坂元勲「闇芝居」(2016年2月6日初版第1刷発行)

 午後五時の日暮れ時。
 集まった子供達を前に、仮面をつけた男が「闇芝居」を開演する…。

・「お札女」(原案:熊本浩武/原作:「闇芝居」/描き下ろし)
「新居に引っ越すまでの間、東野カナの一家は古びたアパートに移る。
 部屋には至る所にお札が貼ってあり、更に、向かいのアパートの女がずっとこちらを見つめていて、カナは気持ち悪くて仕方ない。
 ある日、カナが帰宅すると、剥がしたはずのお札がまた貼ってある。
 どうにも気になり、カナがお札を剥がそうとすると、押し入れから向かいのアパートの女が現れ、カナに襲いかかる。
 女が連行された後、カナは家のあちらこちらにお札が幾重にも貼られているのを目にして…」

・「台所」(原案:井口昇/原作:「闇芝居」/描き下ろし)
「女友達のマユのマンションを訪れた拓也。
 マユは彼のために手料理を作ってくれるが、その間、拓也は台所のエアコンの様子がおかしいことに気付く。
 エアコンの中から奇妙な呻き声が聞こえ、中から彼を見つめる視線を振り払うことができない。
 また、流し場からは奇妙な生き物が這い出て来る。
 彼は食事どころではないが、マユは異変にちっとも気が付いていない様子で…」

・「異階」(原案:熊本浩武/原作:「闇芝居」/描き下ろし)
「千夏は、塾帰りに、デパートに立ち寄ってみる。
 中は華やかで、いろいろな素敵なものに溢れているが、彼女の楽しい時間は、母親からの電話で終わりを告げる。
 千夏の母親は厳格で、家族でデパートで買い物なんて今までしたことがなかった。
 暗澹たる気持ちで、千夏がエレベーターに乗るのだが、そのエレベーターの行き先は…」

・「ロッカー」(原案:ブラジリィー・アン・山田/原作:「闇芝居」/描き下ろし)
「ある駅の地下にあるコインロッカーの噂。
 そこに、人形の入っているロッカーがあり、中に写真を入れて祈ると、恋が叶うと言う。
 河野先輩にずっと片想いの三上ナオは、そのロッカーを探しに、駅地下を訪れる。
 ようやく見つけたロッカーには、薄汚く不気味な日本人形が入っていたが、ナオは河野先輩の写真を中に入れて、恋の成就を祈る。
 しかし、この人形のロッカーは…」

・「家訓」(原案:熊本浩武/原作:「闇芝居」/「ちゃおデラックス2016年1月号」掲載)
「ナナと楢橋駆(かける)は付き合って一年。
 一年目の記念日に、駆の祖父が亡くなる。
 ナナは、楢橋家に駆の様子を見に行くが、何故か、楢橋家の人々は葬式の間、笑い続けていた。
 直後、駆の母親も亡くなり、その葬儀の間も楢橋家では笑い声が絶えない。
 葬儀が落ち着いて、駆は学校に戻ってくるが、ナナはあの異様な光景が気になって、駆とは前のように接することができない。
 駆はナナにその理由を明かすのだが…」

・「トモナリクン」(原案:熊本浩武/原作:「闇芝居」/描き下ろし)
「引っ越しして一週間。
 マモルは友達ができず、くさっていた。
 そんな彼に、公園で、三人の子供達が声をかけ、すぐに友達同士になる。
 しかし、三人の他にもう一人、「トモナリ君」という子がいるらしく、その姿は三人にしか見えていないらしい。
 砂場での出来事の後、マモルは三人とは遊ぶことを避けるのだが…」

・「矛盾」(原案:熊本浩武/原作:「闇芝居」/描き下ろし)
「夜中、ユウカのもとにかかって来た電話。
 それは、友人のメグミからのもとで、かなり切迫した声であった。
 メグミとトールは県境の廃病院に肝試しに行き、鍵のかかった部屋に入ったところ、トールに何かがあったらしい。
 だが、電話で話すメグミの様子がおかしくなっていく。
 そんな時、彼女の部屋のドアを激しく叩く音がする。
 ドアの向こうにいるのは、トールであった…」

・「証明写真」
「大学生の徳山は、夜中、ベランダから外を眺めると、証明写真機の中に女性が座っているのを目にする。
 翌朝、学校に出かける時にも、証明写真機の中には同じ女性の下半身があった。
 単なる偶然と思い、履歴書用の写真を撮るために、彼はその証明写真機を利用するのだが…」

 午後五時。
 公園には子供達の姿はなく、ふと立ち寄った女子中学生と闇芝居の男の姿しかない。
 闇芝居の男が彼女が最後に見せたものとは…。

 テレビアニメ「闇芝居」のコミカライズです。
 とは言え、私、「闇芝居」を観た事がありませんので、詳しい話や比較検討はできません。
 それでも、コミカライズとしてはかなりいい出来ではないでしょうか。
 坂本勲先生の作品は、ちゃおホラーの中で、私が知る限り、最も怖いと私は思っております。
 完成度はもちろんのこと、何気なく読んでいると、生理的にゾクッとするコマ(「異階」のエレベーターガールや「ロッカー」の人形、等)があり、背筋にぞわぞわ来ます。
 「闇芝居」に限らず、坂元勲先生の作品は、ちゃおホラーの域に閉じ込めておくには惜しい出来のものばかりで、読んだら喜ぶ人、多いように私は思います。

2019年8月5・6日 ページ作成・執筆

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