姫川きらら・他「死神はささやく」(2010年12月4日初版第1刷発行)

 収録作品

・姫川きらら「死神はささやく」(「ちゃおデラックスホラー」2009年7月号増刊)
「佐武凛音(りんね)はどんクサい少女。
 一方、弟の刀哉はズバ抜けた優等生であった。
 だが、本当の性格は極悪で、要領良く振る舞って、皆から好かれていた。
 絶えず弟と比較され、家にも学校にも居場所がなく、凛音は刀哉に憎しみを募らせていく。
 ある日、ペットの熱帯魚を刀哉に殺され、絶望していた時、「死神」が現れ、彼女の願いを叶えてくれるという。
 死神にとり憑かれた刀哉は全治六か月の大けがを負い、荒んでいく。
 一方、凛音は成績がぐんぐん上がり始め、人気者となる。
 刀哉と彼女の立場は逆転し、願いは叶ったように見えたのだが…」

・坂元勲「殺人パズル」(「ちゃおデラックスホラー」2010年7月号増刊)
「夏休み。
 アヤカは、入院中の祖母を見舞った時、同室のユリという少女を紹介される。
 彼女は病弱で、いつも難しそうな本ばかり読んでいた。
 それが気にかかり、アヤカは彼女にクロスワードパズルの雑誌をプレゼントする。
 祖母の退院の日、アヤカは、ユリが前日の晩に亡くなったことを知らされる。
 そして、ユリはアヤカへのお礼として、クロスワードパズルを手書きにしたノートを作っていた。
 アヤカはノートのことをすっかり忘れていたが、二学期のある日、彼女の部屋で友人のマイがそのノートを目にする。
 マイはノートを持って帰って以来、パズルに夢中になり、テンションMAX。  彼女によると、あれほど、面白いパズルはないらしい。
 だが、マイは自宅の火事で焼死し、パズルに取り組んだサチもマイと同じような状態になる。
 アヤカはこうなった原因を突き止めようとパズルを解いてみるのだが…。
 クロスワードパズルに秘められたメッセージとは…?」

・八神千歳「誰にも渡さない」(「ちゃおデラックスホラー」2010年7月号増刊)
「葵は、憧れのヒロに告白して、恋人同士になる。
 ラブラブで浮かれていると、彼女はある事実を知らされる。
 ヒロには、海外留学している倉橋美奈という「本当の彼女」がいて、葵は彼女の身代わりでしかないという。
 ヒロの部屋には、美奈にそっくりな人形が飾ってあり、伏せた写真立てには、ヒロと美奈のツーショット写真が収められていた。
 葵が、美奈の人形を見つめていると、人形の眼が動き、部屋から出て行くよう告げる。
 嫉妬心に駆られた葵は…」

・のせじゅんこ「ゆびきりげんまん」(「ちゃおデラックスホラー」2010年7月号増刊)
「北沢美妃と(姓は不明)桜は約束する時に「ゆびきりげんまん」をしていた。
 ある時、美妃は、桜がバスケ部の杉内先輩のことが好きと教えられ、応援すると約束する。
 でも、本当は、美妃も杉本先輩が好きであった。
 その翌日、桜は交通事故で意識不明となる。
 桜を見舞った際に、美妃は、杉内先輩と出会い、これをきっかけに、二人の仲は深まっていく。
 その一方で、美妃は、針の絡むトラブルに見舞われるようになり…」

・溝口涼子「悪夢の一週間」(描き下ろし)
「ある夏の日、赤ちゃんの「ありす」の口に、一匹の蝉がとび込んできて、呑み込まれる。
 一年後のある夜、ありすは一人で森に行き、地中へ潜り、消息を絶つ。
 13年後、美しい少女に脱皮した、ありすは、隆明というギタリストに接近するのだが…」

・能登山けいこ「クリスマスの来訪者」(描き下ろし)
「琴乃は、母との二人暮らし。
 母が仕事で帰りが遅くなるのは寂しいけど、その隙間を辰哉が埋めてくれていた。
 クリスマスの夕方、買い物に出かけた彼女は、財布を忘れたことに気付き、マンションへと戻る。
 だが、誰も来るはずがないのに、来訪者がある。
 彼女が居留守を使うと、その何者かは鍵を開けて入ってくる。
 近所で強盗殺人があり、彼女は慌てて押入れに隠れるのだが…」

・坂元勲「幽霊マンション」(描き下ろし)
「雨の日。
 富田ナナは、病気で長期欠席をしている稲葉へプリントを渡しに、彼女のマンションを訪れる。
 マンションの中は全く人気がなく、エレベーターもちっとも来ない。
 階段で六階まで上がり、ドアのポストにプリントを入れた後、ちょうとエレベーターがやって来る。
 だが、エレベーターの中は、ずぶ濡れな人でいっぱい。
 しかも、六階が最上階なのに、誰も降りようとはしない。
 異様なものを感じ、ナナは階段を降りて、ここから立ち去ろうとするが…」

 単行本のベストは、坂元勲先生「殺人パズル」。
 奇想をスマートに表現した、上手い作品です。
 他の作品も(全てとは言えないけど…)出来は標準に達していると思いますが、溝口涼子先生「悪夢の一週間」はいろいろとアレな出来で、逆に衝撃的。
 「セミ・ホラー」の珍品です。

2021年9月4日 ページ作成・執筆

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