わたなべまさこ「リリアム」(1995年7月25日初版発行)

 収録作品

・「リリアム」(1976年〜1977年「週刊少女コミック」)
「コロラドの米軍秘密基地。
 そこでは、人を発狂させる科学兵器「XO66」の研究が行われていた。
 その開発者の一人、ブレミンガー博士の一人娘、リリアムは、謎の人物から「XO66」入りの粘土を手渡される。
 発狂したリリアムは両親と隣人を殺害。
 リリアムは、「XO66」に汚染された粘土が入ったバスケットを片手に、祖母の住むロサンゼルスを目指す。
 そして、リリアムの行く先々で、殺戮の嵐が吹き荒れる…」

・「あやかしの夜」
「海辺にある洋館。
 少年の母親は結核で寝たきりであった。
 父親はよそに女をつくり、死期の近い妻に離婚を迫るという人でなし。
 少年は母親を心から慕うが、子供の身で何もできない。
 母親の死が目前に迫った時、少年は、望みを一つだけ叶えてくれるという伝説の海蛇に必死に祈る。
 少年が望んだこととは…?」

 最大最高の漫画家の御一人、わたなべまさこ先生は怪奇マンガも数多くものしております。
 怪奇マンガと一口で言いましても、時代物から西洋もの、サスペンスにサイコ・ホラーと多岐に渡り、その全貌を捉えるのは容易ではありません。
 一般的な代表作は、怪奇マンガの究極の傑作の一つ、「聖ロザリンド」でありましょう。(有名な「ガラスの城」は未読。)
 その陰に隠れて、裏「聖ロザリンド」と言うべき「リリアム」という作品がありました。
 単行本化には恵まれなかった模様ですが、一読して納得、封印されてもおかしくない内容です。
 いや、もう皆さん、心ゆくまで「発狂」しまくっていて、読んでいて気持ちがいいぐらいです。
 グロ描写も半端なく、そんじょそこらの生ちょっろい怪奇マンガよりも遥かに上です。
 ラストに近づくにつれ、尻すぼみになっている感があるのが残念ですが(注1)、ロサンゼルスどころかニューヨークまで「キチガイ地獄」(by 夢野久作)になっているので、よしといたしましょう。

 ただし、この作品は元ネタがあります。
 ジェームズ・ハーバート「霧」(サンケイノベルズ/昭和51年9月29日1刷発行)(注2)
 この小説は、軍の開発した発狂ガスが地震によって漏れ出し、そのガスに包まれた人々が狂いまくる…という、何ともストレートな内容を、徹底的かつオゲレツに描写しており、そのスジでは有名な作品です。
 「リリアム」にも「霧」を思わせる描写がちらほらあって、推測の域を出ませんが、先生の担当者がこの内容で描くよう勧めたのではないでしょうか?。(もしも、わたなべまさこ先生が「霧」を読んでいたら凄過ぎですが…。)
 でも、何が凄いかって、「あら、なかなか面白そうじゃな〜い。私もマンガで描いてみよ〜っと。」と考えた(かもしれない)わたなべまさこ先生が一番凄い!!
 嗚呼、やっぱり、わたなべまさこ先生は、最高だ〜!!

 ちなみに、似たようなテーマの怪奇マンガとしては、曽祢まさこ先生の「殺す月」や、関よしみ先生の「死にたいの2」などがあります。
 あまり作品数は多くないので、怪奇漫画家の皆様、発奮してくださいませ。

・注1
 あと一つ残念なことは、少女漫画雑誌という制約のためか、性描写が全くないことでしょうね。
 わたなべまさこ先生は「濡れ場」の描写にかけては天下一品だと個人的に考えております。
 「XXX(トリプル・エックス)」バージョンで、キチガイ共の乱痴気騒ぎをとことん描いて欲しかったなあ〜。(完全に封印作品になったでしょうが…。)

・注2
 関口幸男氏による翻訳はどうも固すぎるので、光文社様、どうか古典新訳文庫で出してくだされ〜。

2016年12月16日 ページ作成・執筆
2018年6月11日 加筆訂正

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