美内すずえ「13月の悲劇」(1973年8月20日第1刷・1983年2月15日第18刷発行)

 収録作品

・「13月の悲劇」(1971年「別冊マーガレット」9月・10月号)
「人気スター、ラリー・ベンソンの隠し妻の子、マリー・サザランド。
 母親を亡くし、父親の手で、マリーはイギリスにある聖バラ十字学校へとやられる。
 聖バラ十字学校は全寮制の女学校で、宗教を中心とした、厳格な学園生活が営まれていた。
 入学してすぐに、マリーは、校長のガートレットをはじめ、シスター達も生徒達も全く活気がなく、人間味というものが欠落していることに気付く。
 それもそのはず、聖バラ十字学校の生徒達は、上流階級や資産家の娘達であったが、わけあって、厄介払いされた者ばかりであった。
 更に、厳しい校則にがんじがらめにされ、卒業するまでは外に出ることもままならず、環境は非常に閉塞的。
 だが、それ以上におかしなことをマリーは多々経験する。
 主ルシフェルに祈りを捧げる、水曜日の礼拝と、それに続く、血の洗礼。
 クリスマスを知らないクラスメート達。
 母の形見の十字架を踏みにじるようマリーに強要する校長。
 そして、入った者は無事に出ることのない反省室。
 マリーは学校のことを調べるうちに、この学校が「魔女の学校」であることに気付く。
 親友のデボラの死をきっかけに、マリーは、偶然知り合った男友達のカルロスから借りた8ミリカメラで、学園の真実を世間に知らそうとするのだが…」

・「進め!バディ」(1969年「別冊マーガレット」10月号)
「落馬により失明したアイリーン。
 彼女は他人の手を借りたくないが、一人では何もできず、すねまくり。
 そんな彼女のもとに、盲導犬の話が持ち込まれる。
 「犬に導かれて歩くなんてカッコわるい」(注1)と思いつつも、アイリーンは盲導犬養成所を訪れる。
 そこで、彼女はバディという盲導犬をあてがわれ、バディを訓練することになる。
 最初は犬というだけで敬遠していたアイリーンであったが、共に暮らすうちに、互いに信頼を深めていく…」

・「ロッテの恋人」(1968年「別冊マーガレット」5月号)
「ロッテはちびっこ女の子。
 でも、本人は一人前のレディーのつもり。
 そんなロッテが恋をした。
 相手は、マイケル・バーンズという青年。
 ロッテとバーンズは日曜日にデートをすることになるのだが…」

・「山の月と子だぬきと」(1967年「別冊マーガレット」10月号/デビュー作)
「たぬきのミミは人間世界に興味津々。
 ある朝、人間の娘に化けて、山を降りる。
 途中、ミミは、山で迷った青年、トオルと出会う。
 二人が人里まで出ると、トオルはミミを彼の別荘へと誘う。
 大喜びするミミであったが、トオルの複雑な家庭環境を知ることとなる。
 トオルは孤児院からもらわれた子であったが、母親は亡くした実の娘のことをいまだ忘れられない。
 トオルの孤独を目の当たりにしたミミが取った行動とは…」

 大御所の美内すずえ先生の初期の作品を集めた単行本です。
 とにもかくにも、オカルト・怪奇マンガの歴史的名作「13月の悲劇」であります!!
 私はこの年になって初めて読みましたが、驚嘆いたしました。
 あの時代にここまでのものを描けるとは、美内すずえ先生は、天性のストーリー・テラーなのでありましょう。
 1970年代の他の作品(「白い影法師」等)に較べると、外国が舞台なせいか、荒唐無稽なノリですが、こういうノリが私は大好きなのです。
 あと、残酷描写がやたらヘビーな点も見逃せません!!(予想以上に凄惨です。やってくれるぜ!!)
 怪奇漫画のファンの方で未読な方がおられましたら、一読をお勧めしておきます。

・注1
 盲導犬がまだ一般に普及していない頃に描かれた漫画なのでありましょう。
 こういう漫画を読むと、盲導犬を世間に広めた方々の努力が如何に大きかったかに思いを馳せてしまいます。

・備考
 注文カード付。

2017年10月2日 ページ作成・執筆

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