星野之宣「海の牙」(1979年9月15日第1刷発行)

 収録作品

・「海の牙」(1979年「少年ジャンプ」1月25日増刊)
「原子力潜水艦アクエリアス号が南太平洋で遭難する。
 イエルマーク艦長は予備潜水艦ユーラクロン号に乗り、現場に急行。
 アクエリアス号には彼の息子、ボビーが乗っていた。
 沈没地点に到達するも、魚の姿が見えず、海底にはおびただしい数の魚や鮫の死体が横たわっていた。
 ようやく海底にアクエリアス号を発見するも、艦はひどく損傷していた。
 生存者を確認し、救助活動に取り掛かろうとした矢先、海上の救難艦から救助活動を一時停止して、すぐに浮上するよう命令が下る。
 救難艦の提督はアクエリアス号を調べるために潜水球を海底に降ろすが、何ものかによって破壊されていた。
 この海域には正体不明の危険が潜んでいるが、アクエリアス号の乗員の救助は一刻も争う。
 イエルマークは、車椅子の科学者、ロゴスと共に再度ユーラクロン号で潜水する。
 アクエリアス号を襲ったものの正体は…?」

・「遠い呼び声」(1978年)
「ジョディは七歳の春に光る円盤を見る。
 光る円盤は彼女の名を呼んでいた。
 以来、光る円盤は度々彼女の人生に現れる。
 二十歳になったジョディは宇宙センター(?)で電話オペレーターとして働き始める。
 ある日、彼女は光る円盤からの声を思わせる青年と巡り合う。
 彼はレイ・バック少尉という若い男性で、宇宙飛行士であった。
 二人はすぐに打ち解け合い、恋仲になる。
 彼はイオナイザー・ロケットのテスト・パイロットに任命され、宇宙に飛び立つ。
 だが、「光る円盤に衝突する」という通信を最後に、ロケットは消息を絶つ。
 レイの身に起きたこととは…?
 そして、光る円盤の正体は…?」

・「太陽惑星イカルス」(1975年)
「1987年、全世界は疑似氷河期と呼ばれる異常低温現象に苦しんでいた。
 大気汚染により汚染雲が地球を覆い、太陽光線を遮断したためである。
 人類は生き残りを賭け、「イカルス計画」を発動する。
 「イカルス計画」とは、太陽からニ千万キロの地点に人工静止惑星「イカルス一号」を静止させ、翼のソーラーパネルから太陽エネルギーを吸収し、レーザーにして地球に発射するというものであった。
 伊賀五郎中佐、ロック・サイモン中佐、トーマス・キリー大尉の三人がイカルス一号に乗り込む。
 イカルス一号は順調に太陽に近づいていくも、これに近づいて来るものがあった。
 それは地球解放前線による静止惑星サンジャックで、イカルス一号に地球への帰投を命令する。
 地球解放前線の目的はエネルギー支配による世界征服であった。
 サンジャックにはミサイルで武装しているが、伊賀五郎は地球解放前線の要求を拒む。
 イカロス一号に勝算はあるのだろうか…?」

・「暁の狩人」(1976年「少年ジャンプ」28号)
「約二十年前のヨーロッパ平原。
 人類の祖先と言われるネアンデルタール人と共に、もう一つの人類が存在した。
 それはサッコバストーレ人といい、先行現生人類で、現代人と似た頭蓋骨格を持つ。
 氷と野獣に支配された世界で、彼らはネアンデルタール人からの襲撃に頭を悩ましていた。
 いくら戦っても、ネアンデルタール人たちは日ごと、その数を増やし、その脅威は高まるばかり。
 一族のおかしらは、長い冬が続く限り、皆、飢えていくばかりであると考え、洞窟を捨て、暖かい土地への移住を決断する。
 日の没する方角に暖かく、獣と水の豊かな土地があると昔の言い伝えにあり、彼らは西を目指す。
 過酷な旅になるが、おかしらは足手まといになる女・子供を大切にするよう男どもを諭す。
 だが、ある日、アトルはおかしらの秘密に気づく。
 彼らは新天地にたどり着けるのであろうか…?」

 良作揃いの、骨太なハードSF作品集です。
 「海の牙」は名作「ブルーシティ」の前日譚と言うべき重要作で、かつ、「巨大モンスターもの」の隠れた逸品であります。
 ラスト付近のモンスターと原潜の死闘はかなりの迫力。
 個人的には、人類の黎明期を描いた「暁の狩人」が予想外のラストで印象に残りました。

2023年7月1日 ページ作成・執筆
2024年1月22日 加筆訂正

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