を訪れる。
 秀一は墓を掘り返して、蘇らないよう手を打とうするのだが…」

・「第8話 ヒトマイマイ」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第35号)
「片山という男子生徒は雨の日にしか登校してこなかった。
 しかも、教室に入る時はびしょ濡れで、動きは実にトロい。
 いじめっ子の津山は彼の服をひん剥いて素っ裸にするが、片山の背中には渦巻のアザがあった。
 翌日、片山が教室に来ると、背中の腫れ物が盛り上がっている。
 日を追うごとに腫れ物は大きくなっていき、五日目、彼は巨大なカタツムリと化してしまう。
 仕方なく学校の飼育小屋で飼うことになるのだが…」

・「第9話 黒い灯台」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第39号)
「黒渦町の岬にある黒い灯台は使われてないはずなのに、ある夜から強烈な螺旋状の光を放つようになる。
 その灯台の怪しい光が目に焼き付き、平衡感覚を失う人が続出。
 更に、灯台の内部を調べに行った人は誰一人として帰って来ない。
 ある日、満男を含む子供たちが灯台の中に入ってしまう。
 桐絵は子供たちを追い、螺旋階段を登っていくが、その展望台で目にしたものとは…?」

・「第10話 蚊柱」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第43号)
「夏休みなのに、桐絵は入院する破目になる。
 ある日、彼女が病院の敷地内を散歩していると、女性の変死体を発見する。
 その死体は身体中に穴が開き、身体からは血が失われていた。
 しかも、病院には妊婦の患者が大勢運び込まれる。
 彼女たちは大量の蚊に刺され、気分が悪くなったらしく、患者の中には桐絵のいとこの中山恵子もいた。
 翌日、病院で三人の患者が変死する。
 死体の状態は病院の敷地で見つかった変死体と同じであった。
 吸血鬼の正体とは…?」

・「第11話 臍帯」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第48号)
「入院していた妊婦たちが一度に臨月に入り、次々と赤ん坊が産まれる。
 桐絵は退院する際、恵子に挨拶に行くが、赤ん坊のお腹は異様に膨れていた。
 赤ん坊の奇怪な鳴き声に眩暈を覚え、桐絵は階段から転落し、もう一週間入院することとなる。
 その日から病院食にキノコが使われることになるが、血生臭くて食べれたものでない。
 しかし、桐絵以外の患者は皆、そのキノコにはまっていた。
 ある時、桐絵が新生児室の前を通りかかると、中から話し声が聞こえる。
 こっそり中を覗くと、赤ん坊たちが会話をしているが、その内容とは…?
 そして、キノコの正体は…?」

・「第12話 台風1号」(「週刊ビッグ スピリッツ」1998年第52号)
「夏、黒渦町に最初の台風がやって来る。
 今回の台風は台風の目の直径が異様に小さいのが特徴であった。
 台風の最中、桐絵は秀一の家に弁当を運ぼうとする。
 だが、傘も弁当も強風に飛ばされてしまい、空を見上げると、頭上に台風の目が合った。
 その夜、強風にまぎれて、彼女の名を呼ぶ声が聞こえる。
 翌朝、台風が過ぎたと思いきや、台風の目は彼女の家の上で静止していた。
 それでも、彼女は秀一の家へ弁当を届けようと外出するのだが…」

・「第13話 鬼のいる長屋」(「週刊ビッグ スピリッツ」1999年第8号)
「台風1号によりトンボ池周辺の家屋は全壊、桐絵の一家も被災する。
 役所から空家を紹介されるも、それは以前、廃屋だった長屋であった。
 しかも、三丁目のこの長屋は毎夜、鬼が出没すると噂されていたが、背に腹は代えられず、一家は長屋の真ん中に移り住む。
 長屋の一方の端には若林という青年が住み、もう片方には老婆と息子がずっと前から住みついていた。
 この老婆と息子は他人と一切かかわろうとせず、息子は重い病気のようで、夜ごと、呻き声をあげていた。
 ある日、息子が亡くなり、老婆も息子と同じ皮膚病にかかっていることが判明。
 また、桐絵の一家も奇妙な魚の目に悩まされていた。
 そのうちに、これは魚の目でなく、老婆と同じ、原因不明の皮膚病であることがわかる。
 皮膚病は身体中のあちこちに広がるが、再び台風が襲ってきて、病院にも行けず…」

・「第14号 蝶」(「週刊ビッグ スピリッツ」1999年第12号)
「台風が立て続けに黒渦町に襲来し、以来、音信不通となる。
 東洋テレビの取材班が車で黒渦町に向かうものの、つむじ風に巻き込まれ、車が横転。
 リポーターの丸山千恵だけが無事で、彼女は町に助けを求めに行く。
 黒渦町では建物が片っ端から倒壊し、あちこちに死体が転がっていた。
 先に進むと、大きな池の前に、子供が三人、猿ぐつわをされ、柱に縛り付けられている。
 彼女は子供たちを助けるも、子供たちは息を吐いて、竜巻を起こし、家屋を破壊する。
 千恵も彼らに襲われるも、叫び声によって撃退。
 彼女が呆気に取られていると、桐絵と満男が話しかけてくる。
 黒渦町で起きていることとは…?」

・「第15話 混沌」(「週刊ビッグ スピリッツ」1999年第17号)
「黒渦町からの脱出は不可能であった。
 更に、竜巻を操り、破壊活動を行う蝶(バタフライ)族が横行する。
 唯一、安全なのは昔からある長屋だが、人がすし詰めになって、一触触発の状態。
 ある日、桐絵の一家、秀一、丸山千恵は長屋から追い出される。
 別の場所を探していた時、いい匂いが漂ってくる。
 それは蝶族の連中が囲んでいる焚火からだが、彼らが食べるものとは…?」

・「第16話 続・混沌」(「週刊ビッグ スピリッツ」1999年第21・22合併号)
「桐絵の一家は倒れた家の下で暮らす。
 父親は竜巻に飛ばされ、行方不明になり、母親も足を怪我をしたため、食料探しは桐絵と満男の仕事となる。
 一方、町には人がどんどん入ってくるため、ますます混乱を来す。
 うずまきの呪いか、カタツムリ化する人が増え、長屋に避難しようにも、長屋の中の人々は異形と化していた。
 生き延びるためには仕方なく…」

・「第17話 脱出」(「週刊ビッグ スピリッツ」1999年第26号)
「桐絵は黒渦町からの脱出を決意。
 満男・秀一・千恵と共に山越えをしようとする。
 このまま、山道を行けば、車道に出るはずだが、いつまで経っても着く気配がない。
 しかも、桐絵たちの後を追ってきた男たちと鉢合わせをする。
 彼らは山中を延々とさまようも、同じ所をぐるぐる回っているようであった。
 空腹を覚えた時、男たちの仲間の一人がカタツムリ化する。
 その間に、桐絵たちは竹本たちを別れて、進むのだが…」

・「第18話 迷路」(「週刊ビッグ スピリッツ」1999年第30号)
「桐絵たちは黒渦町へ戻るも、町の風景は一変していた。
 町を離れた時は飛び飛びにあった長屋がいつの間にか増築され、巨大な渦を巻いていたのである。
 桐絵は両親を捜すために町に入ることを決め、秀一と千恵も付いて来る。
 入り口を見つけ、進むと、谷崎というボランティア男性と再会する。
 彼の話によると、桐絵の両親は渦の中心にあるトンボ池で陶芸をしているらしい。
 桐絵はトンボ池を目指すが、中は迷路のように入り組み…」

・「最終話 遺跡」(「週刊ビッグ スピリッツ」1999年第39号)
「人の気配のなくなった黒渦町。
 桐絵と秀一がトンボ池にたどり着くと、水の引いた後に、太古の遺跡が出現していた。
 どこまでも続くような螺旋階段を降り、地の底で彼らが目にしたものとは…?」

 伊藤潤二先生の絶頂期の名作&代表作というだけでなく、ジャパニーズ・ホラー漫画の到達したマイルストーンの一つとも言うべき作品でしょう。
 「うずまき」にテーマを絞り、様々なアイデアを駆使して、奇想溢れるエピソードを積み上げていき、B巻に入ってからは、「うずまき」に呪われた町でのサバイバル・ホラーにシフト。
 このB巻からの展開はまさしく人跡未踏な内容で、当時、私は愛蔵版を読んで心を奪われたことを今でも鮮やかに思い出すことができます。
 そして、内容だけでなく、映像化は無理ではないかと思わせるような圧倒的な筆力…。(「うずまき」は映画化されておりますが未見)
 早20年以上前の作品にはなりますが、いまだに国内外の作家に影響を与え続けていております。
 伊藤潤二先生から影響を受けたアーティストの方々が更に発展させた作品をこれから生み出していくのかと思うと、心からワクワクもし、また、伊藤潤二先生のいるこの世界に生まれ合わせたことを感謝せずにはいられません。
 ちなみに、各巻の巻末には「あとがき」漫画(2p)があり、伊藤潤二先生の(脱力的)ギャグ・センスをうかがい知ることができます。

2024年1月10・13〜15・17・18日 ページ作成・執筆

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