岬かいり「笑顔の世界」(2023年1月17日初版第1刷発行)

 収録作品

・「笑顔の世界」
「小学校5年生の飢田リカコは笑顔で毎日を過ごしたい。
 しかし、家では母親が男狂い、学校のクラスではいじめが横行し、心を痛めることばかり。
 ある日、彼女は担任にクラスのいじめについて相談する。
 ところが、担任の男教師は笑顔で「いじめは必要悪」だとあっさり開き直る。
 今の時代、立場の弱い人を虐げることによって皆の不満を解消し、皆が笑顔になれるので、いじめを止める必要はない。
 そして、立場の弱い人のサポートとして…」

・「口裂け女」
「小学生のアヤはマスクが息苦しくて嫌いだが、感染対策のため、外すわけにはいかない。
 ある日の登校途中、マスクをした不審な女性をおり、「私、キレイ…?」と尋ねてくる。
 クラスメートたちによると、その女は都市伝説の「口裂け女」らしい。
 アヤが口裂け女を見たと話すと、クラスメートたちは口裂け女の素顔に興味津々。
 そこへ口裂け女が現われるのだが…」

・「魔法の蛇口」
「食糧難となった日本。
 山村ミナの家は資源豊富な山を持ち、また、両親が狩猟をしているため、自給自足で生活できていた。
 ある日、彼女は学校で「魔法の蛇口」の噂を聞く。
 この蛇口の前で欲しいものの名前を唱えながら蛇口を捻ると、それが無限に出てくるのだと言う。
 学校裏にあると言われ、ミナはその使用禁止の古ぼけた水道の蛇口を試してみるのだが…」

・「蓑虫」
「野村ヒナは家庭でも子供たちの間でも一人ぼっち。
 そんな彼女の心のよりどころはぬいぐるみで、特に、ルルという熊のぬいぐるみが最大の友達であった。
 彼女はルルといつも一緒にいたいと願うも、小学校に通うとなると、そう簡単にもいかない。
 それで悩んでいると、ミノムシの精霊、「ミーちゃん」が彼女の前に現れる。
 ヒナは「好きなものは肌身離さずいたい」と話すミーちゃんに好感を持ち、好きなものを身にまとえる彼女を羨ましいと思う。
 ミーちゃんは「試してみる?」とヒナの身体にルルを強力な糸で巻き付け、これならば、学校の先生でもぬいぐるみを没収はできない。
 これがうまく行き、ヒナはぬいぐるみを次々と身体に巻き付けていくのだが…」

・「前年祭」
「ハロウィーンの夜。
 マイカが魔女の仮装で町に出ると、本格的な仮装が注目を集める。
 彼女の友人、アキは彼女を見習って一年間、用意したものがあると話すのだが…」

・「お借りします」
「あやかの隣の席の烏木エナは人のものを何でも借りようとする強欲な少女。
 あやかはそんなエナが苦手であったが、ある日、エナが交通事故死する。
 その日からあやかはエナの夢を見るようになり、身体を部分ごとに貸してと頼まれる。
 その部分はあやかの意思に反して勝手に動くようになり…」

・「地獄の落とし穴」
「小学六年生の上野恵、小島紗英、佐々木アリサは成績上位三人組。
 彼女たちは有名私立中学を目指し、進学塾に通うライバル同士だが、仲良くやっていた。
 ある夜、塾から帰る途中、三人は地面に急に開いた穴に転落する。
 それは「人食らい虫」の罠で、「人食らい虫」は環境汚染か何かで巨大化したアリジゴクであった。
 紗英が襲われた隙に二人が逃げると、急斜面の先に月明かりが見える。
 二人はその斜面を這って登るのだが…」

・「禁足地」
「小学校6年3組の渡辺ヒカリは夏休みの自由研究でミニトマトを栽培しようとするも、マンションのベランダでは日当たりが悪く、うまくいかない。
 そんな時、男友人が良い場所があると教えてくれる。
 そこは小学校の裏山を登ったところにある空き地であった。
 早速、そこにミニトマトのプランターを据えると、翌日には実が成っている。
 だが、ミニトマトは何かがおかしい。
 この空き地の秘密とは…?」

 ネットで話題となった傑作「笑顔の世界」を収録した、岬かいり先生の初単行本です。
 「ちゃお」ホラーということで絵柄は小中学生の女子向けですが、ストーリーはきっちり練られ、奇想と社会風刺が子供向けマンガとは思えない程、効いております。
 「笑顔の世界」の衝撃的なラストもなかなかですが、個人的には「禁足地」のラストに唸らされました。

2024年3月18日 ページ作成・執筆

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