坂元勲・他「死を呼ぶXXX」(2015年5月5日初版第1刷発行)

 収録作品

・坂元勲「ビデオテープ」(「ベツコミ」2014年8月号別冊ふろく)
「カスミの一家は新居に引っ越しをする。
 荷物の整理をしていると、彼女の荷物に一本のビデオテープが入っていた。
 ラベルはなく、父親のものかと思って聞くが、違うとのこと。
 ビデオデッキがあったので、テープを再生すると、見知らぬ風景が荒い画像で映っていた。
 片付けに忙しく、それきりカスミはテープのことを忘れていたが、後日、録画した番組のチェックをしていると、急にビデオテープが再生。
 画面には風景の後に、男性の後ろ姿が映し出される。
 リモコンを操作しても、ビデオは止まらず、ビデオデッキのコンセントを抜いて、ようやく消える。
 翌日、カスミは、オカルト好きの友人二人を家に招いて、ビデオを観る。
 そこで、映像の男性が何やら呪文らしきものを唱えているのに気づくが、カスミは、二度と再生しないよう友人達を止める。
 彼女の本能が、これ以上観てはいけないと告げていた。
 ある日の帰り道、彼女は、彼女の家の引っ越しをした業者の青年と再会する。
 あのビデオは彼の持ち物だったのだが、その由来とは…?」

・久世みずき「フェアリーメディスン」(「ちゃおデラックスホラー」2010年7月号増刊)
「愛原梢は、入院中の祖母に頼まれ、祖母の家に日記帳を取りに行く。
 祖母は昔からヘンな研究をしており、家の中は奇妙なものでいっぱい。
 ふとしたことから、梢は棚の液体をこぼし、それが右目にかかってしまう。
 それは「妖精の目薬」で、妖精を見ることができるようになる薬であった。
 祖母の容体が急変したと知らせを受け、梢が病院に行くと、祖母の横に、凶悪そうなゴブリンがいた。
 ゴブリンは梢に襲いかかるが、危ないところを、妖精のジェントル・アニーに助けられる。
 彼によると、姿を視られたゴブリンは彼女の目を潰そうとしているらしい。
 一人で夜を過ごさねばならなくなった梢に、彼は付いていてくれるのだが…」

・七瀬れい「良太くんのおるすばん」(「ちゃおデラックスホラー2012年11月号増刊」)
「坂本侑里は両親が共働きのため、家ではいつも一人。
 下校途中、彼は、良太という男の子と知り合う。
 彼も両親が共働きのため、いつも一人でお留守番をしていた。
 自分と同じような境遇の彼に同情し、彼女は毎日のように、彼の家を訪れが、徐々にやつれていく。
 ある日、彼女が良太の家に行こうとすると、クラスメートで霊感があると言われる高良真が彼女を引き留める。
 良太は、以前、留守番中に強盗に殺されたと真は言うのだが…」

・葵みちる「うしろのキリちゃん」(「ちゃおデラックスホラー2014年10月号増刊」)
「憂菜が彼氏と遊園地で撮った写真。
 その中の一枚に、彼女の背後、水玉模様の服の女性らしきものが写っていた。
 それを見て、憂菜は、小学校の時、同じクラスだったキリちゃんという子を思い出す。
 キリちゃんは、暗くて、クラスの嫌われ者であったが、憂菜だけは彼女と仲良くする。
 しかし、友達に何故、仲良くするのかと聞かれ、いつもひとりぼっちだからと答えたことから、キリちゃんは憂菜に反発。
 以来、二人の仲は気まずくなり、別々の中学に行ったことで関係は途絶える。
 しかし、そこでキリちゃんは自殺を図ったと元・同級生から聞かされ、憂菜は罪悪感に苦しむことになる。
 憂菜は度々、キリちゃんを視るようになり、徐々に精神に変調をきたしていくのだが…」

・溝口涼子「こちらにおいでよ」(描きおろし)
「かなんの「心友」は、モデルの梨世。
 だが、住む世界があまりに違うことが、かなんにとって重荷になりつつあった。
 ある日の下校途中、かなんは、公園で玲美という少女と出会う。
 若干、センチメンタルで、若干、天然っぽい玲奈とかなんは友達になり、友人というものについて考えるようになる。
 ある時、玲美は、かなんに心霊スポットの話をする。
 ある林の頂上近くで、夕方の6時6分に自殺した少女がいて、その時間になると「出る」らしい。
 かなんは、梨世も呼び、三人でその噂を確かめに行くのだが…」

・小室栄子「終末バスツアー」(「ちゃおデラックスホラー2014年10月号増刊」)
「日和は気が付くと、ミステリーバスツアーに参加していた。
 彼女の隣の席には、香菜という少女がいて、ツアーで知り合い、仲良くなる。
 だが、ツアーの行く先々で、ツアー客が事故死したり、通り魔に殺害される。
 警察に電話しようとしても常に圏外で、添乗員はツアー客が死んでも顔色一つ変えず、次の場所への移動を促す。
 これがどういうバスツアーなのであろうか…?」

・北村有香「天国の階段」(「ちゃおデラックスホラー2013年3月号増刊」)
「花音(中学一年生)は霊を視ることができる少女。
 彼女を唯一理解してくれるのは、蓮という少年だけであった。
 冬のある日、花音は、萌と名乗る幼女の霊に、兄を元気にしてくれるよう頼まれる。
 萌の兄は、彼女が病死して以来、友達とも話さないし、一度も笑わなかった。
 花音と蓮は、萌の兄を訪ね、萌がここにいると話すのだが…」

・おりとかほり「2Dドリーマー」(「ちゃおデラックスホラー2014年3月20日号増刊」)
「滝沢美里は、二次元の世界にどっぷり浸かったオタク少女。
 最近のお気に入りは「ドキドキメモリアル」の美少年キャラ、仁。
 彼女は現実世界から逃れて、二次元の世界に住みたいと考えていたが、ある時、部屋のパソコンが勝手に起動する。
 ディスプレイに映し出されたのは、巷で噂の「闇の通販」サイトで、自分の願望を叶えるものを売っていると言われていた。
 そのお勧めに「2Dドリーマー」というゲーム機があり、試しに注文すると、本当に届く。
 美里が「2Dドリーマー」に「ドキドキメモリアル」のソフトを差し込んで、スイッチを入れると、彼女はゲームの中の世界にいた。
 ゲームの中で、彼女は憧れの仁と楽しい学園生活を送る。
 セーブすると、元の世界に戻れるが、その際、ゲーム内で上げたステータスは全て、そのまんま。
 美里の現実生活は充実し、ゲームのことを忘れていくのだが…」

 このアンソロジーは粒よりな作品が多いように思います。
 大半を感動系の作品が占め、葵みちる先生「うしろのキリちゃん」、小室栄子先生「終末バスツアー」は個人的にヒットでした。
 かと言って、合間合間にヘビーなホラーもばっちり入っており、溝口涼子先生「こちらにおいでよ」、おりとかほり先生「2Dドリーマー」はかなりのトラウマ度です。

2021年4月25・26日 ページ作成・執筆
2021年5月25日 加筆訂正

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