青池保子「アクアマリン」(1976年12月10日第1刷・1980年2月25日第4刷発行)

「小説家のテレンス・リードは、大学時代の友人であるギル・ケインに誘われて、ソールズベリーにあるエドガー・バリモア伯爵の城を訪れる。
 ギル・ケインは半年前からエドガーの孫の家庭教師をしていた。
 バリモア家は世間との接触を極端に嫌い、城に入るチャンスなど滅多になく、リードはバリモア家の秘密に興味を覚える。
 バリモア家の中で最も悪名高いのは16世紀のトーマス・バリモア(1532〜1550)であった。
 彼は美しい青い目を持ち、「アクアマリン」と呼ばれていたが、十八年の生涯の間に悪徳の限りを尽くし、義母・兄妹を含む十八人を殺害した後、塔に幽閉されて狂死する。
 そして、現在のバリモア家の人々は以下の通り。
・当主のエドガー・バリモア伯爵(バリモア家の暗い過去を引きずる)。
・エドガーの息子のアルバート(横柄で粗暴)と妻のイザベル(普通の女性)。それに息子のピーター(大人しい男児)。
・エドガーの娘のドロテア(淫乱)と夫のマキシム(生真面目だが、気が弱い)。
・館の使用人である老婆、ゼダ(バリモア家の人々には絶対服従)。
・ピーターの養育係のロアン・ウェルズ。彼女は一年前、両親が亡くなった時、父親の友人で会ったマキシムからここを紹介された。
 トーマスの「狂った血」は四百年経った今もバリモア家の血筋に潜んでいるのか、バリモア家の人々はどこか尋常でなく、また、この城では世間一般の常識は通用しない。
 最初の日の夜、リードはギルと共にトーマスが閉じ込められていた牢獄を見に行く。
 その途中、天使の像のところにトーマス・バリモアにそっくりな少年を目にする。
 少年は姿を消すが、以来、城では奇怪な連続殺人事件が起こる。
 睡眠薬自殺をしたマキシムの遺書に書かれた「ロトの罪」という言葉の意味とは…?
 そして、犯人はトーマス・バリモアの幽霊なのであろうか…?
 リードはロアンを愛するも、彼女にもまた秘密があった。
 複雑に絡み合った事件を裏で糸を引いているのは誰…?」

 「月刊セブンティーン」1976年2月号〜5月号に掲載された力作です。
 横溝正史の作品(未確認)がベースになっているらしく、そのせいか、怪奇色と性的倒錯の濃い内容になっております。
 でも、この頃はまだ少女漫画風の絵柄なので、読みやすいのではないでしょうか?(この内容をあのコテコテな絵柄でやられたら、ちょっと…。)
 隠れた佳作だと思います。

2023年5月28・29日 ページ作成・執筆

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