諸星大二郎「子供の王国」(1984年8月15日第1刷発行)

 収録作品

・「子供の王国」
「特殊なホルモンで成長を意図的に止めてしまうことが流行した時代。
 リリパット(非成長者)であることが当たり前で、普通の大人達は逆に生きづらい社会であった。
 狩場はそんな風潮に反発を感じていたが、大人であるというだけで、会社では出世もできず、恋人の高橋真理子の両親に結婚を反対される。
 ある日、彼は「子供の城」に向かう配達トラックの助手をすることとなる。
 「子供の城」とは、大富豪の津軽財団が経営する、リリパットの「王国」であった。
 途中、高橋真理子がリリパットと共に高級車に乗るのを目撃するが、その車も「王国」に向かうらしい。
 トラックは「子供の城」に到着するが、リリパット達による襲撃を受ける。
 命からがら城の内部に逃げ込んだ狩場は、そこで「子供の王国」の赤裸々な姿を目の当たりにする…」

・「食事の時間」
「上流階級の少年、折葉強は、父親が破産して自殺し、母親には捨てられ、一人スラム街に向かう。
 持ち物は「生物化学省」の登録カードだけであったが、スラム街で彼は住民に襲われる。
 というのも、スラム街の住民は、上流・中流階級の出したゴミを食べ物にしており、彼の服は御馳走なのであった。
 彼は「腕きき鈍助」と名乗る少年に助けられ、彼のアジトへ案内される。
 兵銀親分に紹介された後、強は、鈍助、アジトで出会った犀吉と共に生物化学省を訪れる。
 そこでは、スラム街の住人に、ゴミを分解して栄養にするための「虫」を植え付けていた。
 だが、犀吉には別の思惑があり、三人はビルの奥深くに侵入するのだが…」

・「広告の町」
「ヒッチハイクであちこちを渡り歩く娘、ゼピッタ。
 今回、彼女が訪れた町は、至るところ、看板だらけで、その下にある掘っ立て小屋で皆、暮らしていた。
 知り合った青年、ヒロスケによると、ここは「楽しい楽しい夢の町」で、設置した看板から広告権の使用料を得ているため、働く必要はないという。
 だが、広告主が新しい広告を出さないため、家を新しく作れず、住宅難が深刻となる。
 広告に埋もれてしまった町の行く末は…」

・「感情のある風景」
「生まれた時から、戦争、放浪、難民収容所…と悲惨な体験を続けてきた男。
 ある星で、収監から逃れた彼は、不思議な町にさまよいこむ。
 そこの人々は「心の半分を体の外にもって」おり、感情はその人のそばにそれぞれの形をもって表されるのであった。
 彼と同じく、他星だった男から、彼は「感情を思考から切り離して 別の方法で表現する方法」を教えられる。
 そうして、今まで彼を責め苛んできた「恐怖」から自由になったと思われたが…」

・「ダオナン」
「乾季のカラハリ砂漠。
 ブッシュマンの狩人、ダオナンは、カモシカを三日も追い続けていた。
 ようやくカモシカの死体を発見したものの、死因は彼の毒矢ではなく、そのそばにいる、奇妙な生物の仕業らしい。
 しかも、その生物の近くには、白くて巨大な円盤状のものが落ちていた。
 とりあえず、ダオナンはその生物にカモシカの分け前を与える。
 ダオナンがキャンプへと帰ろうとすると、その生物もついてくる。
 ダオナンとその生物の間には奇妙な友情が産まれるのだが…」

・「ラスト・マジック」
「太陽活動の減少により、世界的な寒冷化に襲われる。
 日本でも、政治家や科学者は何も手を打つことはできず、混乱は広がるばかり。
 アフリカの新興国出身のアウダ・モノフ教授は日本に滞在していたが、彼のもとに、国の父親がやって来る。
 父親は、太陽を復活させるには、この国の「太陽の家」で祭をしなければいけないと主張するのだが…」

・「会社の幽霊」
「日本有数の大企業、丸角商事。
 都心から離れた本社ビルは交通の便が悪く、営業等の部門は都心の事務所に移転していた。
 ある日、営業の堀田が本社ビルを訪れる。
 総務課に行こうとするも、巨大、かつ、廃墟のようなビルで迷ってしまう。
 その時、堀田は、日間田という中年男性に出会い、途中まで道案内をしてもらう。
 しかし、知り合ったOLによると、日間田は、次期取締役と言われながらも、ある失敗で自殺したという。
 また、彼が本社を訪れた理由も、本社を霞が関の国会の前に移転するという、メチャクチャな計画のためらしい。
 本社ビルに潜む者達の正体とは…?」

・「王の死」
「竜二郎は、重役達に呼ばれて、サンフランシスコから帰国する。
 重役達は彼を「若社長」と呼ぶが、彼の父親はいまだ現役であった。
 彼の父親は元気であることを不自然にアピールするも、無理が祟って、ゴルフの最中に倒れて、入院してしまう。
 竜二郎は、重役達からムリヤリ社長代理として、社長の椅子に座ることとなるのだが…。
 社長にとって、一番重要なものとは…?」

・「連作 オー氏の旅行」
 オー氏を主人公にした、シュールな一コマ漫画集。

 「子供の王国」は、千に一つの大快作です!!(いろいろとヤバい描写は多いですが…)
 ラストの大暴れは「ワイルドバンチ」に匹敵する…と勝手に考えております。

2021年5月31日・6月21日・12月31日 ページ作成・執筆

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