篠原千絵「篠原千絵傑作集C 3人目が消えた」(1992年4月20日初版第1刷発行)

 収録作品

・「3人目が消えた」(「週刊少女コミック」1991年18号・19号)
「夏休みで生徒の大半が帰省した白鳳学院高校の女子寮。
 夜、1年の御園生ちひろと野崎春香が宮本万里先輩の部屋を訪れると、吉村陽子先輩が毒殺されていた。
 二人はすぐに逃げ出し、寮母先生に報告するも、全く信じてもらえない。
 3年の宮本万里はこの学院創立以来の優等生であった。
 とりあえず、寮母先生に宮本万里の部屋まで来てもらうが、死体は隠され、万里の落ち着き払った態度に寮母先生はあっさり騙されてしまう。
 翌日、野崎春香は帰省し、従兄の薫が女子寮に車でやって来る。
 ちひろは亡くなった両親の代わりにおじ夫婦に育てられ、兄同然の薫に想いを寄せていたが、彼の恋人は万里であった。
 彼女は薫に殺人のことを話すも、当然笑い飛ばされるが、晩方、彼から電話があり、おじの家に戻るから、一緒に話をしようと誘われる。
 ゆっくり相談できると思い、ちひろは家に帰るも、薫はデートしているとかで家に帰っていなかった。
 胸騒ぎを感じ、ちひろは学院に戻り、こっそり宮本万里の部屋を調べると、死体はどこにもない。
 そこに万里と薫がデートから帰ってくる。
 薫はデートの際に死体を車のトランクに入れ、機会を見て始末したのであった。
 ちひろは万里を責めるも、薫も死体遺棄の共犯になると逆に脅される。
 薫のことがあるため、ちひろは万里のことが許せず、警察には言えなくても、薫には殺人のことを知ってもらおうと決意。
 翌日、彼女は野崎春香に一緒に薫と会ってもらおうと電話をする。
 すると、春香は吉村陽子が殺された理由がわかったと話す。
 吉村陽子は万里を強請って大学の推薦を辞退さえようとしていたのであった。
 だが、何で強請っていたのかまで春香は話さず、今晩12時に聖堂に万里を呼び出しているので、ちひろにも来るよう誘って電話を切る。
 その夜、ちひろが聖堂で目にしたものとは…?
 どうやらこの殺人事件には過去の11人毒殺事件が関係しているようなのだが…?」

・「凍った夏の日」(「週刊少女コミック」1988年17号)
「夏休み。
 野崎杳子は母親の留守の間、一人で家の留守番をする。(杳子の家は母子家庭)
 彼女が洗濯ものを家に運び込んだ時、若い男に背後から口を押えられ、家の中に連れ込まれる。
 この男は銃を持っており、母親がこの家を売った時の契約金(四千万円)を渡すよう要求する。
 杳子が金の在処を知らないと答えても、男は納得せず、杳子の母親が帰るまで居座る。
 杳子は夕食時に男を不意打ちし、銃を冷蔵庫の中に入れ、冷蔵庫の鍵を閉める。
 鍵を手の届かない所に捨て、これで一安心かと思いきや、男はナイフを持っており、しかも、用心深くなってますます逃げ出しにくくなる。
 男は杳子と共に過ごすうちに、彼女の複雑な家庭環境を知るのだが…」

・「殺意には蒼いリボンをかけて」(「週刊少女コミック」1987年20号)
「高校生の毬子は長谷という未亡人の葬式で森尾一哉と出会う。
 森尾一哉は長谷の愛人で、K大医学部に通う援助を受けていた。
 葬式の帰り、毬子は葬式会場から逃げてきた一哉と鉢合わせる。
 彼女は彼の車で送ってもらうが、彼が車を離れていた時、ダッシュボードを開けると、中から医学書が溢れ出る。
 急いでもとに戻すものの、液体の入ったガラス瓶を直し損ね、彼女はそれをスカートのポケットに入れる。
 それから数日後、毬子は一哉からデートの誘いを受ける。
 二人は動物園で楽しく過ごすが、一哉の目的はあのガラス瓶を毬子が持っていないかどうか尋ねることであった。
 以来、二人はデートを重ねるが、彼はその都度、ガラス瓶について聞いてくる。
 また、毬子は一哉が女たらしであることだけでなく、警察が長谷は心臓麻痺ではなく、彼に毒殺されたのではないかと調べていることを知る。
 毬子は一哉を愛しているのに、彼の本心がわからず、彼に対する疑念を深めていく。
 ガラス瓶の中身は何なのであろうか…?」

 「凍った夏の日」は強盗男の正体に唖然…。
 あの身分でこういうことはしないと思うんだけどなあ。(あと、鍵付きの冷蔵庫って家庭用であるのか?)
 「殺意には蒼いリボンをかけて」は個人的ベストだけど、ガラス瓶の中身の正体をどう捉えるかで評価が分かれそう。(ヒロインに中身が何なのか最初に言えば済むことでは?)

2024年3月21日 ページ作成・執筆

小学館・リストに戻る

メインページに戻る