わたなべまさこ「カメリア館」(1992年1月25日第1刷発行)

 収録作品

・「カメリア館」
「上里厚子は医大を卒業したてのインターン。
 彼女は友人達とスキーに出かけ、雪山で遭難してしまう。
 雪山をさまよっている時、彼女の目の前に西洋風のお邸が現れる。
 門の鉄柵には「カメリア館」と文字が刻まれていた。
 意識を失った厚子は助けられるものの、女主人は姿を見せず、無表情な年寄りの婆やのウラノーワや聾唖の召使といった気味の悪い人物ばかり。
 部屋からは出ないよう言われていたものの、夜、どこからかすすり鳴き声が聞こえる。
 部屋を出て、声のするに向かうと、部屋の入り口で女の子が倒れており、そばには飼い犬が寄り添っていた。
 厚子は少女をベッドに寝かせ、診察をすると、どうやら強いショックを受けたらしい。
 そのリカという少女は衰弱が激しく、夢遊病の可能性もあるため、厚子はウラノーワに入院させるべきと言うが、朝にはこの館から去るよう命令される。
 厚子は自宅に戻るが、ある日、新聞でカメリア館が「家庭教師兼主治医」を募集する広告を目にする。
 広告主は「美保・デ・スチーブンソン」。
 彼女は元・日本人バレリーナで、夫は富豪のイギリス人探検家であったが、彼は十年前に行方不明になっていた。
 厚子はカメリア館に不穏なものを感じ、リカを守るために、その広告に応募する。
 再度、訪れるカメリア館は多くの椿の花に囲まれて、まるで燃えているかのよう。
 応接間に通されると、暖炉の上にプリマの肖像画が飾られてあった。
 この絵のモデルは主人の妹のカメリアで、絵の左上は焼けて欠損していた。
 厚子はリカの母親と会い、厚子の仕事はリカの教育と健康に関することだけで、他の事には一切干渉しないよう釘を刺される。
 その後、厚子はリカとその飼い犬のアポロと会う。
 リカには動物たちと小島に住んでいる祖母しか心を許せる相手がいなかった。
 また、学校に行かせてもらえず、母親から日々、バレエの厳しいレッスンを受ける。
 そして、夜ごと、「ゆうれいの声」を聞いていたため、リカは自分が精神病だと母親やウラノーワから言われていた。
 しかし、厚子もまた「ゆうれいの声」を耳にする。
 厚子はカメリア館の秘密を探ることを決意するのだが…。
 「ゆうれいの声」は誰のものなのか…?
 そして、リカの目にした「おそろしい顔のゆうれい」の正体とは…?」

・「パパは恋人」
「ミリは小学生の女の子。
 父親は上杉コンツェルンの社長の上杉謙信で、ミリは社長令嬢ということになるが、とっても庶民的で、男やもめの父親の世話を焼くのが生きがい。
 だが、大金持の男やもめを世間が放っておくわけがなく、謙信の姉により「ヤスコ・トクガワ」という女性と見合いをすることとなる。
 謙信は見合いなどするつもりはなく、約束をほっぽかし、ミリと共に宮崎に旅行に出かける。
 その飛行機で謙信は盲腸炎を起こし、着陸後、病院へと運ばれ、これをきっかけに謙信とミリはスチュワーデスの武田さくら(父親は武田信玄)と知り合う。
 ヤスコ・トクガワの追跡を振り切り、謙信とミリは宮崎旅行を楽しむが、あるパーティの席でヤスコ・トクガワと再会する。
 しかし、謙信を追っかけまわしていたヤスコ・トクガワは偽物で、本物はデザイナーであり、上杉コンツェルンが手がける身体障害児のホームのためのインテリアルデザインを請け負っていた。
 謙信とヤスコ・トクガワは急接近するのだが…。
 一方、武田さくらは謙信への想いを捨てきれないでいたが、彼女に縁談話が持ち込まれる。
 この三角関係の行く末は…?」

 「カメリア館」はミステリアスな雰囲気たっぷりの「洋館もの」です。(1960年代前半頃に描かれたのかな?)
 「可憐な少女」「少女を守ろうとする家庭教師」「謎めいた母親」「何を考えているかわからないメイド」(ついでに「バレエ」)とそれっぽい要素をきっちり盛り込み、着実にストーリーを盛り上げていくのは流石の一言。
 と言っても、今からすれば「スリラー」と言うにはあまりに牧歌的な内容ですが、当時の読者にとっては十分スリリングだったのでしょう。
 「パパは恋人」はファザコンの娘をヒロインに据えた少女漫画です。(1960年代後半頃?)

2024年1月31日・2月2日 ページ作成・執筆

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