美内すずえ「みどりの炎」(1975年1月20日初版・1979年2月28日7刷発行)

・「みどりの炎」(1973年「別冊マーガレット」9月号)
「キャロルは夏休みに、両親には内緒で、A州にあるレノアの町を訪れる。
 レノアの町は砂漠の真ん中にあり、そこには、駆け落ち結婚をした姉、イザベラが住んでいた。
 六年ぶりにキャロルは姉と再会するも、姉はやつれ果て、美しさや明るさの面影は失われていた。
 更に、夫のアントンは愛想のかけらもない男で、キャロルが町に来たことを快く思わない。
 彼女に対してよそよそしいのは町の住人全員で、町の実力者、ヒュー家のハロルドだけが彼女に好意を持つ。
 レノアに滞在するうちに、キャロルは、町がどんどん砂に飲み込まれつつあることを知る。
 また、「黄色い悪魔」と呼ばれる砂嵐が度々町を襲い、甚大な被害をもたらしていた。
 町を砂嵐から守っているのは、町の彼方に見える森であるが、この森については皆、口をつぐんで、語ろうとはしない。
 この町にしかない木々の秘密とは…?
 そして、森を守るソロモン一族とは…?」

・「クリスマスの私」(1972年「別冊マーガレット」12月号)
「ケーキ屋、花月堂の娘、佐々木栗子(14歳/愛称はクリ)。
 12月24日になると、彼女はロマンティックな聖夜に憧れるが、実際には大忙しで「クルシミマス」の「サンザクロース」であった。
 終業式が終わり、栗子が店を手伝っている時、隣クラスの倉淵美英子が、一番上等なケーキを屋敷に届けるよう頼みに来る。
 美英子は倉淵産業の社長令嬢で、美人で、勉強はトップ、BFはハンサムと、栗子の憧れであった。
 栗子はケーキの配達の最後に、美英子の邸を訪れるが、そこで、華やかさの裏に潜む、荒んだ家庭事情を知る。
 帰宅後、栗子は集金をなくしたことに気付き、捜して歩いているうちに美英子の邸にやって来る。
 美英子は、お金を立て替えるからと言って、栗子にパーティへ参加するよう勧めるのだが…」

・「ポーリュシカ・ポーレ」(1972年「別冊マーガレット」2月号)
「新進俳優のアイザック・シュラーノフは、貴族の血を引き、祖父の優秀な作家というサラブレット。
 若い女性に大人気な彼を、女中の娘、リリアは遠くから熱く見つめていた。
 十年前、彼女が母親と共にシュラーノフ家に来た時、彼女は、ナポレオンを演ずる、幼いアイザックと出会う。
 だが、彼が彼女に親しく口をきいてくれたのは、その時だけで、彼はいつも華やかな人達に囲まれていた。
 ソ連芸術祭への出し物「ポーリュシカ・ポーレ」の練習中、照明のライトがアイザックの頭部を直撃する。
 命は助かったものの、彼は記憶喪失になっており、放心状態。
 彼は郊外の別荘で静養することとなり、リリアは彼の世話を一任される。
 別荘で二人は伸び伸びを過ごし、親睦を深めていく。
 幸せな日々の中、リリアの胸の奥には、彼が記憶を取り戻すと、捨てられるのではないかという一抹の不安があった。
 そんなある日、別荘の彼を、舞台仲間が訪ねて来る…」

 「みどりの炎」は隠れた名品です。
 荒唐無稽な物語ではありますが、ここまでダイナミックに見せるのは、流石の一言です。
 トラウマ度も地味に高いですし、タイトルは忘れていても、記憶に焼き付いている人が多いのでは?

 「クリスマスの私」「ポーリュシカ・ポーレ」は怪奇マンガではありませんが、こちらも面白かったです。
 天性のストーリー・テラーなんでしょうね。

2020年9月10日 ページ作成・執筆

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