諸星大二郎「アダムの肋骨」(1982年10月15日第1刷発行)

 収録作品

・「アダムの肋骨」(「ビッグコミック増刊」1976年1月号)
「ある星の海に墜落した宇宙船。
 漂流していると、鳥らしき生物が宇宙船に興味を持つ。
 その鳥の腹には、人間の女性の顔のような模様があり、顔の下には両手があった。
 乗組員達はその鳥と交信を試み、宇宙船を陸地まで引っ張ってもらう。
 彼らは鳥を「ミス・ハーピー」と名付け、宇宙船を修理している間、「ミス・ハーピー」にいろいろなものを与え、反応を窺う。
 「ミス・ハーピー」は、好奇心が旺盛なわりに、飽きっぽく、気まぐれで、粗暴…。
 皆が「彼女」に興味を持つ中、一人の男だけは、地球で彼を捨てた女を「彼女」に重ね合わせて、嫌悪感を募らせていく…」

・「貞操号の遭難」(「別冊問題小説」1975年秋季号)
「「淑女計画」(優生人種開発計画)のため、「貞操号」が未知の惑星に降り立つ。
 乗組員は女性が三人、ケイ、マリ、リサ。
 彼女達の目的は、人類の種の発展のため、交配可能な別の高等種族(♂)を探し出すことであった。
 その惑星で、彼女達は、人間の男そっくりな植物を発見する。
 彼は姿は人間そっくりで、動物の細胞を持ち、内臓器官も生殖器も備えていたが、足は地中に根を張り、光合成するための葉緑素も持っていた。
 その夜、リサは、その植物から精液を採取しようと試みる。
 リサがいつまで経っても帰ってこないので、マリは様子を見に行くが、リサには会えないまま、植物に犯される。
 二人が朝になっても帰ってこないので、ケイは二人を捜しに行くのだが…。
 この惑星での繁殖のあり方とは…?」

・「男たちの風景」(「月刊プレイコミック」1977年2月号)
「銀河の辺境にあるマクベシア星を訪れた、流れ者の鉱脈ボーリング技師。
 この星の住人には、三種類あった。
 まず、美しく、浮気好きな女達。
 もう一つは、ひからびて、醜く、嫉妬深い、その夫。
 そして、目を瞠るほど、美しい青年達。
 聞くところによると、この星の男は、最初は皆、美青年だが、結婚して、一年も経つと、急速に年老いてしまうという。
 しかも、離婚は決して許されず、夫達は妻を束縛しようと必死であった。
 技師は、ふと目にした女性と肉体関係を持ち、その不思議な官能に酔うのだが…」

・「詔命(「礎」改題)」(「漫画アクション増刊 SF劇画特集号」1978年6月27日号)
「庶務課の贄田生男(何ちゅ〜名前…)は突如、東京都地震研究所の地震予防課に転勤を命じられる。
 地震のことなどさっぱりわからず、戸惑うが、上司は中年の男性が一人だけで、仕事は実にテキト〜。
 仕事は大したことなく、また、残業もなかったが、その割に、給料は、びっくりするぐらいに高給であった。
 それに加えて、送別会の時に知り合った、スナックのママと懇ろの仲となり、彼は無断欠勤して、遊ぶようになる。
 ただ、いつの間にか、できた左目の傷はなかなか良くはならない。
 ある日、彼は本庁へ出張することになるのだが…」

・「不安の立像」(「漫画アクション増刊」1973年9月号)
「夏。
 満員の通勤電車で、サラリーマンの青年は、ある奇妙なことに気付く。
 それは、ほとんど人の乗り降りのない、小さな駅の線路わきに、黒い布をかぶった人らしきものが立っていることであった。
 朝の通勤電車にはいないが、帰りの通勤電車では必ず見かける。
 彼は、その影法師がどうにも気になり、その正体を突き止めようとするのだが、どうも得体が知れない。
 だが、ある夕方の電車で、彼はその正体を悟ることとなる…」

・「真夜中のプシケー」(「ビッグコミック増刊」1975年1月号)
「あるバーに勤める雅子は、中年の男性からパトロンを紹介される。
 水商売に嫌気がさしていたこともあり、彼女はその申し出を承諾。
 彼女は高級なマンションの一室に移り、毎月、かなりの額の生活費を支給される。
 だが、それに対して、彼女への条件も厳しい。
 まず、決して、パトロンの名前や素性だけでなく、姿も決して見てはいけない。
 夜は必ず部屋にいて、パトロンが来る時は、部屋中の電気を消しておかなければならなかった。
 週に二、三回、パトロンは来て、彼女を抱くが、彼女は彼に対して、不安を募らせていく。
 不安は様々な妄想を産み、意を決して、彼女はパトロンの姿を見ようとするのだが…」

・「袋の中」(未発表)
「ある日、少年は、ゴミ捨て場で「奇妙な動物」を見つける。
 彼はそれを袋の中に入れて、食事の残り等を与えて育て始める。
 そのうちに、それは肉の味を覚え、彼はそれに生きた小動物を与えて、貪り食うのを見るのが無上の楽しみとなる。
 高校の時、厳格な学者だった父親が死亡。
 彼が大人になるにつれ、袋の中のそれは高圧的になっていき、遂に殺人まで犯す。
 転落と陶酔の果てに、彼を待ち受けていたものは…?」

・「肉色の誕生」(「漫画アクション」1974年3月21日号) 「神永は、広く荒れた邸で、親の遺産で暮らしていた。
 その邸には、彼と、小人の下男、六郎のみ。
 彼は「ホムンクロス」の創造に、自分の全てを注ぎ込む。
 彼によると、ホムンクロスは、科学の枠に収まらない「精霊」のようなものらしい。
 庭にある温室で、彼は「女の精霊」を研究しているようなのだが…」

 奇想天外コミックス(奇想天外社)で出たものを、ジャンプ・スーパー・コミックスにて新装版として出したものです。
 差異は以下の通り。
・「礎」が「詔命」にタイトル変更。
・「肉色の誕生」に3ページ加筆。
・「あとがき」が削除された代わりに、前の袖で、若かりし頃の諸星先生の御顔が拝見できます。あと、目次の挿絵は描き下ろし?

2021年6月7・12・13日 ページ作成・執筆

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