池田理代子・漫画/池田悦子・原作
「妖子@」(1981年3月10日第1刷・1984年5月15日第7刷発行)
「妖子A」(1984年1月14日第1刷・5月15日第2刷発行)

・「第一章 妖子誕生」(単行本@/「週刊セブンティーン」1979年36号・37号)
「津本トキは犯罪者の娘という烙印を押されたが故に、数々の犯罪を犯し、今は独房で死刑を待つ身であった。
 ある夜、彼女の独房に「金色の眼」と「誇り高き蒼き血を持つ者」が現れ、トキを犯す。
 妊娠したトキは死刑執行を免れ、小さな産院で子供が産まれるのを待つが、彼女は窓から見える近代的な大病院に目を付ける。
 陣痛が始まった時、彼女は産院に火をつけ、その大病院へと運び込まれる。
 そこで出産した後、彼女は元・華族の婦人が産んだ子供と自分の子供を取り換える。
 十二年後、トキの娘は名門の麓家の令嬢、麓妖子(ふもと・あやこ)として美しい娘に成長していた。
 しかし、麓家に出入りする医者の尾形が彼女の出生に疑問を抱く…」

・「第二章 復讐のソネット」(単行本@/「週刊セブンティーン」1980年16号・17号)
「妖子が通う聖フランソワーズ女学院。
 ここは良家の子女のためのものだったが、最近は不動産屋の娘、結城リエなんかも幅をきかしていた。
 結城リエは意地の悪い娘で、円乗寺貴子にいろいろと嫌がらせをする。
 円乗寺貴子の家は結城リエの父親にだまされて邸を失い、今はすっかり尾羽打ち枯らしていた。
 そんなある日、結城家に娘を誘拐したとの連絡が入る。
 しかし、実際に誘拐されたのは妖子であった。
 妖子の両親は尾形博士と共謀し、これを機に妖子を亡き者にしようと企むのだが…」

・「第三章 初恋のフーガ」(単行本@/「週刊セブンティーン」1980年36号・37号)
「日曜日の朝、古賀尭(こが・さとる)という青年が麓家の邸を訪れる。
 彼が面会を求めているのは麓家の本当の娘、かおりであった。
 彼は孤児を預かる慈恵ホームの出身で、園長殺しの容疑をかけられていた。
 彼は自分は無実だと訴え、園長が殺された時には、かおりとの約束でニ十キロ離れた百合ヶ池にいたと話す。
 しかし、かおりは既にこの世になく、彼のアリバイを証明するものはいない。
 妖子は彼もまた死刑囚の子と聞き、彼の容疑を晴らす決意を固める。
 彼の信頼を得て、妖子は百合ヶ池に向かい、そこで彼女は彼のアリバイを証明できる少女に出会う。
 だが、彼女は盲目であった…」

・「第四章 仮面」(単行本A/「週刊セブンティーン」1981年36号)
「妖子に前川ミツという中年女性が会いに来る。
 前川ミツは津本トキの隣の房におり、妖子が死刑囚の娘であることをネタに脅迫する。
 ミツが願うのは「上流生活」で、妖子はミツの希望を叶える約束をする。
 その後、妖子は親戚の「泥眼夫人」を訪ねる。
 泥眼夫人は火事で家族を亡くし、また、自分もひどい火傷を負ったため、泥眼の面を常にかぶっていた。
 そして、その莫大な遺産を巡り、いとこたちは夫人の機嫌を取り、こびへつらう。
 しかし、いとこたちは遺言書に効力を持たせる実印を血眼で捜しており、実印さえ手に入れれば泥眼夫人を殺すつもりであった。
 そんないとこたちに囲まれているため、泥眼夫人は非常に用心深く、その仮面の下で何を考えているのかは誰にも明かさない。
 妖子の目的とは…?」

・「第五章 万華鏡」(単行本A/「週刊セブンティーン」1982年21・22号〜25号)
「妖子の先輩の久我加音子のフィアンセは妖子の主治医、尾形博士であった。
 久我加音子の父親は血液学の権威で、尾形博士は妖子の血液の研究によってパリ大学での博士号を得ようとする。
 その研究によって、妖子が「悪魔の子」であることが明らかにされるため、彼女は尾形博士に研究を止めるよう懇願するも、彼女に味方する者は誰一人としていなかった。
 尾形博士は研究を進め、妖子の父親の鱗を入手し、悪魔の遺伝子を確定する。
 だが、尾形博士の協力者である看護婦の峰岸恵子は尾形博士に裏切られたと思い、妖子を誘拐。
 妖子を殺すと脅し、五千万円を要求するのだが…」

・「第六章 紅蜘蛛」(単行本A/「週刊セブンティーン」1983年32号〜33号)
「妖子は母方の先祖の法要に代理で参加するため、山奥の村(羽床村?)を訪れる。
 彼女を迎えに来たのは鷲森元男爵家の四代目である輝彦であった。
 村へと馬車で向かう途中、車輪がぬかるみにはまってしまう。
 妖子は梃子になるものを探し、山査子の木の倒れた跡にあった杭のような持って行く。
 それを見た使用人の丈吉は顔色を変え、木の倒れた跡を調べると、空っぽの棺が地面から出ていた。
 ここは約百年前に紅蜘蛛を使い、村人や動物たちの血を吸った女吸血鬼、モイラを葬った場所で、丈吉はモイラが復活したと恐れおののく。
 輝彦はそんな伝説など歯牙にもかけなかったが、数日後の法要の時、妖子は土蔵の窓から伸びる手を目にする。
 妖子が土蔵に様子を見に行くと、二階に何者かの気配があり、木の段を登っていると、段を外され、妖子は転落。
 すると、二階の何者かが妖子の上に毒蜘蛛を落としていく。
 輝彦が駆けつけ、妖子は助けられるが、村人の間で女吸血鬼が甦ったとの噂が広がり…。
 女吸血鬼の正体とは…?」

 池田理代子先生と言えば、「ベルサイユのばら」といった歴史ロマンの印象が強いでしょうが、「ホラー/サスペンス」との相性も非常に良いと私は考えております。
 と言うのも、何の躊躇もなく、残酷・グロ描写を紙面で見せつけるから。
 「ベルサイユのばら」では天然痘で全身が爛れたルイ十五世、ギロチンで処刑されたルイ十六世の生首(当時の絵を模写したものですが)、アランの妹の腐乱死体といった描写があり、ラストは民衆にリンチされたフェルゼン伯の死体で締めてくれてます。
 そんな池田理代子先生が「悪魔の花嫁」で有名な池田悦子先生とタッグを組んだのが名作「妖子」です。
 内容的にはダーク・サスペンスで、「悪魔の子」を謳っているわりには怪奇色はさほど強くはありません。(でも、一部の残酷描写は容赦ないです。)
 怪奇色よりも、愛を求め、自分が何の為にこの世に産み落とされたのか悩むヒロインの方に重点を置かれているように感じます。
 ただし、このヒロイン、境遇は悲惨ではありますが、それ相応のことをしてきておりますので、個人的にはあまり同情できません…。
 惜しむらくは、この作品は六章しかなく、作品としては中途半端なように思います。
 もう少し続けてもらって、内容を深く掘り下げてほしかったものです。

2025年6月25・27日 ページ作成・執筆

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